EBITDAとは?M&Aで企業価値を考える経営者が知るべき計算方法と注意点
もう「特別なこと」ではない、日本のM&A
日本企業によるM&Aは、現在、非常に活発になっています。レコフデータの集計によると、2025年の日本企業のM&A件数は5,115件、金額は35.7兆円となり、件数・金額とも過去最高を更新しました。
もちろん、この統計だけで、日本のすべての中小企業M&Aを把握できるわけではありません。
しかし、少なくとも、「M&Aは、一部の大企業だけが行う特殊な経営手法」という時代では、すでにありません。
事業承継。新規事業。他地域への進出。海外展開。人材獲得。技術獲得。事業再編。資本提携。そして、オーナー経営者自身が保有する株式資産の価値を実現する方法。
M&Aは、さまざまな目的に使われるようになっています。
オーナー経営者にとってM&Aとは、「会社を売って経営者を辞めるための方法」だけではありません。会社と自分自身が持っている経営資源を、次の成長へ動かすための資本戦略です。
オーナー経営者は、「年収」だけで自分の経済的成果を考えてはいけない
会社員の場合、給与、賞与、退職金などが、人生における主要な収入になります。
しかし、オーナー経営者は違います。役員報酬を受け取るだけでなく、自分が保有している会社の株式そのものが、大きな資産だからです。
例えば、「毎年3000万円の役員報酬を受け取る経営者」と、「役員報酬は一定水準に抑えながら、会社の利益・組織・顧客基盤・ブランドを育て、自社株式の価値を大きく高めている経営者」では、「年収」だけを比較しても、本当の経済的成果は分かりません。
後者には、株式を保有し続ける、一部を譲渡する、配当を得る、資本提携する、事業承継する、将来M&Aで譲渡する、という選択肢があります。
そこで僕は、オーナー経営者は、
毎年いくら役員報酬を得るかだけではなく、
自分の会社そのものを、どれだけ価値ある資産へ育てるか
を考えるべきだと私は思っています。
役員報酬を増やす経営から、「企業価値を積み上げる経営」へ
オーナー会社で利益が出ると、「役員報酬をもっと増やそう。」と考えることがあります。もちろん、経営者が自身の仕事と責任に見合った役員報酬を受け取ることは当然です。
しかし、会社が稼いだ利益をすべて経営者個人へ移すことだけが、オーナー経営ではありません。
利益を会社に残し、財務基盤を強くする、人材へ投資する、商品へ投資する、マーケティングへ投資する、新規事業へ投資する、M&Aへ投資する、海外へ進出する。
こうした投資によって、利益、キャッシュ創出力、顧客基盤、ブランド、技術、組織が強くなれば、会社そのものの価値を高められる可能性があります。
役員報酬は「現在の収入」です。自社株式は、「将来価値を大きくできる可能性を持つ資産」です。
オーナー経営者は、その両方を見る必要があります。
M&Aは、事業承継だけの手法ではない
日本では、M&Aというと、「後継者がいないので会社を売る。」という事業承継型M&Aが広く知られています。
もちろん、これは非常に重要なM&Aの役割です。
しかし、M&Aにはもう一つの使い方があります。会社をさらに成長させるためのM&Aです。
例えば、
自社には資金が不足している、しかし強い商品がある。
自社には技術がある、しかし販路がない。
国内では成功した、しかし海外ネットワークがない。
優秀な経営者がいる、しかし採用力が弱い。
このような会社が、自社単独では10年かかる成長を、より短い期間で実現できるのがM&A、資本提携のメリットです。
私は、このような発想によるM&Aを、「成長企業M&A」と位置づけています。
本当に、自社株式を100%持ち続けることが最善でしょうか?
オーナー経営者にとって、自社株式を他人へ渡すという判断は簡単ではありません。株式は、会社に対する支配権、議決権、将来の経済的利益に関係する重要な資産だからです。
したがって、「株を売れば成長できる。」という単純な話ではありません。
しかし一方で、100%所有そのものが、経営目的になっていないかは考えてみる価値があります。
例えば、
現在100%保有している企業価値3億円の会社
と、
戦略的パートナーの資本参加を受け、オーナーの持分は60%になったが、企業価値が10億円まで成長した会社
では、単純に「持株比率が下がったから損をした」とは言えません。
重要なのは、
何%持っているかだけではなく、何%の、どれほど価値のある会社を持っているか
です。
「株式を売ること」と「会社へ資金を入れること」は違う
ここは、成長企業M&Aを考えるうえで非常に重要です。
例えば、オーナー経営者が、自分が保有している株式の20%を別会社へ売却したとします。これは、既存株式の譲渡です。
原則として、その売却代金を受け取るのは株式を売ったオーナーであって、会社そのものへ資金が入るわけではありません。
一方、会社が新しい株式を発行し、投資企業から出資を受ける、第三者割当増資であれば、資金は会社へ入ります。
つまり、
既存株式の譲渡
=オーナー保有資産の一部を資金化する
第三者割当増資など
=会社へ成長資金を入れる
という違いがあります。
この二つを組み合わせることも可能です。
例えば、一部の既存株式を譲渡し、オーナー自身も一定額を資金化する、同時に会社が増資し、新規事業へ投入する成長資金も確保する、という設計です。
成長企業M&Aでは、「株を何%売るか」を先に決めるのではありません。オーナー個人と会社の双方について、「何を実現したいのか」から資本政策を設計します。
「成長企業M&A」を活用する5つのメリット
メリット1 借入とは異なる成長資金を導入できる
中小企業の成長資金は、自己資金、事業利益、金融機関からの借入、で調達することが一般的です。
これらは非常に重要な資金調達手段です。
しかし、成長速度をさらに高めようとすると、エクイティによる資金調達という選択肢も出てきます。
例えば第三者割当増資によって投資企業から出資を受ければ、会社の自己資本を増やしながら、成長投資のための資金を確保できます。
銀行借入には返済義務がある一方、株式には議決権・経済的権利があり、株主としての権利が生じる、という違いがあります。
「返済不要だから株式調達の方が有利」というものではありません。
借入とエクイティのどちらを使うかは、資金使途、経営権への考え方まで含めて判断する必要があります。
メリット2 自社にない経営資源を取り込める
資本提携の大きなメリットは、おカネだけではありません。
例えば提携先が、全国販売網、海外拠点、技術、ブランド、大手企業との取引実績、優秀な経営人材、採用力、物流網、生産設備、などを持っている場合があります。
こうした経営資源を自社だけでゼロから構築するには、何年もかかるかもしれません。しかし、適切なパートナーとの資本・事業提携によって、短期間で利用できる可能性があります。成長企業M&Aで本当に買う、あるいは取り込むものは、「資金」だけではありません。自社に足りない経営資源です。
メリット3 オーナー自身の資産を一部資金化しながら、経営を続けられる場合がある
M&Aは、100%売却だけではありません。
例えば、株式の一部を譲渡する、資本提携する、共同経営へ移行する、という方法もあります。
これによって、オーナー自身は保有株式の一部を資金化しながら、残りの株式を保有し、代表取締役として引き続き会社を経営するという設計が可能な場合があります。
さらに、その資本提携によって会社が成長し、企業価値が高まれば、残している株式の価値も高まる可能性があります。
これは、
一度目の資本化
=一部株式譲渡
その後の企業成長
二度目の資本化
=残余株式の譲渡等
という、段階的な資本戦略につながる場合もあります。
メリット4 オーナー経営者の資産を「会社だけ」に集中させる状態を変えられる
オーナー経営者の場合、自分の資産の大部分が自社株式という一つの資産へ集中していることがあります。この状態は、会社が成長すれば大きな価値を生む反面、会社に何かあれば、自分の個人資産にも大きな影響が出ます。特に、相続を考えた場合、資金に還元できない相続税が、相続人に大量に発生するリスクがあります。
一部株式の譲渡によって、自社株式の一部を現預金など別の資産へ変えることは、オーナー個人の資産構成を見直す機会にもなります。
これは、「会社を見捨てる」ということではありません。企業経営と、オーナー個人の資産形成・リスク管理を、別々の視点から考えるということです。
メリット5 次の成長ステージへ進む選択肢を増やせる
資本提携先が、大企業、投資ファンドなどの場合、その経営資源を活用して、売上拡大、全国展開、海外展開、追加M&A、管理体制の強化などへ進める可能性があります。
重要なのは、経営者がどんな会社をつくりたいのかというゴールから逆算して、資本政策を選ぶことです。
オーナー経営者がM&Aを考えるときの7つの問い
会社を売る予定がまだなくても、オーナー経営者であれば、次の問いを考えてみてください。
1.自社の株式価値は、現在どのくらいあるのか
2.5年後、その価値をいくらまで高めたいのか
3.自分は100%株式を保有し続ける必要があるのか
4.自社に不足している経営資源は何か
5.どのような企業と組めば、企業価値を最も高められるのか
6.資本を受け入れた後も、自分は経営を続けたいのか
7.最終的に、自社株式をどのような形で次世代・第三者へ移していきたいのか
この問いへの答えが、オーナー経営者としての資本政策になります。
企業価値向上と成長企業M&Aを、早い段階から考えたいオーナー経営者の方へ
「自社の企業価値が現在いくらなのか知りたい」
「会社を売却する予定はないが、資本提携には興味がある」
「株式の一部を譲渡しても、自分自身は経営を続けたい」
「自社に不足する資金・人材・販路・海外ネットワークを、他社との提携によって補いたい」
「将来のM&Aに備え、企業価値を高めたい」
「役員報酬だけではなく、自社株式を含めたオーナーとしての資産形成を考えたい」
こうした課題は、実際に会社を売る段階になってから考えるのではなく、会社が成長している段階から考える方が、選択肢を広げられます。
URVグローバルグループの「成長企業M&A」
会社の「終活」としてのM&Aだけではなく、成長企業と投資企業を、事業提携・資本提携・M&Aによって結び、双方の経営資源を活かした企業価値向上と次の成長を目指します。
事業提携や少数持分の資本提携から段階的に進める方法、成長企業側のM&A準備、投資企業とのマッチング、M&A成立後のPMIまで支援します。
https://urv-group.com/services/consulting/growing-manda/
年商5億円の壁を突破するための経営者伴走コンサルティング
年商3000万円から4億円程度のオーナー社長を対象に、2026年3月期・グループ総売上高48億円の企業グループを経営する現役オーナーCEOである松本尚典が、企業価値向上、新規事業、組織、財務、マーケティング、M&A・資本提携を含め、経営判断と実行に継続して伴走します。
https://mbp-japan.com/tokyo/yoshinori-matsumoto/service1/5002501/


