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特定支出控除は家計節約の切り札か?

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スーツの購入費や客先とのゴルフ費用が経費に?

特定支出控除は家計節約の切り札か?

平成24年度の税制改正で、特定支出控除制度の拡充措置が決まり、今春の確定申告から適用が開始されました。スーツの購入費や客先とのゴルフ費用が経費で落とせると期待する向きもあり、マスコミも「家計節約の切り札」などと報道していますが、実際はどうなのでしょう。

特定支出控除とは、「1.通勤費 2.転任の引越費用 3.研修費 4.資格取得費(弁護士や税理士資格を除く)5.単身赴任者の往復旅費」の自己負担合計額が、給与所得控除額を超える場合、超過部分の金額を給与所得から控除する制度です。給与所得者の公平感維持のためとの主旨で、昭和62年の税制改正で創設されました。ただ、各年の適用件数は10人足らずで、利用されることはほとんどありませんでした。これを給与所得控除の上限設定とのセットで、減税施策として打ち出したのが特定支出控除の拡充措置です。

具体的な改正内容ですが、適用基準金額の引き下げと、特定支出の範囲拡大から構成されています。まず適用基準金額ですが、給与所得控除額の2分の1を超える場合に引き下げられました。特定支出の範囲拡大については、「4.資格取得費」から除外していた弁護士や税理士資格を認めたほか、新たに「6.職務に関連する図書費 7.勤務に必要な衣服費 8.取引先との接待や交際費」の3項目を付け加えました。何となく、減税の恩恵が受けられるような印象を持ちますが、具体例を出して検証してみましょう。

特定支出控除の恩恵を受けられる人は限られてしまう

20代独身で、年収300万円のサラリーマンを想定してみます。懐具合には多少の余裕があり、主な特定支出は衣服費や交際費になります。制度上、範囲拡大として新たに付け加えられた3項目については、合計65万円までの上限が設けられています。すると、幾ら使おうが所得控除額は11万円だけ。税額に直せば、僅か22,231円のメリットしかありません。

また、業務に有用だろうと考えて専門学校に通ったとします。1~5に該当する支出については制限がありません。仮に35万円を使ったとすれば、スーツ代等と合わせ、特定支出合計額は100万円になります。税額メリットに直すと92,966円ですが、支出金額と税メリットの絶対額を比較すると、バランスが悪いようです。

40代、年収700万円の中堅サラリーマンではどうでしょうか。トータル95万円以上の特定支出があれば、超過部分が控除の対象になります。ただし、6~8の特定支出しかなければ65万円が限度なので、控除メリットは皆無です。平均的な家庭では、住宅ローンや子どもの教育費も掛かるため、自分のスーツ代や自腹の接待費を含め100万円を超える特定支出があれば、妻の怒りを買うかもしれません。さらに、年収1000万円以上になると、特定支出控除でのメリットはなくなります。以上のことから、特定支出控除に拡充措置が取られようと、家計節約の切り札とまでは言えず、恩恵を受けられる人は限られてしまいます。

老後に備えた資産形成や不動産活用を顧客目線で考える税理士

松浦章彦さん(<Office MⅡ>松浦章彦税理士事務所)

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