「司法取引」導入の狙いと問題点
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組織的犯罪の根絶に期待。捜査機関も制度実現を切望
他人の犯罪捜査に協力する見返りとして、自分の刑を軽くしてもらう、時には訴追を免れるといった司法取引の制度が日本にも導入される見通しと報道されています。
アメリカの刑事アクション映画などで、刑事が証人を護送するシーンが出てくることがあります。組織的犯罪の場合、末端の実行犯を逮捕したとしても、背後で指示している首謀者を捕まえないことには犯罪の根絶はできません。首謀者の指示の立証に協力する見返りとして、実行犯の刑を軽減するというのが司法取引の一般的なパターンです。
そのほかに、談合や贈収賄、覚せい剤等の禁止薬物や違法な銃器販売の売人から元締めの情報を提供させることなどがあります。司法取引は犯罪捜査にとって画期的な手法のため、捜査機関側はこの制度の実現を待ち望んでいるのだと思います。
無関係の他人が犯罪者にされてしまう危険性が付きまとう
ただ、その一方で、この制度に必然的に付きまとうのが「引き込み」のリスクです。自分の刑を軽くするために「首謀者に命じられただけ」と第三者を名指しするなど、無関係の他人が犯罪者にされてしまう危険性は付きまといます。
「無関係であれば処罰される心配はない」と思われるかもしれませんが、痴漢冤罪事件からもわかるように、一度、犯罪者の汚名を着せられた人が社会的に名誉回復することは非常に難しいことです。
仮に、裁判で無罪判決をとれたとしても、その結論が出るまでに仕事を失ってしまうかもしれませんし、家族関係も大きく傷つけられてしまうかもしれません。このような制度が実現していない現状でも、共犯事件において無関係の人間を巻き込んで自分の刑を軽くしようとすることはあることなので、司法取引が制度化したときには、そのようなリスクはさらに大きくなると考えられます。
犯罪組織への潜入捜査が制度的に導入される可能性も
もう一つ、最終的に司法取引で刑が減免されることを見越して、犯罪組織への潜入捜査が制度的に導入されることもあり得ます。捜査官が、犯罪組織の一員として犯罪行為を行うことを容認する世論が我が国にあるとは思えませんが、司法取引の容認は、そのようなところまで行き着く可能性があるということも意識しておく必要があります。
それでも、組織犯罪捜査には組織内部の人間は重要な情報源であることは間違いありません。適用される犯罪や場面を限定した上で導入するというのが、現実的なところなのではないでしょうか。
弁護士と中小企業診断士の視点で経営者と向き合うプロ
舛田雅彦さん(札幌総合法律事務所)
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