【刑事事件・被害者側】元恋人に脅されてお金を払った、恐喝として訴えられる?
本記事は、2025年6月1日から懲役・禁錮が拘禁刑に一本化されたこと、2024年4月1日に改正DV防止法が施行されたことを反映して記載しています。
恋人と口論になり、帰ろうとする相手を玄関の前に立って止めた。別れ話の途中で相手のスマートフォンや鍵を預かったまま、話が終わるまで部屋から出さなかった。後になって相手から「監禁された」と言われたり、警察から連絡が来たりして、事の重さに気づく方は少なくありません。
当事者としては「話し合いを続けたかっただけ」「落ち着くまで引き止めただけ」という認識であることがほとんどです。しかし、恋人同士であっても、相手の意思に反してその場から出られない状態をつくれば、監禁罪(刑法220条)が問題になります。
この記事では、交際相手との間で起きやすい場面に絞って、監禁にあたるかどうかを分ける事情、監禁以外に問われうる罪、通報された後の見通し、そして今できることを整理します。車内の事案を含めた監禁罪の全体像は、車から降ろさなかった・部屋から出さなかった|監禁罪の成立でも解説しています。
恋人同士でも監禁罪は成立する
監禁罪は、不法に人を監禁した場合に成立し、法定刑は3月以上7年以下の拘禁刑です。ここでいう監禁とは、人が一定の場所から出ることを不可能にするか、著しく困難にすることを指すと理解されています。条文は加害者と被害者の関係を問わないため、交際中であること、同棲していること、自分の部屋であることは、いずれも成立を妨げる事情にはなりません。
また、監禁罪は親告罪ではありません。相手が告訴しなくても捜査は進みうるため、「恋人同士の喧嘩だから、相手が許せば終わる」とは限らない点に注意が必要です。
恋人との間で問題になりやすい場面
ご相談の中で見られるのは、次のような場面です。
- 別れ話がまとまらず、玄関やドアの前に立って相手が出て行くのを止めた。
- 相手のスマートフォン、財布、鍵、靴などを取り上げたまま話を続けた。
- ドアにチェーンをかけたり、外から開かないようにしたりして、相手を部屋やトイレに残した。
- 浮気を疑って問い詰め、説明が終わるまで外出を許さなかった。
- 「出て行くなら何をするか分からない」と告げ、相手が帰るのをあきらめさせた。
- 酔っている相手を「危ないから」と引き止め、帰りたいという申し出に応じなかった。
いずれも、本人には閉じ込めたという感覚が乏しい場面です。もっとも、刑事の手続で見られるのは、その時間を当事者がどう呼んでいたかではなく、相手がその場から出られる状態にあったかどうかです。
監禁にあたるかを分ける事情
鍵をかけていなくても、出られない状態がつくられていたか
監禁は、外から施錠する方法に限られません。出口に立ちふさがる、靴や上着を隠す、声を荒らげて威圧するといった方法で、相手が外へ出られない状態がつくられていれば、監禁と評価される余地があります。裁判例には、施錠も見張りもない部屋であっても、脅すような言動が続いたために相手が外へ出られなくなっていたとして、監禁罪の成立を認めたものがあります(東京高等裁判所昭和40年6月25日判決)。
交際相手の場合、相手はこれまでの関係から、こちらがどう反応するかを知っています。過去に怒鳴られたり物を壊されたりした経験があれば、その日に強い言葉がなくても「出たら何をされるか分からない」と感じることがあり、そうした事情も含めて判断されます。
相手が「帰りたい」と示した後にどう応じたか
部屋に来た時点では相手も納得していた場合でも、それで最後まで正当化されるわけではありません。相手が帰りたいと口にしたり、玄関に向かったりした後も引き止め続けていれば、そこから先は相手の意思に反した状態と見られやすくなります。帰りたいという申し出を受け入れたかどうかは、後から経過をたどるうえで分かれ目になりやすい点です。
どのくらいの時間続いたか
何分以上で成立する、という基準はありません。ごく短い間、腕をつかんで引き止めただけであれば、監禁ではなく暴行の問題として扱われるのが通常です。他方で、チェーンをかける、スマートフォンを取り上げるなど拘束の程度が強い場合には、比較的短い時間でも監禁と評価される余地があります。時間の長さは、拘束の方法や強さと合わせて見られる要素の一つです。
相手が自分の意思で残っていたか
相手が自分の意思でその場にとどまっていたのであれば、監禁罪は成立しません。話し合いを続けることに相手も同意し、いつでも帰れる状態にあったのであれば、長時間に及んだことだけで直ちに問題になるわけではありません。ただし、「相手も残ると言っていた」という説明は、その前後に帰ろうとした場面がなかったか、そう言わざるを得ない状況ではなかったかと照らし合わせて検討されます。
判断の方向をまとめると、次のようになります。
| 着目される事情 | 監禁と評価されやすい方向 | 評価されにくい方向 |
|---|---|---|
| 出口との位置関係 | ドアの前に立ちふさがった | 出口から離れた位置にいた |
| 相手の持ち物 | スマートフォン・鍵・靴を取り上げた | 持ち物は相手の手元にあった |
| 帰りたいという申し出 | 申し出の後も引き止めた | 申し出を受けて帰した |
| その場の言動 | 怒鳴る、物を壊す、脅すことを言った | 落ち着いた話し合いにとどまった |
| 時間と機会 | 長時間続き、途中で出る機会がなかった | 短時間で、途中に出る機会があった |
監禁以外に問われうる罪
部屋から出さなかった場面では、監禁罪と並んで、あるいは監禁罪に代わって、次のような罪が検討されることがあります。
| 罪名 | 問題になりやすい行為 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 暴行罪(刑法208条) | 腕をつかむ、押し戻す | 2年以下の拘禁刑、30万円以下の罰金など |
| 傷害罪(刑法204条) | 引き止める際に相手がけがをした | 15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 逮捕等致傷罪(刑法221条) | 監禁の結果、相手がけがをした | 傷害の罪と比べて重い刑で処断 |
| 強要罪(刑法223条) | 脅して謝罪文や約束の書面を書かせた | 3年以下の拘禁刑 |
| 器物損壊罪(刑法261条) | 相手のスマートフォンを壊した | 3年以下の拘禁刑、30万円以下の罰金など |
監禁罪には罰金刑の定めがなく、起訴された場合には正式な裁判で審理されます。けがが生じた場合の扱いは監禁でけがをさせた|逮捕監禁致傷の重さと示談の位置づけで、つかむ・押すといった行為の評価は押した・つかんだだけで暴行罪になるのか|「有形力の行使」の範囲で整理しています。その場で書かせた念書や約束の書面は、後から効力を争われる余地があり、この点は脅されて署名した念書・示談書は有効か|「無効」と「取消し」の違いで解説しています。
なお、立場が逆で、相手の部屋から帰るよう求められたのに居座った場合には、監禁ではなく不退去罪(刑法130条後段)が問題になります。詳しくは退去を求められたのに帰らなかった|不退去罪はいつ成立するかをご覧ください。
通報された後、何が起きるのか
交際相手からの通報は、DVの観点からも見られる
恋人との間のトラブルで110番通報があった場合、警察はその場の出来事だけでなく、これまでの経緯や、今後つきまといや暴力に発展するおそれがないかという観点からも事情を聞くことがあります。部屋から出さない状態が続いているところに警察官が駆けつけた場合には、その場で現行犯として逮捕されることもあります。逮捕に至るかどうかの分かれ目は、逮捕されるケースと逮捕されないケースの分かれ目|通報から立件までに何が起きるかで解説しています。
同棲している場合は、保護命令が申し立てられることがある
DV防止法は、生活の本拠を共にする交際相手からの暴力についても、配偶者間と同じ枠組みを準用しています。2024年4月施行の改正により、身体への暴力に加えて、生命・身体・自由・名誉・財産に害を加える旨を告げる脅迫を受けた場合にも、接近禁止命令などを申し立てられるようになりました。同棲中の相手を部屋から出さなかった経緯は、こうした申立ての中で取り上げられることがあります。自分の言動の振り返り方は、【男女トラブル】デートDVの加害者だと言われた|自分の言動を法的に見直すも参考になります。
相手が許しても、それだけで終わるとは限らない
仲直りをした、相手が被害届を取り下げた、という事情があっても、監禁罪は親告罪ではないため、捜査がそこで当然に終わるわけではありません。もっとも、示談が成立し、相手が処罰を望まない意思を示していることは、起訴するかどうかや量刑の判断で考慮される事情です。示談は当事者同士の口約束にとどめず、内容を書面に残す形で進めることが重要になります。
「出さなかった」側が、今できること
相手から「監禁された」と言われた段階や、警察から連絡が来た段階では、次の点を意識しておくと、その後の対応を組み立てやすくなります。
- 相手に繰り返し連絡して、謝罪や説明を重ねないこと。
- その日の時刻の流れ、相手が帰りたいと言った場面、その場での自分の言動を書き出しておくこと。
- メッセージや通話履歴を消さずに残しておくこと。
- 相手の持ち物を預かったままであれば、直接手渡しに行かず、返し方を相談すること。
- 警察から呼び出しがあった場合に、話す内容を事前に整理しておくこと。
特に気をつけたいのは、相手への連絡です。謝りたい、誤解を解きたいという気持ちから連絡を重ねると、相手には新たな圧力と受け止められ、つきまといや口裏合わせを疑われるおそれがあります。感情の対立が続いている間は、弁護士が窓口となって相手の意向を確かめながら示談の可否を探る方が、本人が相手と接触せずに済み、結果として行き違いを抑えやすくなります。
話し合いの場を、出られない空間にしないために
別れ話や浮気の問い詰めなど、感情が高ぶりやすい話し合いを部屋の中で行うと、意図せず「出られない状態」をつくってしまうことがあります。人目のある場所を選ぶ、時間を区切っておく、相手が帰ると言ったらその日は打ち切る、といった工夫が、結果として双方を守ることにつながります。場所の選び方は【男女トラブル】別れ話の場所をどう選ぶか|会うか・会わないかの判断で、直接会わずに関係を終える方法は【男女トラブル】別れ話を弁護士に任せるときの流れ|本人と会わずに関係を終えるで解説しています。
よくあるご質問
数分間、ドアの前に立っていただけでも監禁になりますか
時間の短さだけで結論は決まりません。短時間で、相手が帰ると言った時点で道を空けたのであれば、監禁と評価されにくい事情になります。他方で、腕をつかむなど身体に触れていれば暴行罪が問題になることがあり、前後に威圧的な言動があれば、短時間でも評価が変わる余地があります。
自分が借りている部屋でも、相手を出さないと罪になりますか
問題になりえます。部屋の名義や契約者が誰であるかは、監禁罪の成否を左右する事情ではありません。自分の部屋であっても、出たいという相手の意思を押しとどめる権限まではないためです。
相手が興奮していたので、落ち着かせるつもりで引き止めた場合はどうなりますか
動機が相手を心配するものであったとしても、それだけで監禁の評価が否定されるわけではありません。ただし、相手が泥酔して足元がおぼつかなかったなど、引き止めることに一定の理由があった事情は、行為の評価や処分の判断の中で考慮される可能性があります。その場の状況を、できるだけ具体的に書き残しておくことが大切です。
まとめ
- 恋人同士であっても、相手の意思に反して部屋から出られない状態をつくれば、監禁罪が問題になります。
- 施錠していなくても、出口をふさぐ、持ち物を取り上げる、威圧するといった方法で監禁と評価される余地があります。
- 相手が帰りたいと示した後の対応が、判断の分かれ目になりやすい点です。
- 監禁罪は親告罪ではなく罰金刑の定めもないため、相手が許したことだけで手続が終わるとは限りません。
- 同棲中の相手であれば、DV防止法に基づく保護命令が申し立てられることもあります。
- 相手への直接の連絡は控え、経過の整理と記録の保存から始めることが大切です。
部屋から出さなかったという出来事は、本人にとっては話し合いや喧嘩の延長であることが多いものです。それでも、相手が出られる状態にあったかどうかという視点で見直すと、評価が変わることがあります。警察から連絡が来ている場合や、相手から「監禁された」と言われている場合には、記憶が新しいうちに経過を整理し、早めに弁護士へご相談ください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


