店側の顧問弁護士は何をしているのか|客が知っておくべき店側の動き方
本記事は、2026年11月時点の法令(2025年6月施行の拘禁刑への一本化、2023年の性犯罪規定の改正を含む)に基づいて作成しています。個別の事情によって結論が変わることがありますので、具体的な対応はご相談のうえでご判断ください。
風俗店の利用をめぐって金銭を求められ、「払わないなら奥さんに知らせる」「会社に電話する」といった言葉を添えられると、多くの方は落ち着いて考える余裕を失います。家族や職場に知られたくないという気持ちが強いほど、言われた金額をそのまま払ってしまいそうになるものです。
ただ、家族や職場への連絡をほのめかされたことと、請求に応じる義務があるかどうかは、分けて考える必要があります。この記事では、弁護士に相談する前にご自身で確かめておきたい12の項目をチェックリストの形でまとめました。すべてを埋めてから相談する必要はなく、分かる範囲で整理しておくだけでも、相談の時間を有効に使いやすくなります。
連絡をほのめかす請求をどう受け止めるか
風俗トラブルの請求は、本番行為や盗撮、店のルール違反などを理由に、店やキャスト、店の関係者を名乗る人物から寄せられることが多くあります。その際、支払いを促す材料として、家族や勤務先への連絡が持ち出されることがあります。
金銭の支払いを求めながら「家族に知らせる」「職場に連絡する」と告げる行為は、その内容や態様によっては恐喝罪(刑法249条、10年以下の拘禁刑)にあたる可能性があります。金銭を求めていない場合でも、名誉などに害を加える旨を告げたとして脅迫罪(刑法222条)が問題になることがあります。ご自身に何らかの落ち度があったとしても、周囲への暴露をほのめかして金銭を求めてよいことにはならず、請求に根拠があるかどうかと、請求の仕方に問題がないかどうかは、別々に検討されます。
一方で、キャスト本人に実際の損害が生じている場合など、話し合いによって一定の解決を図ったほうがよい事案もあります。払うか払わないかを急いで決めるのではなく、まず事実を整理することが出発点になります。
チェックリスト12項目の一覧
12の項目は、「相手と請求の中身」「ほのめかされた内容」「ご自身の状況」の3つに分かれます。まず一覧で全体を確認し、続く解説でそれぞれの確かめ方をご覧ください。
| 区分 | 確認項目 | 整理しておく内容 |
|---|---|---|
| 相手と請求の中身 | 確認1 請求している相手 | 店、キャスト本人、関係者を名乗る人物のいずれか |
| 相手と請求の中身 | 確認2 請求の名目と金額 | 罰金、慰謝料、迷惑料などの名目と内訳 |
| 相手と請求の中身 | 確認3 支払いの期限と方法 | 期限の有無、振込先の名義、現金手渡しの指定 |
| 相手と請求の中身 | 確認4 何をしたと言われているか | 相手の言い分とご自身の認識の違い |
| ほのめかされた内容 | 確認5 誰に知らせると言われたか | 配偶者、親、勤務先、取引先など |
| ほのめかされた内容 | 確認6 相手が持っている自分の情報 | 本名、電話番号、住所、勤務先、身分証の画像 |
| ほのめかされた内容 | 確認7 言われた言葉と日時 | 文言、日時、手段(電話・LINE・対面) |
| ほのめかされた内容 | 確認8 すでに連絡が届いているか | 家族や職場への連絡、郵便物の有無 |
| ご自身の状況 | 確認9 支払ったお金と署名した書面 | 既払い額、示談書・念書・借用書の有無 |
| ご自身の状況 | 確認10 手元に残っている記録 | LINE、通話履歴、録音、振込記録 |
| ご自身の状況 | 確認11 警察が関わっているか | 被害届の話、警察からの連絡の有無 |
| ご自身の状況 | 確認12 ご自身が望む解決の形 | 支払いについての考え方、家族への説明の方針 |
相手と請求の中身を確かめる4項目
確認1 請求している相手は誰か
連絡してきたのが店の担当者なのか、キャスト本人なのか、交際相手や知人を名乗る人物なのかによって、交渉の進め方は変わります。行為によって損害を受けたと主張できるのは、原則としてキャスト本人です。店が独自に「罰金」を求めている場合、その根拠は慎重に確かめる必要があります。店名、担当者の名前、連絡に使われた電話番号やアカウントを控えておいてください。
確認2 請求の名目と金額
「罰金」「慰謝料」「迷惑料」「休業補償」など、どの名目で、いくらを求められているかを書き出します。名目ごとの内訳が示されていない場合や、連絡のたびに金額が変わる場合は、その経過も記録しておくと、請求の妥当性を検討する手がかりになります。
確認3 支払いの期限と方法
「今日中に」「明日までに」といった期限は、判断を急がせる目的で設けられることがあります。振込先が個人名義の口座である、現金を手渡しで持ってくるよう指定されている、電子マネーでの支払いを求められているといった事情も、相談の際に伝えていただきたい点です。
確認4 何をしたと言われているか
相手が主張している行為の内容と、ご自身の認識とを分けて書き出します。認識が一致している部分、食い違っている部分、覚えていない部分を区別しておくと、弁護士が見通しを立てやすくなります。ご自身に不利に思える事実も、正確に伝えていただくことが適切な方針につながります。
ほのめかされた内容を確かめる4項目
確認5 誰に知らせると言われたか
配偶者なのか、親なのか、勤務先の上司なのかによって、優先して備えるべき点が変わります。勤務先への連絡を告げられている場合は、風俗トラブルが原因の失職・懲戒|会社にバレる典型ルートと防止策も参考にしてください。実家や配偶者への郵便をほのめかされている場合は、【風俗トラブル】実家の住所を知られていた|親に知らせると言われたときの備えや【風俗トラブル】配偶者宛てに郵便を送ると言われた|家族に届く前にできることで考え方を整理しています。
確認6 相手が持っている自分の情報
予約時に伝えた本名や電話番号、免許証などの身分証を撮影された画像、名刺、勤務先の名前など、相手の手元にある情報を思い出せる範囲で書き出します。どの情報が渡っているかによって、相手が実際に連絡できる範囲の見当がつきます。詳しくは風俗店・キャストに個人情報を握られた|悪用・晒しを防ぐにはや【風俗トラブル】予約時に伝えた本名・電話番号はどう使われるのかをご覧ください。
確認7 言われた言葉と日時
「家族にバラす」「会社に電話する」といった言葉は、要約せず、できるだけそのままの文言で残します。いつ、どの手段で、誰から言われたのかもあわせて記録してください。LINEやメールであれば画面を保存し、電話や対面であれば、記憶が新しいうちにメモを作っておくことが大切です。
確認8 すでに家族や職場に連絡が届いているか
まだ連絡が届いていない段階か、すでに家族が電話に出てしまった、職場に問い合わせがあったという段階かによって、取るべき対応の順序が変わります。届いている場合は、誰に、どのような内容が伝わったのかを分かる範囲で確認しておいてください。
ご自身の状況を確かめる4項目
確認9 支払ったお金と署名した書面
すでに一部を支払っている場合は、その金額と日付、支払い方法を確認します。店の事務所などで示談書、念書、借用書に署名している場合は、控えや写真が手元にあるかどうかも重要です。威圧的な状況で署名させられた書面については、強迫による取消し(民法96条1項)が問題になることもあるため、署名済みであっても諦めずにご相談ください。
確認10 手元に残っている記録
LINEやSMSのやり取り、着信履歴、通話の録音、振込の控えなどは、削除せずに残しておきます。相手から削除を求められても、ご自身の記録まで消す必要はありません。記録の残し方は録音はどこまで証拠になるか|風俗トラブルでの残し方や【風俗トラブル】自分側の記録をどう作るか|相談の前に整理しておく材料で解説しています。
確認11 警察が関わっているか
「被害届を出した」「警察に相談した」と告げられているか、実際に警察から連絡が来ているかを確認します。告げられた内容が事実かどうかは、すぐには分からないことが多いため、言われた内容と時期を記録しておくにとどめ、ご自身で警察署に問い合わせる前に一度ご相談いただくのが無難です。関連して、【風俗トラブル】キャストが警察に相談したと聞かされた|本当かどうか確かめる方法はあるかもご参照ください。
確認12 ご自身が望む解決の形
根拠のない請求には応じずに終えたいのか、事実関係に争いがなく一定の範囲で賠償して区切りをつけたいのか、ご自身の希望を整理しておきます。家族に事情を話すかどうか、話すとすればどの範囲までかについても、今の時点での考えをまとめておくと、方針を相談しやすくなります。
チェックの途中で控えたい対応
確認を進めている間も、相手からの連絡は続くことがあります。次のような対応は、後の交渉で選べる手立てを狭めるおそれがあるため、控えておくのが無難です。
- その場の求めに応じて支払うこと。
- 内容を確かめないまま示談書や借用書に署名すること。
- 求められるままに身分証や勤務先などの情報を追加で渡すこと。
- 感情的な返信や、相手を責める内容のメッセージを送ること。
- ご自身のLINEや通話履歴などの記録を削除すること。
相手への返信をどうするか迷う場合は、すぐに返さず、内容を保存したうえで相談の際にお見せください。
弁護士に相談すると何が変わるか
弁護士に依頼すると、弁護士が代理人として相手に受任を通知し、以後の連絡窓口を弁護士に一本化するよう求めます。あわせて、ご本人やご家族、勤務先への直接の連絡を控えるよう申し入れるのが一般的です。代理人がついた後も家族や職場への連絡をほのめかし続ける相手は多くありませんが、連絡が続く場合には、警察への相談を含めて対応を検討します。
請求の中身については、名目ごとに根拠があるかを確かめ、支払う必要のないものと、検討の余地があるものとを切り分けます。話し合いがまとまる場合には、示談書に個人情報の破棄や第三者への口外禁止、接触禁止などの条項を盛り込むことで、家族や職場に知られる不安を後に残しにくくします。条項の考え方は風俗トラブルの示談書に必ず入れる6条項|抜けると後で効かないで紹介しています。
もっとも、相手の出方や事案の内容によって経過はさまざまで、どの事案でも同じ結果になるわけではありません。ご自身で交渉を続けるか、弁護士に任せるかの判断に迷う場合は、【風俗トラブル】店との交渉を自分でするか弁護士に任せるか|分かれ目になる5つの事情も判断の材料になります。
関連する解説記事
家族や職場への連絡をほのめかされると、その言葉ばかりに意識が向きがちですが、相手が誰で、何を根拠に、どのような情報を持っているのかを一つずつ確かめていくと、取るべき対応が見えてくることがあります。12の項目のうち分かるところだけでもメモにして、早めにご相談ください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


