いじめの体験を歌に載せて感動を巻き起こした二人の少年
「物語」と言われて、皆さんはどういうことを思い浮かべますか?日本昔話やハリーポッターのようなファンタジーを思い浮かべるかもしれませんね。でも、そういう作品としての物語だけではなく、私たちが生きるということ自体がそれぞれの物語を作り出すことなのかもしれません。
たとえば身近なところでは、今日一日どう過ごそうか、などと言う予定もひとつの物語でしょう。また過ぎ去った挫折やショックを自分の中で納得させて明日へと立ち直る物語もありますね。初詣に行って、神様に今年1年の幸いを願うのも、神様が守ってくれるだろうという物語の一つかもしれません。
少し前の雑誌「広告」2011/10月号の特集テーマは「明日を生きるための物語論」でした。その特集の中で編集長の永井一史さんと精神科医の香山リカさんの対談がありました。その中で香山さんが面白いことを言っています。
以下はそこからの引用です。
< 今うつ病の患者さんが非常に多いんです。しかもこのうつ病と言う病気は「物語性」があまりない病気なんですね。なんとなく気持ちが滅入るとか起承転結がはっきりしない病気と言うか・・・・・・ひとつ言えるのは、精神疾患はいつの時代も、その背景にある時代性や社会と連動して起きるということです。現在の、うつ病の増加は、世界全体の物語の喪失という問題と関係しているのではないだろうか・・・・・>
確かに今の世の中、希望を持ってもなかなか現実にはかなうことが難しいですね。就職活動で苦労している若者を見ていると、そう簡単に甘い夢や希望を見ていられない、という殺伐とした現実に直面している様子に胸が痛みます。
しかしだからこそ、逆に言えば私たちは夢や希望を、そして物語やファンタジーを必要としている時代なのだ、と言うこともできるでしょう。厳しい現実を生き抜く物語、明日へと希望をつなぐ物語、いわば「遊び」の中で生きる力を生み出す必要があるのだと思います。若者が夢中なゲームや漫画はそのためにあるのかもしれませんね。
さて、私は夢や箱庭・コラージュ・絵画など、いろいろなイメージで物語を作り出す方法を主に使って、カウンセリングを行ってきました。ひと時ファンタジーの世界に浸り、ほっと自分自身を取り戻した後、そのエネルギーを明日の生きる力に結び付けていきます。時には苦しい、出口のない物語になることもありますが、人間には必ず自分を取り戻す力がある、と信じています。
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