年金の給付額、30年後には月4万円に?
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財政検証では100年後も所得代替率は50%を超える結果だが…
財政検証とは、年金財政の健全性を5年に1回検証するもので、2004年に導入されたものです。そこで平均的な収入で40年間会社員だった夫と、同年齢の妻というモデル世帯を設定し、この世帯が65歳で受給を開始したときの年金額が、その時の現役男性のボーナス込の平均手取り収入の50%を上回ることが定められました。この割合を所得代替率といいます。
この年金の財政検証が厚生労働省から公表され、2024年以降に0.4%程度の実質経済成長が続く標準的なケースでは、所得代替率が2043年以降に50.6%で下げ止まることになり、100年後も50%を超える結果になっています。
経済状況によっては、30年後に現在の価値で満額月4万円前後に
年金額は毎年度、物価や賃金の変動により決まるのが原則ですが、受給者が増加していく中で支給額も比例して増やしていくのは年金財政に影響することになります。そこで、給付抑制策として、「マクロ経済スライド」という仕組みが導入されています。これは、現役世代の減少分と平均余命の延びの分を差し引いたもので、物価や賃金が上がる時だけ実施されるものです。
特に懸念されるのは物価や賃金が伸び悩み、高齢者や女性の雇用も進まないケースで、今年度24歳になるモデル世代が65歳から年金を受け取ることになると、マクロ経済スライドを2055年まで続けても、所得代替率は39パーセントになり50%を割り込むことになります。もっとも深刻なのは、国民年金の給付額が30年後には現在の価値で満額月4万円前後になってしまいます。免除の期間があれば、それ以下にもなります。
将来にツケを回さないためにマクロ経済スライドの完全実施が必要
年金制度を維持するためには総合的な対策が不可欠です。オプションの試算で示されていますが、現在40年の国民年金の加入期間を45年にすることや、厚生年金に加入していない短時間労働者に厚生年金の適用を拡大することでも所得代替率が上昇すると試算されています。
また、現在は物価や賃金が上昇した時しかマクロ経済スライドが実施されていませんが、下落時にも実施することで所得代替率の低下が小さく済み、受給開始を75歳まで繰り下げることでも所得代替率が改善すると試算されています。
これからは生産年齢人口の減少が予測されています。少子化対策も含め高齢者や女性が働きやすい環境づくりと、現在の年金生活者には負担になりますが、将来の年金を受け取る世代にツケを回さないためにマクロ経済スライドの完全実施が必要となるでしょう。
リスク対応型就業規則作成と障害年金請求の専門家
松本明親さん(社会保険労務士 松本事務所)
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