医療・介護改革法で介護難民増加の危険
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医療・介護制度を一体で改革する「地域医療・介護推進法」が成立
高齢化がピークを迎える「2025年問題」を前に、医療・介護制度を一体で改革する「地域医療・介護推進法」が6月18日に成立しました。消費増税に伴う社会保障改革の一環で、医療法や介護保険法など計19本をまとめた一括法の成立は、かなり乱暴だったのではないでしょうか。
個人的に今回の「医療・介護改革法」のポイントは、「新たな基金を創設し、医療・介護の連携を強化」「地域包括ケアシステムの構築と費用負担の公平化」と考えられます。医療・介護の連携強化は何年も前から唱えられていますが、実態は何も変わっておらず、ごく一部の積極的に取り組んでいる地域以外では全く機能していません。そこで問題となるのが、一体何をもって「連携」と言うのか、という点です。この基本的な指針がないため、今回も結局は「文言あれど実態なし」に終わってしまうと予想されます。
先日、「医療・介護の連携」をテーマとする研修に参加しました。そこで、「連携がうまくいっている」という報告者が「私の地域では、介護職と医師がプライベートで飲みに行けるくらい関係ができている」と発言していました。現場の認識さえ、そのレベルである現状を踏まえると、本気で施設から在宅へという高齢者政策を推進するのであれば、例えば退院時カンファレンスに介護職の参加を義務付け、それを評価するような仕組みが必要ではないでしょうか。
医療・介護改革法は、介護難民を生み出す危険性をはらんでいる
一方、「地域包括ケアシステムの構築と費用負担の公平化」は、予防給付を地域支援事業に移行し、市町村独自に取り組んで多様化を図るとのことですが、本質的な狙いは給付の抑制以外にありません。地域のボランティアを活用して介護予防を推進するため、市町村で工夫するという制度がまともに機能するには、かなりの困難が予想されるからです。「ボランティアで賄おう、お金がかからないから」とは大きな間違いで、支援を必要としている高齢者にサービスが行き渡るボランティア組織を維持するのは、かえって負担増を招く可能性が高い事は容易に想像できます。
老老介護が当たり前の時代に、どこにそれだけのマンパワーを持っている市町村があるのでしょうか。必要なサービスを受けたくても、提供できる仕組みが構築できない市町村の住民は、いわゆる「介護難民」となってしまう危険をはらんでいます。
また、「特別養護老人ホームは、中重度の要介護者を支える機能を備える」。これは致し方ない部分もありますが、待機者が大勢いる現状で、特別養護老人ホームに入居できないでいる高齢者は、十分なサービスの提供を受けられないまま生活することを余儀なくされます。一部の裕福な家庭は、民間の有料老人ホームあるいはサービス付き高齢者向け住宅などを利用できますが、そうではない高齢者は地域社会で孤立し「難民化」する恐れがあります。
介護の仕組みを若者世代にも感じてもらえるような施策を
最後に、費用負担が2割になる点についてですが、こうなることは以前から予測できていた事で、介護保険制度を継続するのであれば、致し方ないと考えられます。しかし、今回医療法と介護保険法を一緒に詰め込んで成立させてしまうのであれば、同じように少子化対策とセットにして将来的に少子化を食い止める施策も含め、全体像として社会保障の道筋が提示できなかったものか、残念でなりません。
例えば、20歳以上から介護保険を年齢スライド方式で負担するという方法も考えられます。介護というものを若者世代にも身近に感じてもらえるよう、中学生ほどから超高齢社会を支える仕組みを授業に取り入れるなど、長期的視野での取り組みも示すべきではないでしょうか。介護難民が増加しない事を祈りつつ、これからの動向を見守りたいと思います。
福祉施設の人材不足を解消する介護コンサルタント
松崎匡さん(合同会社M&Yファクトリー)
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