事業計画作成法を伝授します⑧~スケジュールとプロジェクト体制を策定する~
1.タイムパフォーマンスとは、時間対効果
コストパフォーマンス(所謂、コスパ)は、よく知っている方でも、タイムパフォーマンスという言葉は、はじめて聞いた、という方。
多いのではないでしょうか?
タイムパフォーマンスという言葉は、時間対効果を意味するテクニカルタームです。
例えば、皆さんが買い物に行くダイソー。
顧客のダイソーでの平均滞在時間は約30分と記録されています。一方、ダイソーにおける顧客購入平均単価は約500円だそうです。
そうすると、ダイソーの店舗というのは、1,000円/1時間 のコンテンツというタイムパフォーマンスになります。
今度は、弊社の事例を開示しましょう。
僕が投資する企業のグループであるURVグローバルグループのパートナー企業、株式会社TJ TAKANO JAPANが経営する、仙台の焼肉の名店 泰山。こちらの、関東初進出店 「焼肉泰山越谷店」(https://urv-group.com/works/works-018/)は、住宅地における駅近エリアの店舗でありながら、泰山が誇る老舗の味と、TJの商品開発力のシナジーが織りなす商品力が、お客様から絶賛を受け、お客様の平均滞在時間は80分、1名あたりのお客様飲食平均単価は7,000円です。
そうしますと、泰山越谷店は、5,250円/1時間のコンテンツのタイムパフォーマンスとなります。
泰山越谷店は、ダイソーの5.25倍のタイムパフォーマンスを出す店ということがわかります。
例えば、よく、飲食業の経営者や店長が、団体客をいれるために、大きな広告費を投入しているのを目にします。
彼らは、団体客の場合の売上総額が、一気にあがることの効果に着目しています。
しかし、僕の長年の飲食事業の経験では、5名を超える団体客は、タイムパフォーマンスが非常に悪いと感じています。
5名以上の団体は、割り勘や会費制が多いため、料理のコースの価格を抑えてきます。加えて、呑み放題であれば、その時間は、絶対に席を占領し続けます。呑み放題は、下代が非常に安価なアルコールを中心に構成しているので、利益率が確保できると想いがちですが、実際は、価格の安い料理のコースを、おしゃべりをし、騒ぎながら席に居座るため、一人当たりのタイムパフォーマンスは、4名以内の家族連れやカップルなどに比べて、悪くなります。
企業は、店舗経営業態に限らず、必ず、固定経費を要します。オフィスや店の家賃・水道光熱費や、人件費、経常的な広告費などです。
そして、今の企業は、従業員にサービス残業を強いるようなことはできません。
そうなると、どのような企業も、必ず、時間にコストがかかってきます。従って、時間単位で、どれだけコストを回収し、そのコストに対する収益率をアップさせるかが、経営の重要な指標となります。
この指標がタイムパフォーマンスです。
2.様々な業態のタイムパフォーマンスを知ろう
タイムパフォーマンスは、今や、様々な業態の企業によって意識され、経営の指標になっています。また、個人の方の仕事としても、タイムパフォーマンスは、重要な指針となっています。
では、自分の仕事や、自分の会社の事業は、タイムパフォーマンスがよいのでしょうか?
これを検討するには、様々な業態のタイムパフォーマンスを知っておくと便利です。
以下、いくつかの事例をあげておきます。
●映画
映画館を考えてみましょう。
映画館のチケットは、割引チケットやレイトショーなどがあり、これを平均すると、2時間のコンテンツで顧客単価が約1,600円となっています。
そうすると、タイムパフォーマンスは、800円/1時間ということになります。
このタイムパフォーマンスは、大体、スポーツ観戦のタイムパフォーマンスと凡そ一致します。
映画館やスポーツ観戦のビジネスは、視聴者の数の量と、視聴料以外の収入(広告収入や飲食物の収入)によって成立させているビジネスで、本業としてのエンターテイメントの観戦収益としてのタイムパフォーマンスは、非常に低いことがわかります。
●サラリーマンとアルバイト
アルバイトで仕事をしている場合、このタイムパフォーマンスが正社員よりも一般的には悪くなります。通勤などの条件は、同じであると仮定すると、正社員で給与が35万円のAさんのタイムパフォーマンスを考えてみましょう。
正社員の場合、実は、本人が得ている収益は、給与の総額だけではありません。企業は、本人が負担する社会保険料とほぼ同額の費用を法定福利費として支出しています。これは、健康保険や介護保険・厚生年金として、本人の医療費や将来の年金・介護サービスとして、本人が利益を受けとりますので、実質的に本人の所得と同視できます。
現在の日本の場合、給与総額35万円のサラリーマンの法定福利費は約5万円ですので、40万円となります。
仮に、月20日勤務、一日労働時間8時間とすると、このサラリーマンAさんのタイムパフォーマンスは、2,500円/1時間となります。
一方、アルバイトBさんの場合、会社が社会保険に入れてくれない場合が非常に多く、時給が、1100円程度が平均となりますので、サラリーマンAさんに対する、アルバイトBさんのタイムパフォーマンスは半分以下となります。
一般的に非正規社員のタイムパフォーマンスは、正規雇用の社員より悪くなっています。
3.タイムパフォーマンスをアップさせるという発想を持とう
アメリカで成功する経営者は、このタイムパフォーマンスの発想に非常に長けています。
日本でも、企業を判断する重要な指標のひとつに、生産性があります。この生産性という考え方は、投下された設備投資や、稼働しているヒトの労務費を基準にして、どれがどの程度の付加価値を生み出しているか、という点に関する分析に利される概念です。
企業というものは、他社から仕入れた仕入れを基にして、それに付加価値を自社でつけて販売する組織です。従って、企業が生み出す粗利益(売上利益)というものは、この付加価値の結果、生み出されています。
この粗利益は、付加価値を生み出すための販売費および一般管理費と、営業利益によって構成されています。この販売費および一般管理費(の全部または一部)に対する営業利益の割合が、生産性を示しています。これが、コストパフォーマンスという考え方の正体です。
このような生産性の分析の対象となる付加価値が、ある時間単位で、どれだけ効率的に生み出されているか、という点が、タイムパフォーマンスということになります。
従って、事業を行う事業体は、このコストパフォーマンスを向上させることと同時に、タイムパフォーマンスを上昇させることが、その利益効率を高めることに繋がるのです。
4.タイムパフォーマンスを向上させる方法
では、タイムパフォーマンスを向上させるには、どのような方法を使えばよいのでしょうか?
① 収益を向上させる
② 収益獲得に要する時間を圧縮する
このいずれかの方法、または両方の方法を同時に実施することで、タイムパフォーマンスは向上します。
つまり、特定の収益をえるために要する時間の効率をあげる、ということが重要な要素になります。
わかりやすい飲食店で説明しましょう。
例えば、お客様の顧客単価が安くても、立ち食い形式の店舗のように、回転率が非常に高い場合、タイムパフォーマンスはよくなります。
一方、喫茶店のように、いっぱいのコーヒーで、お客様が席を作業などで占領し、数時間、動いてくれない店舗は、タイムパフォーマンスは悪くなります。
コーヒーショップで、行列が出来ているとすると、それは、その店が繁盛をしているからではなく、タイムパフォーマンスが悪いからなのです。
ランチ営業は、基本的に回転がよいため、顧客単価が安くても問題ありません。
一方、ランチとディナーに同じメニューを同じ価格で提供する店の場合、ランチと比較して、ディナーは確実に回転率が落ちますので、メニューの変更と価格の変更をかけないと、タイムパフォーマンスが悪化します。
顧客単価を下げて、回転率をあげる経営を目指すのか。
顧客単価をあげて、じっくりと、味わい、楽しんでいただく経営を目指すのか。
この点を、戦略的に考える必要があります。
客単価の安い団体客や、料理や酒をほとんど注文しない顧客が、長時間、だらだらと席を占領する店は、タイムパフォーマンスが悪く、固定比率が上昇してしまうため、新型コロナ禍のような事態に、非常に弱い業態になっていってしまいます。
ワタミに代表される、低料金の居酒屋が、大資本であるにもかかわらず、新型コロナ禍で、撤退を余儀なくされた理由も、以前から、タイムパフォーマンスが悪い経営を放置してきたためであると、言ってよいでしょう。
続く
松本尚典の中小企業経営者支援コンサルティングサービス
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