「すき家」ストライキの違法性
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5月29日の「肉の日」に、「すき家」でストライキ
牛丼チェーンの「すき家」において、5月29日の「肉の日」にストライキが行われたとの報道がなされました。事前には、インターネットの掲示板等で「違法なストライキに参加しないように」と呼び掛ける書き込みも多くなされていたようです。
ストライキとは、労働者が労働条件の改善等の要求を貫徹することを目的として、集団的に労務の提供を拒否すること。憲法28条で保障された労働三権(団結権、団体交渉権及び団体行動権(争議権))の一つである団体行動権の中核となるもので、国際人権規約(社会権規約)においても権利として保障されています。
これを受けて、労働組合法1条2項が、労働組合による正当な団体交渉等は「正当な行為」として刑事責任(例えば,威力業務妨害罪など)を負わないことを定めているのみならず、同法8条が、正当な争議行為により使用者が損害を受けたとしても、損害賠償請求できないものとして民事責任を負わないことも定めているところです。
正当性は、実施する主体、目的及び態様などによって判断される
では、逆に「正当でないストライキ」とは、どのようなものなのでしょうか。ストライキの正当性については、これを実施する主体、目的及び態様などによって判断されるものと解されています。
まず、主体ですが、基本的には労働組合が実施するものであることが必要です。これとは異なり、組合に属さない従業員によるものや、一部の組合員が執行部の方針に反して独自に行うストライキ(いわゆる「山猫スト」)は、正当とは認められません。
次に、目的ですが、政治的な要求を掲げたストライキ(いわゆる「政治スト」)は、正当とは認められません。そもそも政治的事項は労使の団体交渉の対象とはならず、その手段たるストライキが正当となり得る余地がないからです。
最後に、態様ですが、労務を提供しないとか、事業所を閉鎖するといった消極的なものであれば問題ありませんが、施設を損壊したり、乱闘などの暴力行為をするような場合は、もはや正当とはいえません。
今回の「すき家」のストライキが正当なものだったかどうかは、詳細を把握できないため判然としないところですが、組合が主体となって、その目的や態様にも特段の問題がなかったということであれば、違法性はなかったことになります。
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