セクハラやじ発言者に問われる法的責任
東京都議会における塩村議員に対するセクハラやじが物議
東京都議会における塩村議員に対するやじが物議を醸しています。議会においてセクハラやじ発言をした議員に対しては、どのような法的責任が生じるのでしょうか。
まず、地方自治法は、その第六章で「議会」についての定めを置いています。その第九節で議会の「紀律」を定めているところ、その中の第132条において「普通地方公共団体の議会の会議又は委員会においては、議員は、無礼の言葉を使用し、又は他人の私生活にわたる言論をしてはならない」と定めるとともに、続く第133条において「普通地方公共団体の議会の会議又は委員会において、侮辱を受けた議員は、これを議会に訴えて処分を求めることができる」と定めています。
地方自治法は、議員に対する懲罰として、4種類を定めている
そして、議員に対する懲罰としては、第十節において「公開の議場における戒告」「公開の議場における陳謝」「一定期間の出席停止」及び「除名」の4種類を定めており(同法第135条1項)、前記第132条違反もこれらの懲罰の対象となり、第133条に基づいて処分を求めるというのも、議会に対してこれらの懲罰を求めることを意味します。
もちろん、同法129条1項において「普通地方公共団体の議会の会議中この法律又は会議規則に違反しその他議場の秩序を乱す議員があるときは、議長は、これを静止し、又は発言を取り消させ、その命令に従わないときは、その日の会議が終わるまで発言を禁止し、又は議場の外に退去させることができる」と定めていますので、議長がその場で積極的な措置を講じることで解決することもあるでしょう。
セクハラやじ発言は正当な政治的言論の範疇を超え刑事上の責任も
以上は、あくまでも議会の紀律を維持するための自律的・内部的な作用に基づくものですから、セクハラやじ発言をした議員に対し議長が何らの措置も講じず、議会としても何らの懲罰もしないということは十分にあり得るところです。しかしながら、セクハラやじ発言を受けた特定の議員に対する民事上又は刑事上の責任は、議会の紀律維持の観点から定められた責任とは別のものですから、別途、そのような民事上又は刑事上の責任が生じる余地はあります。
セクハラやじ発言は、会議における議論を活発にするものではなく、対象者に対する個人攻撃ですから、正当な政治的言論の範疇を超えるものです。そうすると、対象者の性的自由ないし性的自己決定権等の人格権や名誉権等を侵害する違法な行為として、民事上で、不法行為に基づく損害賠償請求(慰謝料請求)の対象となるばかりでなく、刑事上も「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した」場合の名誉毀損罪(刑法230条)や、「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した」場合の侮辱罪(同法231条)に問われる可能性があります。
セクハラやじ発言をする議員が存在すること自体、忌々しきことです。政治に対する信頼を回復したいのであれば、そのような議員に対しては毅然とした態度で臨むべきではないでしょうか。