【風俗トラブル】連絡の差し控えを求める通知書の必須記載事項|家族や職場への連絡をほのめかす請求の場面で押さえる骨子

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

本記事は、2026年11月時点の刑法などの規定をもとに、風俗店を利用した側の立場から、連絡の差し控えを求める通知書に入れる事項の骨子を整理したものです。実際の文面は、請求の内容やそれまでのやり取りによって変わります。


風俗店の利用をめぐって金銭を求められ、「払わなければ家族に話す」「会社に電話する」と告げられた。こうしたご相談では、請求の金額そのものよりも、家族や勤務先に連絡が入ることへの不安のほうが大きいと話される方が少なくありません。

 家族や職場への連絡を控えるよう相手に求める方法の一つが、通知書の送付です。ただ、通知書は相手の手元に残る書面であり、書き方によっては相手に新しい情報を渡したり、「この点を突けば効く」と伝えてしまったりすることもあります。この記事では、連絡の差し控えを求める通知書に入れておきたい事項と、避けたい記載、送った後の流れを順に整理します。

 告げられた言葉が恐喝にあたるかどうかの考え方は、「金を払わなければ通報する」と脅されたら|風俗トラブルにおける恐喝罪への対処法で解説しています。本記事は、相手に連絡を控えるよう書面で求める場面を扱います。

通知書で求められることと、その限界

 「家族に知らせる」「勤務先に連絡する」という言葉は、相手の名誉や社会的な立場に害を加えることを告げるものとして、脅迫罪(刑法222条)との関係が問題になることがあります。金銭の支払いを求める流れの中で告げられた場合には、恐喝罪(刑法249条)や、その未遂(同法250条)が問題になる場面もあります。店の側に何らかの請求の根拠があったとしても、その実現の方法が社会通念上許される範囲を超えれば恐喝として扱われ得る、というのが判例の考え方です(最高裁昭和30年10月14日判決)。

 もっとも、通知書を送ったからといって、相手の行動を法的に止められるわけではありません。通知書は、連絡を控えるよう求めたこと、今後の連絡先を指定したこと、それまでに受けた告知を記録していることを、相手に書面で伝えて後に残すための手段です。それでも連絡が続く場合に、警察への相談や裁判所への申立てといった次の手立てに進むための土台になる、と考えておくと見通しを立てやすくなります。

通知書を作る前に整理しておく事実

 相手から何を、いつ、どの手段で告げられたのかが曖昧なままだと、通知書の記載も抽象的になり、相手に「そんなことは言っていない」と返されやすくなります。作成に入る前に、次の点を手元のメモに整理しておくと、記載を具体的にできます。

  • 利用した日時、店舗名、利用形態(店舗型・派遣型など)。
  • 連絡してきた人物の名乗り(店長、スタッフ、キャスト本人、知人を名乗る第三者など)と、その連絡先。
  • 家族や職場への連絡をほのめかされた日時、手段(電話、SMS、LINE、対面など)と、告げられた言葉。
  • 相手が把握している自分の情報(氏名、電話番号、住所、勤務先、家族の連絡先など)と、知られた経緯。
  • 請求の名目と金額、支払期限として告げられた日。
  • すでに支払った金額と、署名した念書・示談書の有無。
  • 録音やスクリーンショットなど、手元に残っている記録。


 通知書では相手がまだ知らない情報を新たに書かないことが基本になるため、特に「すでに知られている範囲」は先に確かめておきます。

通知書の必須記載事項

 連絡の差し控えを求める通知書に、決まった書式はありません。ただ、相手が求められている内容を取り違えないようにするため、少なくとも次の事項は入れておきたいところです。

記載事項書く内容注意点
宛先店の運営会社または経営者、連絡してきた人物個人名しか分からない場合は分かる範囲で特定する
差出人と窓口通知する本人、または代理人の氏名と連絡先本人名で出す場合に何を開示するかを先に決める
対象となる告知告知の日時、手段、告げた人物、内容の要旨記録に沿って書き、言葉を強めない
求める事項本人・家族・勤務先などへの直接の連絡を控えること連絡の相手先は包括的に書く
第三者への開示利用の事実や個人情報を第三者に伝えないこと連絡の差し控えとは別の項目として書く
今後の連絡方法連絡は指定の窓口に、書面またはメールで行うこと電話や訪問には応じない旨も明記する
請求の扱い内容を確認のうえ、窓口から回答すること認める・認めないの結論は書かない
記録の保全告知の内容を記録・保存していること脅しと受け取られない書き方にとどめる


対象となる告知を特定する

 「家族や職場に連絡しないでください」とだけ書くと、相手から「そんなことは言っていない」「連絡するつもりはなかった」と返される余地が残ります。「○年○月○日午後○時頃、貴店従業員○○と名乗る人物から、通知人の携帯電話に対し、支払いに応じなければ通知人の勤務先に連絡する旨の告知がありました」のように、日時・手段・人物・内容の要旨を特定して書いておくと、通知書を送った事実と、それ以前の告知の内容を結びつけて残せます。

 告げられた言葉は、録音やメッセージの記録に沿って書きます。強い言葉に置き換えると、記録と食い違ったときに通知書全体の信用が揺らぐことがあります。

連絡を控える相手先は包括的に書く

 「配偶者には連絡しないでほしい」「○○部の上司にだけは」と相手先を細かく名指しすると、相手に「その人に知られるのが一番困るのだ」と伝わることがあります。名指しした相手以外なら連絡してよいと読まれる余地も残ります。

 連絡を控えるよう求める相手先は、「通知人本人、通知人の親族、勤務先その他の第三者」のように包括的に書くのが一般的です。手段についても、電話・郵便・訪問・SNSへの投稿などを含めて「方法のいかんを問わず」と幅をもたせておくと、範囲をめぐる行き違いを減らせます。

今後の連絡の窓口を指定する

 連絡を控えてほしいと求めるだけでは、相手が請求を続けたいときにどこへ連絡すればよいのかが定まらず、結果として本人の携帯電話や自宅への連絡が続くことがあります。今後の連絡は指定する窓口に書面またはメールで行うよう求め、電話や訪問による連絡には応じない旨をあわせて記載しておきます。

請求には「窓口から回答する」とだけ書く

 通知書の中で請求を全面的に否定すると、相手が態度を硬くし、ほのめかしていた連絡に踏み切るきっかけになることもあります。反対に、支払う意思があるかのような書き方をすると、請求を認めたと受け取られかねません。請求については「内容を確認のうえ、指定の窓口から回答する」とだけ記載し、結論は書かない形が無難です。

通知書に書かないほうがよいこと

 通知書は相手の手元に残り、その後の交渉や手続でも読み返される書面です。次のような記載は、意図しない形で使われるおそれがあるため、避けるか、書き方を慎重に検討します。

  • トラブルの原因となった行為についての認めや謝罪の言葉。
  • 「家族にだけは知られたくない」など、弱みを強調する表現。
  • 相手がまだ把握していない勤務先の名称や部署、家族の氏名や連絡先などの情報。
  • 「連絡しないでくれれば支払う」といった、支払いと引き換えにする約束。
  • 「必ず刑事告訴する」「すぐに逮捕される」など、相手を脅すと受け取られかねない表現。
  • 事実関係が確かでない、相手の違法行為についての断定。


 とりわけ、支払いと連絡の差し控えを引き換えにする書き方は、相手に「連絡をほのめかせば支払いを引き出せる」と受け取られ、請求額が上乗せされるきっかけになることがあります。連絡の差し控えは、請求とは切り離して求めるものと位置づけておくことが大切です。

本人名で出すか、弁護士名で出すか

 通知書は本人の名前で出すこともできます。ただ、内容証明郵便で送る場合は差出人の住所・氏名の記載が必要になるため、店がまだ知らない住所を新たに知らせる結果になることがあります。窓口も本人になるため、かえって本人宛ての連絡が増えることもあります。

比較する点本人名で出す弁護士名で出す
相手に伝わる情報差出人の氏名・住所が伝わる連絡先は法律事務所になる
その後の連絡本人宛てに連絡が来ることがある窓口が弁護士に一本化されやすい
記載内容の調整自分で判断する必要がある記録を踏まえて記載を調整できる
請求との関係連絡の差し控えだけを求める書面になりやすい請求への対応と一体で交渉できる


 弁護士が代理人に就いた場合は、受任したことを知らせる書面(受任通知)の中で、今後の連絡を弁護士宛てに限ること、本人や家族、勤務先への連絡を控えることをあわせて求めるのが一般的です。受任通知そのものに相手の連絡を禁じる強制力があるわけではありませんが、窓口が代理人に移ることで、本人に直接働きかける進め方は取りにくくなります。受任通知の働きについては、受任通知とは何か|送られると相手方との関係はどう変わるかで詳しく解説しています。

送り方を選ぶ

 店の所在地や運営会社が分かっている場合は、内容証明郵便に配達証明を付けて送ると、いつ、どの内容の書面が届いたかを後から示しやすくなります。所在地が分からず、連絡手段がLINEやSMSに限られている場合は、同じ内容をメッセージで送り、送信した画面を保存しておく方法もあります。返信の書面が自宅に届くことが心配な場合の考え方は、家族に知られずに解決できるか|連絡方法・書面の送付先の設計で整理しています。

通知書を送った後の流れ

 通知書を送った後は、おおむね次のような流れで進みます。

  1. 相手からの連絡が止まったか、指定の窓口に切り替わったかを確認します。
  2. 連絡が止まった場合も、請求が取り下げられたとは限らないため、請求の扱いを窓口から確認します。
  3. 本人や家族、勤務先への連絡が続く場合は、その日時と内容を記録し、警察への相談を検討します。
  4. 交渉で合意に至る場合は、家族・勤務先への接触禁止や第三者への不開示、違反した場合の取り決めを合意書に盛り込みます。
  5. それでも連絡が止まらない場合は、面会や連絡を禁じる仮処分など、裁判所を通じた手続を検討します。


 合意書に入れる条項の考え方は、風俗トラブルの示談書に必ず入れる6条項|抜けると後で効かないで解説しています。

 実際に家族や勤務先へ連絡が入った場合は、告知の段階から一歩進んだものとして、警察への相談や損害賠償の請求を検討する場面になります。勤務先への電話が繰り返され、業務に支障が出ているときは、業務妨害(刑法233条・234条)との関係が問題になることもあります。家族宛ての郵便が届きそうな場面の備えは【風俗トラブル】配偶者宛てに郵便を送ると言われた|家族に届く前にできること、勤務先に伝わる経路については風俗トラブルが原因の失職・懲戒|会社にバレる典型ルートと防止策で整理しています。

よくあるご質問


通知書を送ると、かえって相手を刺激しませんか

 その可能性がまったくないとは言えません。ただ、何も返さないまま連絡のほのめかしが続く状態のほうが、追い詰められて不利な約束をしてしまうおそれがあります。通知書を相手を責める書面にせず、連絡の窓口と方法を事務的に指定する書面にとどめることで、刺激を抑えることができます。

相手が店ではなく、キャストの知人を名乗る人物の場合も送れますか

 送ることはできますが、相手の氏名や連絡先が分からない場合は、届け先や宛名の特定から検討が必要です。店と知人のどちらが請求の主体なのかを先に確かめておくと、通知書の宛先を誤りにくくなります。このような場面については、【風俗トラブル】キャストの交際相手・知人を名乗る男性から連絡が来たもあわせてご覧ください。

弁護士にご相談いただく場合

 当事務所では、家族や職場への連絡をほのめかされている風俗トラブルのご相談について、告知の内容や請求の状況、相手に知られている情報の範囲をお伺いしたうえで、通知書の要否と記載内容、請求への対応とあわせた進め方を検討します。代理人として店との窓口を引き受け、ご本人やご家族、勤務先への連絡を控えるよう求めることもできます。自分で対応を続けるか迷っている段階であれば、【風俗トラブル】店との交渉を自分でするか弁護士に任せるか|分かれ目になる5つの事情も判断の参考になります。

 家族や職場への連絡をほのめかされると、判断を急ぎたくなるものです。通知書に何を書き、何を書かないかを最初に整理しておくことが、落ち着いて対応を進める土台になります。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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