【親子問題】家出した成人の子が行方不明、届け出はできる?

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

本記事は、行方不明者発見活動に関する規則(平成21年国家公安委員会規則第13号)と、各都道府県警察が公開している同規則の運用通達をもとに、2026年10月時点の内容で整理しています。実際の取扱いは、警察署や個々の事情によって異なることがあります。


成人した子が家を出たまま戻らず、電話もメッセージもつながらない。「大人なのだから自分の意思で出て行ったのだろう」と思う一方で、事件や事故に巻き込まれていないかという不安も消えない。親御さんからは、そのような状態で「そもそも成人の子について警察に届け出ができるのか」というご相談をいただきます。

 結論からいうと、子が成人していても、親は行方不明者届を出すことができます。ただし、届け出をすれば警察が子を探し出して家に連れ戻してくれる、という仕組みではありません。この記事では、届け出の要件と出し方、警察の動き方が変わる分かれ目、見つかった後に居場所が親に伝わるかどうか、そして届け出と並行して家族が取れる手立てを順に整理します。

成人した子でも、行方不明者届は出せる

 行方不明者届は、以前は「捜索願」と呼ばれていたもので、2010年4月に施行された行方不明者発見活動に関する規則によって今の名称になりました。規則は、生活の本拠を離れてその行方が明らかでない人のうち、届け出がされた人を「行方不明者」と定めています(規則2条1項)。年齢による制限はなく、本人が自分の意思で家を出た「家出」も含まれます。

 届け出ができる人は、規則6条1項で次のように決められています。

届け出ができる人具体例
親権者・後見人未成年の子の親、成年後見人など
配偶者・内縁の相手事実上婚姻と同様の関係にある人を含む
その他の親族成人した子の親、きょうだいなど
福祉に関する事務に従事する人福祉事務所の職員など
社会生活上、密接な関係にある人同居人、雇い主など


 成人した子については親権がなくなっていますが、親は「その他の親族」として届け出ができます。届け出先は、原則として子が行方不明になったときの住所または居所を管轄する警察署です。親が遠方に住んでいる、高齢で移動が難しいといった事情があれば、親の住所地の警察署などで受け付けてもらえる場合もあります(規則6条2項)。

届け出のときに用意しておきたいもの

 届出書の様式は警察署にあるため、事前に書類を作る必要はありません。ただ、窓口で聞かれる事項は多く、手元に情報がそろっているほど手配の内容が具体的になります。

  • 本人の顔がはっきり分かる、なるべく最近の写真。
  • 身長や体格、髪型、ほくろなどの身体の特徴。
  • いなくなったときの服装と、持ち出したと思われる物や現金。
  • 携帯電話の番号、使っているSNSのアカウント。
  • 使っている車やバイクの車種とナンバー。
  • 勤務先や交友関係、立ち寄りそうな場所。
  • 置き手紙やメッセージの有無と、その内容。
  • 通院や服薬の状況、借金などの悩み事。


 写真がすぐに用意できない場合でも、届け出を後回しにする必要はありません。分かる範囲で先に届け出をして、写真は後から提出することもできます。事案によっては、発見活動のために本人の歯ブラシなど、DNA型鑑定の資料の提出を求められることもあります。

「一般の家出」か「特異行方不明者」かで、警察の動き方は変わる

 届け出が受理されると、行方不明者の情報は警察の照会システムに登録されます。そのうえで警察は、子が次のような「特異行方不明者」にあたるかどうかを判断します(規則2条2項)。

区分主な内容
犯罪被害殺人・誘拐などの犯罪で生命や身体に危険が生じているおそれがある
事故遭遇水難・交通事故などで生命に危険が及んでいるおそれがある
自殺企図遺書や言動などから自殺のおそれがある
自傷他害精神障害の状態や危険物の携帯から、自分や他人を傷つけるおそれがある
自救能力なし病人・高齢者など、本人だけで生活する能力がない


 特異行方不明者にあたると判断されれば、立ち回り先が見込まれる地域の警察署へ手配がかかるなど、積極的な発見活動が行われます。これに対し、成人が自分の意思で家を出たと見られる場合は、パトロールや職務質問、交通の取締りといった日常の警察活動の中で照会にかかるのを待つ形が中心になります。

窓口では、気になる事情を事実のまま伝える

 どちらに区分されるかは、届け出の際に家族から伝えられた事情が大きな手がかりになります。置き手紙に思い詰めた言葉があった、通院や服薬が途切れていた、借金や不審なアルバイトの話をしていた、所持金がほとんどなかったなど、気になることは推測を交えずにそのまま伝えてください。反対に、心配のあまり事情を大きく言い過ぎると、後の手続で家族の説明が信用されにくくなることもあります。

 SNSで知り合った相手や、高収入をうたう仕事の誘いが家出の背景にありそうな場合は、【親子問題】スカウト・匿名流動型グループに取り込まれている疑い|接触を断つ順序と安全確保の考え方もあわせてご覧ください。

見つかっても、居場所が親に伝わるとは限らない

 成人の家出で親御さんが戸惑いやすいのが、見つかった後の扱いです。規則26条1項ただし書は、発見された本人の意思や年齢などを考慮して、届出人に通知しないこと、または通知する内容を限ることができると定めています。成人の子が「親には知らせないでほしい」と希望すれば、親には「無事が確認できた」とだけ伝えられ、居場所は知らされないことがあります。

 また、届出人から本人に対してストーカー行為やDVなどがあった場合には、本人の同意がない限り通知しない扱いになっています(規則26条2項)。子が警察や行政に「親から虐待されていた」と訴えている場合の窓口ごとの扱いは、【親子問題】子が「親に虐待された」と警察や行政に訴えた|窓口ごとの扱いと親が整理しておきたいことで整理しています。

 弁護士ドットコムなどに寄せられた相談を見ても、届け出の前に警察が本人の無事を確認できたとして受理に至らなかった例や、見つかった本人が所在の報告を拒んだため届け出の扱いが終了した例が見られます。成人には住む場所を自分で決める自由があるため、警察が本人の意思に反して家に連れ戻すことはありません。泥酔や自殺のおそれがあるなど、警察官職務執行法3条の保護が必要な状況は別ですが、これは本人の安全を守るための一時的な措置です。

 見つかった子を警察から引き取るよう求められた場面については、【親子問題】子が警察に保護された|引き取りを求められたときをご参照ください。

届け出と並行して、家族ができること


「無事だけ知らせてほしい」と伝える

 連絡手段が一つでも残っているなら、帰宅を求めるより先に、安否だけを知らせてほしいと伝える方法があります。責める言葉や「戻ってこないなら」という条件を付けると、子がかえって連絡を断つこともあります。独立した子と連絡が途絶えた場合の安否確認の順序は、【親子問題】独立した後に連絡が来なくなったら|安否確認の順序と「報告の枠組み」でも解説しています。

住所の移り変わりを公的な記録で確かめる

 子が住民票を移していれば、戸籍の附票に新しい住所が記録されます。戸籍の附票の写しは、本人の直系尊属である親も請求できる仕組みになっています(住民基本台帳法20条)。ただし、家出をした人が住民票を移していないことは珍しくありませんし、子が支援措置を受けていれば親からの請求は制限されます。住所が分かった場合でも、突然訪ねていくと関係がさらにこじれるおそれがあるため、どう接触するかは慎重に考える必要があります。

親名義の携帯電話や部屋を整理する

 子が使っている携帯電話や賃貸の部屋が親名義になっていると、料金や家賃の請求は親に届き続けます。利用状況から手がかりが得られることもあるため、すぐに解約するかどうかは状況を見て判断することになります。名義と契約の整理は【親子問題】子の携帯料金やサブスクを止めたい|名義と契約の整理で扱っています。

調査会社に依頼する場合の注意

 探偵などの調査会社に所在調査を依頼することもできます。探偵業法により、業者は契約前に重要事項を書面で説明し、調査結果を犯罪や違法な目的に使わない旨の書面を依頼者から受け取ることになっています。費用の内訳や、居場所が分かった後に何を報告するのかを、契約前に確かめておくと安心です。

長く戻らないときに関わってくる手続

 家出が長期に及び、子の財産の管理や、親の相続の場面で子と連絡がつかないことが問題になる場合があります。そのようなときは、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる方法があります(民法25条)。また、生死が7年間明らかでない場合には、失踪宣告という手続もあります(民法30条1項)。いずれも家族にとって気持ちの整理が必要な手続であり、急いで選ぶものではありませんが、制度として知っておくと、先の見通しを立てやすくなります。

居場所が分かった後に考えたいこと

 成人した子の家出は、家庭内の衝突やお金の問題、ひきこもりの長期化などが背景にあることが少なくありません。居場所が分かったとしても、同じ形で家に戻れば、また同じことが繰り返されるおそれがあります。親が法的に関われる範囲については、【親子問題】成人した子の問題に親が介入できる法的な範囲をご覧ください。

 当事務所では、弁護士が親御さんの代理人となり、民間の自立支援カウンセラーとチームを組んで親子の問題に取り組んでいます。子を無理に連れ戻すのではなく、親子が適度な距離を保ったまま、子が住まいや仕事、収入を確保していけるよう支える形をとっています。どの窓口に何を相談すればよいかは、【親子問題】親子の問題はどこに相談すればよいのか|警察・行政・弁護士の役割分担もあわせてご参照ください。

まとめ


  • 子が成人していても、親は「その他の親族」として行方不明者届を出すことができます。
  • 届け出先は、原則として子が行方不明になったときの住所または居所を管轄する警察署です。
  • 自殺のおそれや犯罪被害のおそれなどがあれば、特異行方不明者として積極的な発見活動の対象になります。
  • 成人が自分の意思で家を出た場合は、見つかっても本人の希望によって居場所が親に伝えられないことがあります。
  • 届け出と並行して、安否だけを求める連絡や公的な記録の確認、名義の整理を進める方法があります。


 成人した子の家出は、警察に届け出るだけでは終わらず、見つかった後の関わり方まで含めて考える必要があります。ご相談の流れや費用については、【親子問題】子の暴力・ひきこもり・お金の無心・犯罪行為に悩む親御さんへ|ご相談から自立までの流れと費用、よくあるご質問にまとめています。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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