内々定辞退阻止、効果的な作戦は?
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就職活動は学生の売り手市場に。優秀な学生を巡って争奪戦が激化
来春大学卒の就職活動は、景気回復で学生の売り手市場の様相が強まる見込みです。リクルートホールディングスの調査によると、来春大学卒の求人数は計68万人と前年より25.6%増加。うち中小企業は44.5%増と、優秀な学生を巡って争奪戦が起きています。
経団連の倫理憲章で「学生の就職活動早期化を防ぐため、正式な内定日は、卒業・修了学年の10月1日以降とする」という取り決めがなされて以降、10月1日よりも前に出す内定は「内々定」と呼ばれています。株式会社マイナビの「大学生就職内定率調査」(2014年5月29日~6月2日実施)によると、5月までに企業から「内々定」を受けた学生の割合は49.0%でした。
求人数は伸びても、内々定は一部の優秀な学生に集中します。内々定先が複数ある学生は、「魅力的」と思える企業があれば、一度は自分を選んでくれた企業に対して申し訳ないと思いつつも、内々定辞退もやむを得ないのが現実です。企業の中には「内々定承諾書」を書かせるケースもあるようですが、これには法的拘束力が全くありません。日本国憲法第22条1項で、職業を選ぶ自由が保障されているからです。
ネガティブな内々定防止策は新入社員の早期離職を生む要因に
人材に力を入れている企業であればあるほど、内々定辞退阻止の効果的な作戦を模索しているのではないでしょうか。売り手市場下では、いわゆる「囲い込み」が頻繁に行われていました。また、内定辞退をすれば出身大学(とその後輩)の今後の求人に影響が出ると、学生の責任感に訴求して内定辞退を断念させることもあります。
しかし、このようなネガティブな防止策は有意なのでしょうか?近年、新入社員の早期離職が問題になっています。退職理由として多いのが、会社や仕事、人間関係に関する不満です。さらにこの理由を掘り下げていくと、退職した人たちは入社前から漠然と不安を抱えていたケースが多いことがわかります。
ポジティブな「内々定フォロー」で不安を払拭する仕組みづくりを
では、企業はどうすれば内々定学生から不安を払拭し、前向きな気持ちで入社日を迎えてもらうことができるのでしょうか。人事担当者には、内々定を「出すまで」と「出した後」の二段構えでの役割が求められます。出した後は「内々定フォロー」というポジティブな防止戦略が効力を発揮します。内々定後から4月1日入社日までの数ヵ月間を、企業サイドと内々定学生サイドが双方向コミュニケーションを構築する期間と位置付けます。第一には、会社が必要とする人材であることを強く印象付け、入社意欲を刺激すること。第二に、入社前からコミュニケーションの場を提供して交流を深めること。対面コミュニケーションとSNSを組み合わせ、担当者・先輩社員・内々定学生の三者間で継続した人間関係の場を提供することにより、絆を生み、愛社精神を高めてもらい、不安を払拭する仕組みが確立できます。
さらに3.11以降は、被災地でのボランティア合宿を行う企業もあり、働くことの根幹「人の役に立つ」の真の理解と貢献意欲を育むことは、机上では絶対に学ぶことのできない高い効果があったと話す人事担当者もいました。
内々定学生は、採用コストをかけて迎え入れる人材です。人事担当者が内々定学生に心を砕くことによって相互理解を深め合えれば、内々定辞退のみならず、入社前の不安を払拭し、入社後の人事配置のミスマッチを未然に防ぎ、早期離職を防止し、自社に貢献してくれる人材へと育っていく可能性を秘めています。内々定辞退防止の本質は、学生にとって他の内々定先に比べて「最も人間的に魅力的な企業になること」に尽きると思います。
豊富な経験と細やかな対応で頼れる人事・労務の専門家
大東恵子さん(あすか社会保険労務士法人)
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