マイベストプロ東京
松本尚典

年商5億円の壁を突破したい社長のための経営コンサルタント

松本尚典(まつもとよしのり) / 経営コンサルタント

URVグローバルグループ 

コラム

成長戦略を採らねばならないならない企業 成長戦略をとってはならない企業

2022年7月23日 公開 / 2022年9月16日更新

テーマ:事業計画 マーケティング戦略

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: 事業計画書マーケティング戦略経営戦略


1.成長戦略の目標とは?


伸びている企業というのは、前年よりも今年、そして今年よりも来年と、売上や収益を切り上げている企業を言います。

前年も、今年も、来年も、売上や収益が同じ数値をぐるぐると回っている企業は、その商品が、既に商品ライフサイクルの成熟期に達し、競合が増加している状態にいる場合が殆どです。

企業は、売上や収益がのびなくても、費用コストは上昇してゆくのが常であるため、このような状態に至った企業は、今は、存続ができていても、そのまま放置すれば、商品ライフサイクルは、近いうちに減退期に至り、過当競争に晒されて価格が下落をはじめ、費用コストが賄えなくなって、時の経過とともに、倒れていきます。

逆に、売上や収益が急速に上昇した企業は、先進国の税制の中では、その急上昇をした収益に対する法人税等の急増が伴うため、所得再配分政策の的になって、収益を社内留保することができず、その後の急落に見舞われて、費用コストを賄うことができなくなり、これもまた、倒れてしまいます。

従って、企業が順調に経営を続けるためには、停滞も、急成長も、非常に危険であり、売上と収益を切り上げていく成長を計画的に遂げるしか方法はありません。

このような、企業の売り上げや収益を計画的に切り上げる方法を立案することが、成長戦略の目標です。

2.成長戦略の落とし穴


しかしながら、このような企業の健全な存続のための重要な目標である成長戦略は、どのような企業でも採用できるわけではありません。

成長戦略にも、大きな落とし穴があるのです。

企業価値(バリュエーション)を構成する要素は、

・企業の財産的価値(純資産から負債を除した額)
・ROIC(Return On Invetsed Capital 投下資本収益率)
・成長率


この3点です。

このうち、企業の財産的な価値は、バランスシート(貸借対照表)から客観的に算出できる値であり、財務諸表が正確に作成されている限り、一義的に決まります。そして、企業の財産的価値は、株主からの払い込まれた部分を除けば、ROICの結果の利益の集積によって生まれたものです。

一方、成長率は、将来の企業価値に関わる指標ですので、一義的ではなく、これをどう評価するかが、企業価値の算出にとって大きな論点となりえます。

その成長率を決める大きなポイントが成長戦略ということになります。

さて、そのROICと成長率の相関関係について、マッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルタントメンバーの共著「企業価値表」(ダイヤモンド社)は、次のように言っています。

「ROICが低い企業の中には、利益率やROICが向上することを期待して、高い成長を目指す企業が多かった。売上成長によって固定費の割合が低くなりROICが増すというのが、その根拠だ。

しかし、起業直後のスタートアップ企業を除いて、成長率を上げることでROICが増すことは稀だ。ROICが低い場合は、産業構造が悪いか、ビジネスモデルが問題か、オペレーションが脆弱であることが多い。ROICの問題を解決するまでは成長を志向すべきではないのである。」


この指摘は、非常に優れた卓見であると、僕は思います。

成長戦略には、非常に大きな資金的資源と人的資源の投資が要求されます。これを持ちこたえ、かつ投資が単月の収益の集積によって回収される損益分岐点を超えて、はじめて、成長戦略から大きな収益が期待できるのです。

この損益分岐点を超えるまで、企業を支えるものは、既存事業におけるROICに他なりません。

従って、企業価値を構成する要素のうち、ROICの向上は、成長率に先行するものといえましょう。

以上の考察の結果、先にあげた企業価値を構成する3要素を決定づけ、先行して高まる要素は、ROICです。

この点が、先に申し上げた、成長戦略の落とし穴に繋がります。

企業が順調に経営を続けるためには、停滞も、急成長も、非常に危険であり、売上と収益を切り上げていく成長を計画的に遂げるしか方法はないのです。しかし、その成長を計画的に遂げる成長戦略によって、成長率を高めるためには、既存事業におけるROIC、すなわち投下資本収益率が高いことが前提となります。

投下資本収益率が低い企業が、成長戦略をいたずらに追求しても、成長率を追求する前に、企業が投資に耐えきれず、崩壊を起こしてしまうのです。

成長戦略というものは、どんな企業でも採用してよいわけではないのです。

成長戦略を採用し、成長軌道に会社をのせるためには、それまで培ってきた本業の事業で、投資に対する収益の効率が高い企業であることが要求されます。それができていないと、成長戦略を採用することで、キャッシュに過大な負担がかかり、企業自体の存続リスクを高めてしまうのです。

3.投下資本収益率を高める、ストック型収益要素の積み上げ


では、ROIC(投下資本収益率)を本業で高めるためには、どのような施策が必要なのでしょうか?

ROICが高い事業の特徴は、収益のモデルで、ストック型収益要素が積みあがっていることがあげられます。

企業の収益というのは、大きくわけて、以下の2つの種別があります。

・ストック型収益
・成功報酬型収益


例えば、わかりやすい事例で、商品を販売する店舗を考えてみましょう。

この店舗は、商品を仕入れ、集客のために広告を行っています。この仕入れに要するコストと、広告に要するコストが投資となります。

この店舗では、仕入れに要するコストは売上の40%、広告に要するコストは、1名の顧客を集客するための広告料に1,000円をかけているものとします。

今、ある一日に、10名の顧客が来店し、100,000円の売り上げがあったと仮定します。

この10名の顧客のうち、以前に来店した顧客が再度来店する場合、この顧客をリピーターと呼びます。このようなリピーターが再来店して購入してくれることによる収益を、ストック型収益と呼びます。

一方、10名の顧客が全員、広告をみてはじめて来店をした場合、この顧客は広告の結果、来店をした顧客であるといえますので、この収益は成功報酬型収益であると評価できます。

さて、先の例で、この10名100,000円の顧客と売上のうち、6名50,000.円がリピーターの購買であったとします。

この場合の投資額は、仕入れに要するコストが40,000円、広告費は、新規顧客が4名ですので4,000円ということになり、投資額は44,000円です。その44,000円で、100,000円の売上からコスト分を除く56,000円の収益をえているのですから、ROIC 投資収益率は127%となります。これが、収益のうち、ストック型収益が60%、成功報酬型収益が40%であった場合の、ROICとなります。

一方、10名100,000円の顧客と売上のすべてが、広告で読んだ新規顧客であったとしましょう。

この場合の投資額は、仕入れに要するコストが40,000円、広告費は、新規顧客が10名ですので10,000円ということになり、投資額は50,000円です。その50,000円で、100,000円の売上からコスト分を除く50,000円の収益をえているのですから、ROIC 投資収益率は100%となります。これが、収益のうち、成功報酬型収益が100%であった場合の、ROICとなります。

同じ売上高でも、その売り上げがストック型収益に60%転換することで、ROICが27%上昇していることがわかるでしょう。

ROICを高める方法の有力な手法は、ビジネスの収益モデルが、ストック型収益であることであるということです。

企業を財務的に分析する場合、流動性に関する分析と、収益性に関する分析が基本になります。しかし、将来に生み出す生産性の分析もまた、非常に重要な視点です。

仮に成功報酬型収益で100%で成り立っている企業があったとすれば、その会社が、現在、流動性や収益性が優れていても、その企業の将来的な生産性は、非常に低いと評価せざるをえません。

リピーター客による売り上げがゼロで、すべてを新規の顧客が賄っている企業は、商品か、そのビジネスモデルに重大な欠陥があると評価せざるをえず、この企業の将来の生産性は、予測が不可能なため、投資を継続的に行っていく成長戦略を本業と並んでとれば、この企業の存続自体が非常に危ういといわざるをえないからです。

4.ストック型収益事業への転換


ストック型収益事業か、成功報酬型収益事業かは、そのビジネスモデルや商品の性格によります。仮に成功報酬の売上高に占める比率が非常に高い場合、成長戦略を採用する前に、その事業モデルや、商品戦略を練り直し、ストック型収益が高い事業に切り替える必要性があります。

この転換は、非常に戦略的な計画とオペレーションが必要です。切り替えの具体的な計画やオペレーションに関しては、一般論では書けませんので、必要な企業様は、僕に、ご一報ください。

無料で個別にご相談させていただきます。

松本尚典の中小企業経営者支援コンサルティングサービス

https://mbp-japan.com/tokyo/yoshinori-matsumoto/service1/5002501/

この記事を書いたプロ

松本尚典

年商5億円の壁を突破したい社長のための経営コンサルタント

松本尚典(URVグローバルグループ )

Share

関連するコラム

コラムのテーマ一覧

松本尚典プロへの
お問い合わせ

マイベストプロを見た
と言うとスムーズです

お電話での
お問い合わせ
03-4405-0496

 

URVグローバルグループ 日本コールセンター代表番号になります

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

松本尚典

URVグローバルグループ 

担当松本尚典(まつもとよしのり)

地図・アクセス

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ東京
  3. 東京のビジネス
  4. 東京の経営コンサルティング
  5. 松本尚典
  6. コラム一覧
  7. 成長戦略を採らねばならないならない企業 成長戦略をとってはならない企業

© My Best Pro