M&Aが、秘密のべールに包まれている理由
目次
会社の「終活」段階で、はじめて自社の企業価値を考えるのでは、あまりにもったいない
赤字会社や借入が多い会社でも、企業価値の高い会社は数多く存在する
会社の「終活」段階で、はじめて自社の企業価値を考えるのでは、あまりにもったいない
経営者自身が会社のオーナーであり、ほかに株主がいない中小企業では、決算が、税務申告とほぼ同義の「事務作業」として認識されていることが少なくありません。
1年間の証憑書類を税理士に送り、作成された消費税や法人税の申告書を確認し、指定された税額を納付する。この一連の作業だけで、決算が終わってしまうのです。
その結果、経営者が「いかに支払う税金を減らすか」という観点に立つのは、ある意味では当然です。
「税金として支払うくらいなら、経費として使ってしまおう」と考え、毎期、利益を圧縮する節税対策を繰り返す会社もあります。
しかし、ここには、企業経営上の大きな問題が潜んでいます。
納税額を減らすことだけを優先して利益を残さなければ、会社の内部留保は増えません。自己資本が蓄積されず、財務基盤も強化されないため、企業価値を高めにくい会社になってしまいます。
もちろん、企業価値は内部留保だけで決まるものではありません。しかし、利益を継続的に残す力や、安定した財務基盤は、金融機関や将来の買主が企業を評価するうえで、極めて重要な要素です。
企業価値を意識しない経営を続けていると、社会情勢の悪化や市場環境の急激な変化が起きた際に、経営戦略を転換し、新規事業へ投資する余力を持てなくなります。
金融機関から十分な資金調達を受けられず、事業転換や成長投資の機会を逃す可能性もあります。
さらに、経営者が引退を考える「収穫戦略」の段階になっても、会社の売却を希望する条件で実現できないことがあります。
その理由は、長い社歴があっても、買主から評価される企業価値が十分に蓄積されていないからです。
会社の終活段階になって、はじめて自社の企業価値を考えるのでは遅すぎます。
経営者が長い年月をかけて築いてきた事業を、最後に適正な価値として受け取るためには、会社を売却する直前ではなく、成長段階から企業価値を意識した経営を行う必要があります。
赤字会社や借入が多い会社でも、企業価値の高い会社は数多く存在する
企業価値は、会社が単年度で黒字か赤字かということだけで決まるものではありません。
企業価値を構成する要素には、税引後利益が貸借対照表の純資産に利益剰余金として蓄積された金額も含まれます。
しかし、企業価値は、このような「過去の利益の蓄積」だけではなく、将来、その会社が利益やキャッシュ・フローを生み出す力によっても評価されます。
例えば、AIをはじめとする成長分野の企業では、研究開発や人材採用、システム開発などに多額の先行投資を行った結果、単年度では赤字を計上していても、高い企業価値が認められる場合があります。
重要なのは、その赤字が、単なる事業不振による赤字なのか、それとも、将来の成長に向けた先行投資による赤字なのかという点です。
借入金についても同様です。
借入金が多いという事実だけで、直ちに企業価値が低いとは限りません。その資金が成長投資に使われ、借入金を上回る収益やキャッシュ・フローを将来生み出せるのであれば、企業価値が高く評価される可能性があります。
したがって、経営者は、単年度の黒字や赤字、借入金の額だけを見るのではなく、自社が将来生み出す利益、キャッシュ・フロー、競争優位性、顧客基盤、ブランド、人材、技術などを含めて、企業価値を継続的に把握することが重要です。
そして、企業価値を把握することは、「今、この会社を売却するとすれば、どの程度の価格で評価される可能性があるのか」を理解することにもつながります。
ただし、企業価値と、実際に成立するM&Aの売却価格は、必ずしも同じではありません。
最終的な売却価格は、買主候補の数、買収によって生まれる相乗効果、交渉条件、財務・法務上のリスクなどによっても変動します。
企業価値とは、どのように算出されるのか?
このように、自社の企業価値を知ることは、経営者にとって極めて重要です。
それでは、企業価値は、どのような方法で算出されるのでしょうか?
企業価値を評価する方法には、大きくわけて3つの考え方があります。
・同じような規模や業態の売却事例の取引価格から算出する方法
・純資産に、のれん価値を加えて算出する方法
・未来にあがる利益を現在価値に引き直して算出する方法
同じような規模や業態の売却事例を参考にする方法は、一般に、マーケット・アプローチと呼ばれます。
上場企業であれば、株価や財務情報が公開されているため、類似企業との比較が比較的容易です。
一方、日本の中小企業のM&Aでは、個別の取引価格や詳細な財務情報が公開されないことが多く、自社と十分に類似した取引事例を集めることは簡単ではありません。
そのため、中小企業の企業価値評価では、修正後の純資産に営業権などの価値を加える方法や、将来生み出す利益・キャッシュ・フローを現在価値に割り引く方法が用いられます。
実際のM&Aにおいて、買主企業の立場から投資価値を検討する際、私も長年、これらの考え方を組み合わせて、売主企業の企業価値や、許容できる買収価格を算定してきました。
ただし、企業価値評価は、計算式に数字を入れれば、一つの正解が自動的に出てくるものではありません。
将来の利益計画、成長率、事業リスク、経営者への依存度、主要取引先との関係、人材や技術の承継可能性など、さまざまな要素を総合的に検討する必要があります。
この2つの方法の具体的な計算法は、非常に専門的な内容になるため、ここでは詳しく述べません。
自分の会社の企業価値を知ることで、今後の経営戦略が、はじめて生まれてくる
具体的な計算方法を理解すること以上に、経営者が知っておくべき重要なキーワードが、「のれん」と「未来の利益を現在価値に引き直す」という考え方です。
のれんとは、M&Aにおいて、一般的には、買収価格のうち、買収対象会社の時価純資産を上回る部分を指します。
では、なぜ、M&Aの買主企業は、買収する会社の純資産を上回る金額を支払うのでしょうか?
企業の純資産は、主として、株主が過去に出資した資本と、その会社が過去に獲得し、蓄積してきた利益によって構成されています。
つまり、純資産は、企業が過去から現在までに蓄積してきた財務上の価値を表しています。
一方、のれんには、財務諸表に直接表示されていないブランド、顧客基盤、取引先との関係、技術、ノウハウ、人材、営業組織、許認可、地域における信用力などの価値が反映されます。
さらに、買主企業が、買収後にその会社から得られると見込む将来利益や、買主との相乗効果も、買収価格を構成する重要な要素になります。
このことから、企業価値は、単なる貸借対照表上の純資産だけでは把握できないことがわかります。
過去に株主が出資した価値、過去に蓄積した利益、財務諸表に直接表れない無形の経営資源、そして将来生み出す利益やキャッシュ・フローを現在価値に換算した金額を、総合的に評価する必要があります。
経営者は、このような自社の総合的な価値を把握したうえで、どの要素を強化すれば企業価値が高まるのかを考えなければなりません。
例えば、特定の経営者や取引先に依存しすぎているのであれば、組織化や顧客分散を進める必要があります。
利益率が低いのであれば、商品構成や価格政策を見直す必要があります。
将来性のある事業が十分に育っていないのであれば、新規事業や成長市場への投資が必要になります。
企業価値を把握することによって、経営者は、成長投資、資金調達、事業承継、資本提携、M&Aといった経営戦略を、具体的に設計できるようになるのです。
そして、その企業価値を長期的に高めていくことが、経営者にとって、将来の大きな収穫につながります。
M&Aは、自分の会社の企業価値を「現金化」する方法のひとつ
企業価値を把握し、その向上に努めてきた経営者が、その価値から「収穫」を得る方法には、いくつかの選択肢があります。
企業を上場させ、株式市場で企業価値を反映した株価を形成することも、その一つです。
しかし、株式上場には、一定の事業規模、成長性、管理体制、監査体制などが求められます。準備期間や費用も必要となるため、すべての中小企業が現実的に選択できる方法ではありません。
そこで、中小企業のオーナー経営者にとって、企業価値を現金化する有力な選択肢となるのが、M&Aです。
M&Aは、会社が蓄積してきた純資産だけではなく、財務諸表に直接表れないブランド、顧客基盤、ノウハウ、人材、将来収益などの価値を評価する買主を見つけることによって、オーナー経営者が長年かけて築いてきた企業価値を「現金化」する方法の一つです。
ただし、会社を売却しようと思い立った時点から、短期間で企業価値を大幅に高めることは容易ではありません。
買主から評価される収益力、組織体制、財務内容、顧客基盤、経営者に依存しない事業運営体制は、数年をかけて計画的に構築する必要があります。
そのため、M&Aを直ちに予定していない成長段階の企業であっても、現在の企業価値を把握し、将来の売却や資本提携を見据えて企業価値を高める経営に着手することが重要です。
URVグローバルグループの「成長企業M&Aアドバイザリー」では、単に会社の売却相手を探すだけではなく、成長段階から企業価値を把握し、その価値を高める経営戦略の策定、資本提携、買収戦略、売却準備、交渉、M&A後の統合までを支援しています。
「自社には、現在どの程度の企業価値があるのか」「今後、何を改善すれば、企業価値を高められるのか」「成長戦略としてM&Aや資本提携を活用できないか」とお考えの経営者は、会社の終活段階を迎える前に、自社の企業価値を確認することから始めることをお勧めします。
URVグローバルグループの「成長企業M&Aアドバイザリー」サービス
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