【風俗トラブル】風俗トラブルの相談は、名前を伏せたままでもできる?
風俗店を利用した後、しばらくしてから法律事務所の名前が入った封書が自宅に届くことがあります。「通知書」「ご連絡」などの表題で、店やキャストの代理人に就いた旨とともに、示談金や損害賠償の支払い、期限までの回答を求める内容が書かれているのが一般的です。店の従業員から電話やSMSで連絡が来る段階とは異なり、相手が弁護士を立てた後は、こちらが返す書面の一つひとつが交渉の材料として扱われることになります。この記事では、店側の弁護士から届いた通知書に回答書を出す場合に押さえておきたい記載事項を、骨子の形で整理します。
本記事は、回答書に入れる項目と考え方を整理したものです。そのまま使える文例ではなく、実際の記載内容は通知書の中身や事実関係によって変わります。送付前に弁護士へ確認されることをおすすめします。
店側の弁護士から届く通知書をまず読み取る
回答書の中身を考える前に、届いた通知書が何を求めているのかを正確に読み取ることが出発点になります。焦って結論部分の金額だけを見てしまいがちですが、誰の代理人なのか、何を根拠にしているのかによって、回答の組み立て方は変わります。
| 読み取る項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 依頼者 | 店(運営会社・経営者)の代理人か、キャスト本人の代理人か、その両方か |
| 請求の理由 | どの日のどの行為を問題にしているか、規約違反・損害賠償・違約金のいずれを根拠にしているか |
| 請求の内容 | 金額とその内訳、金銭以外の要求(誓約書の提出、面談、身分証の提示など) |
| 回答の期限と方法 | 期限の日付、書面・電話・メールのどれで回答を求めているか |
| 連絡に関する記載 | 依頼者本人やキャストへの直接連絡を控えるよう求める記載の有無 |
通知書に書かれた回答期限は、相手方が一方的に設定したもので、その日を過ぎたことだけで法的な効果が生じるものではありません。ただし、何も返さないまま期限を過ぎると、相手方からは話し合いに応じる意思がないと受け取られ、訴訟などの手段を検討される一因になることがあります。期限の扱いについては、相手方の弁護士から通知書が届いた|無視のリスクと対応もあわせてご覧ください。
差出人が実在する弁護士かを確かめる
風俗トラブルでは、弁護士でない人物が法律事務所のような名称を名乗って書面を送ってくる例もあります。日本弁護士連合会のウェブサイトにある弁護士情報の検索で、氏名・登録番号・所属事務所が通知書の記載と一致するかを確認できます。電話で問い合わせる場合も、通知書に書かれた番号だけに頼らず、事務所の所在地や代表番号を別途調べたうえで連絡するほうが安全です。確かめ方の考え方は、【不当要求対応】『弁護士に相談した』と言われた|本当に代理人が就いたのかを確かめるでも解説しています。
回答書を書き始める前に決めておくこと
回答書は、相手方の弁護士が記録として保管し、その後の交渉や、場合によっては裁判の場でも引用されることがある書面です。書きながら方針を考えると、事実を認める範囲や金額への態度が文章の勢いで決まってしまうおそれがあります。書き始める前に、少なくとも次の4点を決めておくと、記載がぶれにくくなります。
- 通知書に書かれた事実のうち、認める点・争う点・覚えていない点の仕分け。
- 請求額に応じるのか、根拠の説明を求めるのか、協議を申し入れるのかという金額への態度。
- 回答書には書かない事項(勤務先、家族構成、通知書に記載のない連絡先など)。
- 自分の名前で回答するのか、弁護士を代理人として回答するのかという差出人の選択。
4点目は、回答書の性格そのものを左右します。相手が弁護士である以上、こちらも代理人を立てるかどうかは早めに検討しておきたいところです。判断の目安は相手に弁護士がついた|自分も弁護士を立てるべきかの判断で整理しています。
回答書の必須記載事項|骨子の全体像
回答書に決まった様式はありませんが、相手方の弁護士との間で誤解を生まないためには、次の項目を備えておくのが基本になります。
| 項目 | 記載する内容 | 押さえておきたい点 |
|---|---|---|
| 表題 | 「回答書」 | 「示談書」「合意書」など、合意を思わせる表題にしない |
| 作成日 | 回答書を作成した年月日 | 送付日と大きくずれないようにする |
| 宛先 | 代理人弁護士の事務所名と氏名 | 店やキャスト本人に直接送らない |
| 差出人 | 氏名と連絡先 | 通知書が届いた住所以外の情報を新たに加えない |
| 対象の特定 | 何年何月何日付の、どの事務所からの通知書に対する回答か | 複数の書面が届いている場合は取り違えに注意する |
| 事実関係への認否 | 認める点・争う点・覚えていない点 | 推測で空白を埋めない |
| 請求への回答 | 応じる・応じない・協議を求めるのいずれか | 根拠を確認する前に金額を約束しない |
| 根拠資料の求め | 請求額の内訳、算定の根拠、規約の写しなど | 求める資料を具体的に挙げる |
| 今後の連絡方法 | 書面でのやり取りを希望する旨、連絡先 | 勤務先や家族への連絡を控えるよう求める |
| 留保 | 現時点の認識に基づく回答である旨 | 後から事実が分かった場合に備える |
宛先と対象の特定
宛先は、通知書を送ってきた代理人弁護士とします。通知書に依頼者本人への直接連絡を控えるよう書かれている場合はもちろん、書かれていない場合でも、代理人が就いた後に店やキャストへ直接連絡すると、相手方の警戒を強めたり、別の問題として指摘されたりするおそれがあります。本文の冒頭では「令和〇年〇月〇日付で貴職よりいただいた通知書について、以下のとおり回答します」のように、どの書面への回答なのかを明らかにしておきます。
事実関係への認否は三つに分けて書く
通知書には、相手方の依頼者が説明した経緯が書かれています。その内容をひとまとめに認めたり否定したりするのではなく、認める点、争う点、覚えていない点を分けて記載すると、後の話し合いで論点が整理しやすくなります。覚えていないことを「なかった」と書くと、後に記録が出てきたときに説明が難しくなることがありますし、逆に相手方の説明に合わせて推測で認めることも避けたいところです。
とくに、本番行為や盗撮、同意のない接触などを理由とする通知書では、記載された事実が刑事事件の対象となる行為に当たる可能性があります。回答書で認めた内容は、民事の交渉だけでなく、その後に刑事手続が進んだ場合にも資料として扱われることがあるため、認否の書き方はとくに慎重に検討する必要があります。
請求への回答と根拠資料の求め
請求への回答は、応じる、応じない、協議を求める、のいずれの立場なのかが読み取れるように書きます。金額の妥当性が分からない段階では、支払いの約束や具体的な金額の提示を急がず、根拠の説明を求めるのが一つの方法です。たとえば、店の規約に基づく「罰金」や違約金であれば、利用時に示された規約の写しや同意の経緯、キャストの休業を理由とする損害であれば、その算定方法と裏付けとなる資料などが考えられます。
事業者が消費者との契約で定める違約金については、その事業者に通常生じる損害の額を超える部分が無効とされる場合があることが、消費者契約法に定められています。規約に金額が書かれていることだけで、その全額を支払う義務が確定するとは限らないため、根拠の確認は重要な意味を持ちます。金額の目安については風俗トラブルの示談金相場は?本番・盗撮・お触り別に弁護士が解説も参考になります。
今後の連絡方法と留保
今後のやり取りは書面またはメールで行いたい旨、勤務先や家族への連絡は控えてほしい旨を書いておくと、交渉の場を整える意味があります。あわせて、回答の内容は現時点で把握している事実に基づくものであり、資料の開示を受けた後に補足や訂正をすることがある旨を添えておくと、後から事実関係が明らかになった場合にも対応しやすくなります。
回答書に書かないほうがよいこと
記載事項と同じくらい大切なのが、書かない事項の判断です。ご自身で回答書を作成する場合、次のような記載は後の交渉で不利に働くことがあります。
- 謝罪の言葉と、通知書に書かれた事実の全面的な承認が一体になった表現。
- 根拠を確認する前の支払いの約束や、具体的な金額の提示。
- 店やキャストへの非難、相手方を脅していると受け取られかねない言葉。
- 勤務先、家族構成、通知書に記載のない電話番号やメールアドレスなどの個人情報。
- 「警察に届けないのであれば支払う」のように、刑事手続と金銭の支払いを引き換えにする書き方。
謝罪の気持ちを伝えること自体が問題になるわけではありません。ただ、不快な思いをさせたことへのお詫びと、通知書に書かれた事実をすべて認めることは別の事柄です。この二つが一文の中で混ざらないように書き分けることが大切です。氏名や連絡先をどこまで明かすかについては、本名を明かさずに示談できるか|代理人限りでの合意の可否で考え方を解説しています。
回答期限に間に合わないときの対応
事実関係の確認や弁護士への相談に時間がかかり、期限までに回答の中身がまとまらないこともあります。その場合は、期限前に「通知書を受け取り、現在内容を確認している。〇月〇日までに回答する」という趣旨の短い連絡だけでも入れておくと、放置していると受け取られることを避けやすくなります。この連絡でも、事実関係や金額には触れないようにしておくのが無難です。
通知書に「法的措置をとる」と書かれていても、直ちに裁判が始まるとは限りません。実際に訴訟が起こされた場合は、裁判所から訴状が届き、回答書ではなく答弁書を提出する手続に移ります。書面に書かれた言葉の読み方は、【風俗トラブル】店から届いた請求書面に「法的措置」と書いてある|本当に訴えられるのかで取り上げています。
代理人同士のやり取りに切り替えるという選択
店側に弁護士が就いたことは、請求が法的な主張として整理された形で届くようになったことを意味します。言い換えれば、こちらの回答も法的な観点から読まれることになり、自分で書いた一文が、その後の交渉の前提として扱われることがあります。
こちらも弁護士に依頼した場合、回答書は代理人の名前で送ることになり、ご本人の氏名や連絡先を前面に出さずに交渉を進めることも検討できます。弁護士は、相手方に代理人が就いたときは、正当な理由なくその代理人の承諾を得ずに相手方本人と直接交渉してはならないとされています(弁護士職務基本規程52条)。そのため、受任後は相手方の弁護士からの連絡も代理人宛てになるのが通常です。店側の弁護士が出てきた場面で最初に確認したい点は風俗トラブルで店の「顧問弁護士」が出てきた|客側がまず確認すべきこと、代理人が就いたことの意味は弁護士名の請求書が届いた|代理人が就いた場合の意味でも解説しています。
まとめ
- 回答書を考える前に、通知書の依頼者、請求の理由と内容、期限、連絡に関する記載を読み取ります。
- 差出人が実在する弁護士かどうかは、日本弁護士連合会の検索などで確かめられます。
- 回答書には、宛先、対象の特定、事実関係への認否、請求への回答、根拠資料の求め、今後の連絡方法、留保を入れるのが基本です。
- 事実関係は、認める点・争う点・覚えていない点に分けて書き、推測で埋めないようにします。
- 根拠を確認する前の支払いの約束や、刑事手続と金銭を引き換えにする書き方は避けます。
- 期限に間に合わない場合は、内容に触れずに回答の予定日だけを伝える方法があります。
店側の弁護士から通知書が届いた段階は、まだ交渉の入口にあたります。最初に返す回答書の書き方によって、その後の話し合いの進み方が変わることもあるため、送付する前に内容を確かめておくことが大切です。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


