ベトナム・ホーチミン市場視察レポート Vol.1|海外進出・オフショア開発で確認すべき「市場・人材・パートナー」
目次
年商1億円・3億円は、海外進出を考えるには早いのか?
海外進出に、「年商○億円以上なら可能」という一律の基準はありません。
私の海外進出支援先にも、創業当初から貿易商社として海外市場に取り組み、少人数の組織で、2026年現在、年商7億円を超えるまで成長した企業があります。
2026年版中小企業白書では、直接輸出に取り組んだ中小企業は、取り組んでいない企業より付加価値額の増加率が高い傾向が示されています。また2025年版白書では、比較的規模の小さい企業ほど、直接輸出が売上高の増加につながる傾向があり、早い段階から輸出に取り組む意義が示唆されています。
ただし、海外事業には、国内事業とは異なるノウハウとコストが必要です。それを支えられる経営体力がなければなりません。
年商1億円前後の企業にとっては、必ずしも現地法人を設立する段階ではないものの、海外市場を将来の成長市場として検証し始めるには、一つの重要な時期だと私は考えています。
年商3億円でも、赤字で資金繰りが厳しく、社長依存が強い会社であれば、海外への直接投資は危険です。逆に年商1億円またはそれ未満でも、高い収益性と財務余力があり、海外から既に引き合いがある、商品が小型・高付加価値である、国内事業が標準化されている、といった会社なら、輸出から海外市場を開拓することは十分可能です。
海外進出を始めるべきかどうかは、売上高だけではなく、「経営体力」と「海外でも再現できる競争力」で判断する。これが私の基本的な考え方です。
「大企業になってから海外へ」は、必ずしも正しくない
かつて日本企業の海外進出は、大手製造業が中心でした。中小企業も、大企業の海外生産に伴って取引先として海外へ進出するケースが多く、「海外進出は大企業の戦略」というイメージが残っています。
しかし現在では、中小企業・中堅企業にとっても、海外市場の獲得は重要な成長戦略の一つです。
私は、比較的小規模な企業の場合、最初から大きな海外投資を行うのではなく、まず海外市場を調査し、商談や輸出によって販路を検証することが現実的だと考えています。
そこで経験と実績を蓄積し、事業規模と経営体力が高まった段階で、現地法人や店舗などの直接投資を検討する。
海外進出は、一度に完成させるものではなく、このように段階的に育てていくものです。
年商1億円の会社は、まず「海外で売れるか」を確かめる
年商1億円前後になると、多くの企業で、社長個人の営業力やマネジメント力だけに頼る経営から、人を増やし、組織を整え、事業モデルそのものを拡張する経営への移行が始まります。
その過程では、人件費や管理コストも増えていきます。そこで、国内市場だけではなく、新しい販路として海外市場を検討する意味が出てきます。
ただし、この段階で重要なのは、「まず海外拠点をつくる」ことではありません。
最初に考えるべきことは、以下のポイントです。
自社の商品・サービスを買う顧客が海外に存在するのか。
現地の商品より高い価格でも選ばれる理由があるのか。
物流費や関税、販売マージンを負担しても利益が残るのか。
こうした点を、小さく検証することです。展示会や商談会への参加、海外バイヤーとの商談、テスト輸出など、比較的小さな投資から始める方法があります。
海外市場に可能性があることを確認してから、次の投資へ進む。
年商1億円前後の企業には、この順序が重要だと私は考えています。
誰が海外事業を担当するのか
海外進出で、中小企業が直面しやすい問題の一つが、「誰が海外事業を担当するのか」という問題です。
JETROの2025年度調査では、中小企業の84.7%が海外展開人材を人数面で「不足している・確保していない」と回答し、能力・適性についても88.5%が「不足している・期待水準を満たさない」と回答しています。
この問題は、すべてを自社採用だけで解決する必要はありません。市場調査、現地商談、貿易実務、法務、税務、法人設立など、専門性が必要な業務は、外部の専門家や海外進出支援会社を活用できます。
しかし、外部へ委託できない役割があります。それが、海外事業について最終的な意思決定を行い、予算と成果に責任を持つ社内責任者です。
語学や現地実務の知識は、外部の力で補完できます。一方、「なぜ海外へ出るのか」「いくら投資するのか」「いつ撤退するのか」を決める責任まで外部へ委ねることはできません。
年商1億円から5億円程度の企業であれば、社長または経営幹部が海外事業の責任者となり、不足する実務と専門知識を外部で補完する形が、現実的な選択肢の一つです。
社長が海外へ行っても、国内事業は回るか
中小企業の場合、社長自身が海外事業の責任者になるケースは少なくありません。
そこで重要になるのが、
「社長または経営幹部が海外事業に時間を使っても、国内事業は回るのか」
という問いです。
国内事業が社長や特定の幹部の営業力、判断力、人脈、現場対応に強く依存している会社では、その方の時間と関心が海外へ移った瞬間に、国内事業が弱くなる可能性があります。
海外進出を考えることが、結果として国内組織の個人依存を見直すきっかけになることもあります。海外へ出る準備と、国内事業を社長が不在でも回せる状態にすることは、並行して進める必要があります。
海外進出は「会社が大きくなってから」ではなく「小さく試すこと」から始める
海外進出は、大企業や製造業だけの戦略ではありません。一方で、成長を目指す企業が必ず海外へ出なければならないわけでもありません。
重要なのは、自社の成長戦略の中に海外市場という選択肢を置き、適切な時期に検証を始めることです。
例えば、
年商1億円前後で海外市場を知る。
商談や輸出によって、小さく需要を検証する。
年商3億円前後まで成長する過程で、海外事業の収益モデルと運営体制をつくる。
検証結果と経営体力が整った段階で、必要に応じて投資を大きくする。
このような段階的な進め方が考えられます。
海外進出で重要なのは、「何億円になったら進出するか」ではありません。自社の商品・サービスに海外需要があり、それを利益の出る形で再現でき、さらに人・資金・経営者の時間を投入できるかどうかです。
その条件が整った時が、その会社にとっての海外進出のタイミングです。
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