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コラム
こころの問題<20> 「本当の自分」と「社会の中での自分」のギャップについて -1-
2015年12月14日
さて前回は「2つのアイデンティティ」ということで、自分というまとまりとしての「自己同一性」、社会の中での自分の立場としての「社会的自我同一性」について述べました。この二つの感覚はひとことで言えば「本当の自分」と「社会の中での自分」ということができるように思います。
私自身を振り返っても、また私が現在お会いしている相談者のことを考えてみても、この「二つの自分」の間のギャップというか距離感で苦しまれている方が多いようです。私の場合は、若い頃からずっとこの問題には直面してきたようです。例えば、今の仕事が果たして本当に自分のやりたい仕事かどうか?これは理屈で考えるより、なんとなく自分の中に違和感と言うか、不全感みたいなものが感じられることで意識ができました。
その結果、今のような職業についているわけですが。
このような「二つの自分」のあり方について考える時、私はよく「卵の黄身と殻のたとえ」を使ってお話することがあります。
卵は言うまでもなく、この世に生まれてきた状態です。中にはこれから形が生じてくるもととなる「黄身」があります。しかし「黄身」だけが産み出されたのでは、形を保つこともできないので、衝撃から身を守るために「殻」がどうしても必要です。さらに「黄身」と「殻」の間には「白身」という衝撃緩衝材のようなものが満ちていることで微妙な関係を保てているのです。
私はこの「黄身」が「本来の自分自身」であり、「殻」が「社会的な自分」ではないか、と考えています。つまり人は誰でも生まれ落ちたままの本来性だけで生きていくことは難しいのです。必ず「本来の自分が形になるまで」周囲の衝撃から「身を守るための殻」が必要なのです。例えば子どもは確かに幼い頃は「本来の自分」だけで生きていますが、しかしそれがそのまま社会で通用するわけもなく、必ず「社会化」されていくことが必要です。
その期間が小学校から始まる学校時代です。例えば「○○小学校の児童」「△△中学校・■□高校の生徒」「◇◆大学の学生」という形で「社会的な自分」を身にまといます。これが最初の「社会的アイデンティティ」の体験でしょう。学校の制服やプライドの殻に守られる中で、少しずつ「黄身」が固まっていきます。もちろん「△△中学校」の生徒であってもその学校の校則や先生方の指導方針と相いれない場合もあるでしょう。そういう時は摩擦や衝突が起きますが、その衝撃を和らげる力が「白身」の存在ですね。
「ほどよい柔軟な関係性」という白身をクッションにして、社会から身を守る「殻」の中で「本来の自分」としての黄身が時間をかけて成熟していくわけです。
しかし時にはその3者の関係が上手く行かない時もあります。そういう時はどうすればよいでしょうか。
それについてはまた次回。
◇◆◇ こころの問題を考える時のヒント
こころの問題<19> 2種類のアイデンティティとは?
http://mbp-japan.com/hyogo/officekishii/column/54217/
こころの問題<18> 「アイデンティティ」
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こころの問題<5> 大切にさせたい「自分だけの世界」
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