【不貞慰謝料】遅延損害金はいつから、何%つくのか
この記事は、2026年10月時点の民法・母体保護法・刑法・家事事件手続法にもとづいて書いています。2026年4月1日に施行された改正民法(父母の責務の明確化、認知した場合への子の監護に関する規定の準用の拡大など)を反映しています。個別の事情によって結論が変わることがありますので、具体的なご判断は専門家にご相談ください。
「妊娠を伝えてから相手がはっきりした返事をしない。相手の親に知らせれば動いてくれるのではないか」。妊娠している側からは、このようなご相談をいただきます。反対に、「交際相手から、妊娠したので親に話すと言われた。どう受け止めればよいのか」という、伝えられる側からのご相談もあります。
世間では、妊娠の報告は「二人で話し合ってから、それぞれの親に伝える」という順序で説明されることが多く、それ自体は誤りではありません。ただ、相手と話し合いができていない段階で相手の家族に伝える場合には、何を期待して伝えるのか、相手の家族が法律上どのような立場にあるのか、伝え方によって何が起こりうるのか、という点が見えにくくなります。
この記事では、妊娠を相手の親や家族に伝えるかどうかを考えるときの判断の材料を整理します。認知や養育費の手続そのもの、中絶費用の分担、不貞関係で妊娠した場合の問題は、それぞれ別の記事で扱っていますので、本文中の該当箇所でご案内します。
「伝えるかどうか」は、何のために伝えるのかで変わります
伝えたい理由は、大きく四つに分かれます
相手の家族に伝えたいと考える理由は、ご相談を伺っていると、おおむね次の四つに分かれます。どれにあてはまるかによって、相手の家族に伝えることが役に立つのか、ほかの方法のほうが目的に近いのかが変わってきます。
| 伝えたい理由 | 伝えることで期待できること | 法的な手続との関係 |
|---|---|---|
| 相手と連絡が取れない | 家族を通じて相手に状況が伝わる可能性がある | 家族は相手の代わりに何かを決める立場にはない |
| 相手に責任ある対応をしてほしい | 家族の働きかけで相手が向き合うきっかけになることがある | 認知・養育費の当事者は相手本人である |
| 出産後の生活を家族ぐるみで相談したい | 生活面の支援や話し合いの場が生まれることがある | 支援は家族の任意であり、求める権利があるわけではない |
| 一人で抱えきれない | 気持ちの面での受け止め手が増えることがある | 自分の側の家族や支援機関に話す方法もある |
目的によっては、相手の家族を通さなくても届く道があります
表のとおり、相手の家族に伝えることで期待できるのは、主に「相手が向き合うきっかけ」や「生活面の支え」です。認知や養育費のように法律上の答えが必要な事柄は、相手の家族を通さなくても、相手本人に対して手続を進める道があります。相手の家族に伝えるかどうかは、法的な手段の代わりとしてではなく、家族との今後の関係をどうしたいかという視点から考えると整理しやすくなります。
相手の親は、決める立場にはありません
出産するかどうかを決めるのは、妊娠している本人です
人工妊娠中絶について、母体保護法は本人と配偶者の同意を求めています(母体保護法14条1項)。ここでいう配偶者には事実婚の相手も含まれますが(同法3条1項)、法律上の配偶者でも事実婚の相手でもない交際相手は、法律が同意を求める立場にはありません。まして、交際相手の親が同意したり反対したりする立場にあるわけではありません。
相手の家族に妊娠を伝えると、家族の側から出産や中絶について意見が出されることがあります。意見を聞くことと、その意見に従う義務があることとは別の問題です。出産するかどうかの判断は、最終的には妊娠している本人に委ねられています。医療機関で説明を受けたうえで、ご自身の体と生活の見通しを中心に考えることが大切です。
認知をするかどうかは、相手本人が決めることです
結婚していない男女の間に生まれる子と父親との間に法律上の親子関係が生じるには、認知が必要です(民法779条)。認知は父親となる本人がするもので、本人が未成年者であっても、法定代理人の同意は必要とされていません(同法780条)。つまり、相手の親が認知に反対していても、相手本人が認知をすることはできますし、親が認知を勧めても、本人が応じなければ届出にはなりません。
なお、子が生まれる前に認知をする胎児認知には、母親の承諾が必要です(同法783条1項)。相手の家族から「生まれる前に認知させる」「認知はさせない」といった話が出ることがありますが、いずれも相手本人の意思と、胎児認知の場合は母親の承諾によって決まる事柄です。認知や養育費の基本的な仕組みは、交際・パパ活相手の妊娠|認知・養育費・中絶同意書の基礎知識で整理しています。
養育費を負うのは父母であり、相手の親ではありません
2026年4月1日に施行された改正民法では、父母は婚姻関係の有無にかかわらず、子が自分と同程度の生活を維持できるよう扶養しなければならないことが明記されました(民法817条の12第1項)。養育費の負担は父母の間の問題として扱われ、認知した場合にも子の監護に関する規定が準用されます(同法788条)。
認知によって、相手の親と子とは祖父母と孫という直系血族の関係になり、互いに扶養をする義務の規定の対象にはなります(同法877条1項)。ただ、これは父母の養育費とは別の位置づけのもので、相手の親に養育費の支払いを直接求める根拠として使える場面は限られます。相手の親が「代わりに払う」と申し出た場合にどのような法的な形になるのかは、【不貞慰謝料・請求する側】相手の親や家族に伝えることのリスクで詳しく扱っています。
伝えることで起こりうること
話が前に進む場面
相手が一人で問題を抱え込み、返事ができずにいた場合には、家族に知られたことをきっかけに、相手が話し合いに応じるようになることがあります。また、相手の家族が出産後の生活について支援を申し出たり、話し合いの場を設けたりすることもあります。こうした展開になるのは、相手本人も家族も、妊娠の事実を受け止める準備がある程度できている場合が多いといえます。
かえって話がこじれる場面
一方で、次のような展開になることもあります。
- 相手の家族が中絶や別れを強く勧め、話し合いが難しくなる。
- 相手の家族が「本当に息子の子なのか」と父子関係を疑い、対立が深まる。
- 相手本人が家族に知られたことに反発し、連絡を絶ってしまう。
- 相手の家族が窓口になり、相手本人の意思が見えなくなる。
- 話が相手の親戚や知人に広がり、伝わる範囲を管理できなくなる。
とくに、相手の家族が話し合いの窓口に出てきた場合には注意が必要です。家族は相手の代理人ではないため、家族との間で話がまとまっても、相手本人がそれに同意しなければ、本人を拘束しないことがあります。家族が交渉に出てきたときの確認の仕方は、【男女トラブル】相手の家族が代わりに交渉に出てきた|代理権の有無の確かめ方をご覧ください。
子が生まれた後の関わりにもつながります
改正民法では、家庭裁判所が、子の利益のため特に必要があると認めるときに、父母以外の親族と子との交流について定めることができるようになりました(民法766条の2第1項)。この規定は認知した場合にも準用されます(同法788条)。祖父母などの親族が自ら申し立てることができるのは、ほかに適当な方法がない場合に限られていますが(同法766条の2第2項)、相手の家族に妊娠を伝えることは、子が生まれた後の家族との関わり方を考える入口にもなります。伝えるかどうかを、目の前の話し合いだけでなく、子の将来の環境という視点からも考えておくとよいでしょう。
伝える前に確認しておきたいこと
順序を確かめる
相手の家族に伝える前に、次の点を確かめておくと、後で行き違いが起きにくくなります。
- 妊娠の事実を、医療機関の受診で確かめているか。
- 相手本人に、妊娠の事実と自分の考えを伝えているか。
- 相手本人に、家族に伝えることについての意向を確認したか。
- 自分の側の家族や、信頼できる支援者に状況を話しているか。
- 伝える目的が、この記事の最初の表のどれにあたるかを整理したか。
相手本人に先に伝えず、いきなり相手の家族に知らせると、相手は「頭越しに話を進められた」と受け止めやすくなります。相手と連絡が取れない場合を除けば、まず相手本人に伝え、そのうえで家族に話すかどうかを二人で話し合う、あるいは自分の考えを相手に伝えておく、という順序をとるのが穏当です。
やり取りの記録を残しておく
妊娠を伝えた日時や、相手の返事の内容、相手の家族とのやり取りは、後で認知や養育費について話し合うときの経緯の資料になります。メッセージの画面を保存したり、話し合いの日時と内容をメモしたりしておくと、言った言わないの行き違いを防ぎやすくなります。録音の考え方は、【男女トラブル】別れ話を録音しておくべきか|交際を終える話し合いでの記録の作り方で扱っています。
伝え方によって、自分の側に責任が生じることがあります
金銭の要求と結びつけない
相手の家族に妊娠を伝えること自体が、直ちに違法とされるわけではありません。ただし、「支払わなければ家族に知らせる」「家族に知られたくなければ応じてほしい」といった形で、金銭の支払いと家族への告知を結びつけると、正当な費用の請求であっても、恐喝罪(刑法249条)や脅迫罪(同法222条)の問題を指摘される余地が生じます。費用の分担を求めることと、家族に伝えるかどうかの判断とは、切り離して考えることが大切です。中絶費用の分担の考え方は、【男女トラブル】中絶費用は折半なのか|「おかしい」と感じたときの整理の仕方で整理しています。
訪問の仕方と、伝える範囲に気をつける
相手の実家を訪ねて、帰るよう求められたのにとどまり続けると、不退去罪(刑法130条後段)が問題になることがあります。また、相手の勤務先や知人など、家族以外にまで妊娠や交際の事情を伝えると、相手のプライバシーを侵害したとして損害賠償を求められるおそれがあります(民法709条、710条)。伝える相手は必要な範囲にとどめ、日を改めて話す余地を残しておくほうが、結果として話し合いが進みやすくなります。
書面で伝える場合に書くこと・書かないこと
対面で話すのが難しい場合には、書面で伝える方法もあります。書面には、妊娠の事実と時期、相手本人に伝えた経緯、今後について相手本人と話し合いたいという希望を記載し、相手の人格を非難する表現や、期限を区切った金銭の要求は避けるのが無難です。書面は後で読み返されるものですので、感情が落ち着いてから作成し、送る前に第三者に目を通してもらうと安心です。
相手が18歳未満の場合は、親の関わり方が変わります
約束を交わす場面では、親権者が関わります
相手が18歳未満の場合、相手の親は親権者として法定代理人の立場にあります(民法824条)。未成年者が法定代理人の同意を得ずに交わした約束は、取り消される可能性があります(同法5条1項、2項)。費用の分担などを書面で取り決める場面では、相手の親が関わらないと、合意が安定しないことがあります。
それでも、認知は本人が決めます
一方で、先に述べたとおり、認知については未成年者であっても法定代理人の同意は必要とされていません(同法780条)。相手が未成年の場合は、家族に伝えるかどうかというより、どの事柄に親の関与が必要で、どの事柄は本人が決めるのかを分けて考えることになります。妊娠している本人が18歳未満の場合も、ご自身の親や学校、自治体の相談窓口など、信頼できる大人に早めに相談することが大切です。
相手と連絡が取れないとき、家族を通す以外の道
弁護士を通じて相手本人に書面を届ける
相手が連絡に応じない場合でも、弁護士が代理人として相手本人に書面を送ることで、話し合いの窓口が開かれることがあります。家族を介さずに相手本人に直接届くため、話が周囲に広がりにくいという面もあります。
家庭裁判所の手続を使う
認知について話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てるのが原則です(家事事件手続法244条、257条1項)。調停で合意ができ、一定の要件を満たすときは、家庭裁判所が合意に相当する審判をする仕組みもあります(同法277条)。裁判所の手続で認知を求めるのは、通常は子が生まれた後になりますので、妊娠中の段階では、出生後の手続を見据えて記録や相手の連絡先の情報を整えておくことになります。相手と連絡が取れなくなった場合の進め方は、妊娠を告げたら逃げられた・音信不通|相手を特定して認知・養育費にたどり着くまでをご覧ください。
相手が既婚者だったことが分かった場合には、相手の配偶者との関係など別の問題が加わります。その場合の整理は、【不貞慰謝料】不貞相手が妊娠した場合に生じる問題で扱っています。
伝えられる側から見た整理
「親に話す」と言われたとき
交際相手から妊娠を告げられ、あわせて「親に話す」と言われた場合、そのこと自体を脅しと受け止めて反発すると、話し合いが難しくなります。相手の家族に知られることへの不安があるときは、次の点を落ち着いて整理しておくと、対応の方向が見えやすくなります。
- 妊娠の事実と時期について、医療機関の受診を含めて確認できているか。
- 自分が父親である可能性について、どのように考えているか。
- 家族に知られる前に、相手と直接話し合う意思があるか。
- 金銭の支払いと家族への告知が結びつけられていないか。
- 自分の考えを、相手に書面やメッセージで伝えているか。
金銭の支払いと家族への告知を結びつけた要求が続く場合や、直接の話し合いが難しい場合には、弁護士を窓口にすることで、相手とのやり取りを落ち着いた形に戻せることがあります。実際に、相手との面談に応じずに合意に至った例として、【解決事例】交際相手の妊娠をめぐり100万円超を請求された事例|直接の面談に応じず解決金30万円で合意書を締結があります。
よくあるご質問
相手の親に養育費を払ってもらうことはできますか
養育費を負うのは子の父母であり、相手の親に支払いを求める権利があるわけではありません(民法817条の12第1項)。相手の親が任意に支援を申し出ることはありますが、その場合も、どのような名目で、誰の債務として受け取るのかを書面で明らかにしておくことが大切です。
相手の親から中絶を求められました。従う必要はありますか
出産するかどうかを決めるのは妊娠している本人で、交際相手の親が同意や反対をする立場にはありません(母体保護法14条1項)。意見として受け止めたうえで、医療機関での説明や自分の生活の見通しをもとに判断することになります。強い働きかけが続く場合には、やり取りを記録し、窓口を弁護士に移すことも考えられます。
相手の親から「本当に息子の子なのか」と言われました
父子関係を確かめる方法としてDNA鑑定がありますが、相手やその家族に鑑定を強制する仕組みはなく、双方の同意のもとで行われるのが一般的です。認知について争いが続く場合には、家庭裁判所の調停や訴訟の中で父子関係が審理されることになります(家事事件手続法257条1項、277条)。相手の家族との言い争いを続けるより、手続の中で確かめるほうが、結果として負担が小さくなることがあります。
まとめ
- 相手の家族に伝えるかどうかは、連絡、責任、生活の支援、気持ちの支えのうち、何を目的にするかで判断が変わる。
- 出産するかどうかを決めるのは妊娠している本人で、交際相手やその親は同意を求められる立場にない(母体保護法14条1項、3条1項)。
- 認知は相手本人が決めることで、未成年でも法定代理人の同意は不要である。胎児認知には母親の承諾が必要となる(民法780条、783条1項)。
- 養育費を負うのは父母であり、相手の親の扶養義務とは位置づけが異なる(民法817条の12第1項、877条1項、788条)。
- 改正民法により、子が生まれた後の親族との交流も家庭裁判所が定めうるようになった(民法766条の2、788条)。
- 金銭の要求と家族への告知を結びつけると、恐喝や脅迫を指摘される余地が生じる(刑法249条、222条)。
- 相手と連絡が取れない場合は、弁護士からの書面や家庭裁判所の手続で相手本人に働きかける道がある(家事事件手続法244条、257条1項、277条)。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、男女間のトラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。妊娠をめぐる話し合いは、時間の経過とともに選べる方法が変わっていくことがあります。早い段階で方針を整理しておくことが、ご本人と生まれてくる子の生活を守ることにつながります。
妊娠を相手の家族に伝えるかどうか迷っている方も、交際相手から家族に話すと告げられて対応に悩んでいる方も、一人で判断せずにご相談ください。


