【解決事例】わいせつ行為の疑惑により警察介入|示談交渉により不起訴処分の獲得と社内処分の回避を実現した事例
話し合いのつもりで車に乗せたまま走り続けた、部屋から帰ろうとする相手を引き止めた。こうした場面のあとで、警察から連絡が来ることがあります。多くの方が戸惑われるのは、鍵をかけたわけでも縛ったわけでもないのに、監禁罪という言葉が出てくる点です。
監禁罪は、刑法220条が定める逮捕・監禁罪の一部です。条文は短く、どこからが監禁にあたるのかまでは書かれていません。実際の判断は、その場につくられていた状態を事実に即して評価する形で行われます。
この記事では、車の中と部屋の中という二つの場面に絞って、監禁罪の成立がどのような事情に左右されるのか、そしてその場で書いてもらった書面がどのように扱われるのかまでを整理します。
どのような場面が問題になるのか
ご相談として持ち込まれるのは、次のような場面です。
・話し合いを続けたいと考え、相手が降りたいと言ったあとも車を走らせ続けた
・別れ話がまとまらず、玄関の前に立って相手が出て行くのを止めた
・金銭の話をするために相手を部屋に呼び、話が終わるまで帰らせなかった
・相手の携帯電話やかばん、部屋の鍵を預かったまま話を続けた
・複数人で相手を囲み、席を立たせないまま長時間話し合った
・相手を車に乗せて別の場所まで移動し、そこで話を続けた
いずれも、当事者の側では「話し合い」「引き止めただけ」という認識であることが多い場面です。もっとも、刑事の手続では、当事者がその時間をどう呼んでいたかではなく、相手がその場から出られる状態にあったかどうかが見られます。
監禁罪を定めた条文と、その位置づけ
| 罪名 | 条文が定める行為 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 逮捕・監禁罪(刑法220条) | 不法に人を逮捕し、又は監禁した | 3月以上7年以下の拘禁刑 |
| 逮捕等致死傷罪(刑法221条・致傷) | 上記の罪を犯し、よって人を負傷させた | 3月以上15年以下の拘禁刑 |
| 逮捕等致死傷罪(刑法221条・致死) | 上記の罪を犯し、よって人を死亡させた | 3年以上の有期拘禁刑 |
条文上、逮捕と監禁は同じ220条にまとめられています。逮捕は身体を直接押さえて動けなくすること、監禁は一定の区域から出ることを不可能または著しく困難にすることを指すと理解されています。両方が続けて行われた場合でも、別々の罪ではなく一つの罪として評価されるのが一般的な扱いです。
ここで押さえておきたいのは、この条文には罰金刑が定められていないという点です。罰金を納めて終わる略式手続は、法律上、罰金または科料を科す場合に限られています。そのため、監禁罪で起訴された場合には、正式な裁判の場で審理されることになります。処分の見通しを考えるうえで、暴行罪などとの大きな違いになる部分です。
なお、2025年6月1日から懲役と禁錮が拘禁刑に一本化されました。従来の解説記事で「3月以上7年以下の懲役」と書かれているものも、同じ条文を指しています。
閉じ込めることだけが監禁ではない
監禁と聞くと、部屋に入れて外から鍵をかける場面が思い浮かびます。実際には、それは典型例の一つにすぎません。
判例が積み重ねてきた考え方は、一定の区域から出ることを不可能にした場合だけでなく、著しく困難にした場合も監禁にあたるというものです。物理的に出口がふさがれていなくても、その場を離れることが現実には難しい状態がつくられていれば、監禁と評価される余地があります。
古い判例には、深夜に沖合へ停泊させた漁船の中に閉じ込めた事案について、その気になれば泳いで岸に着く機会があったとしても監禁罪が成立するとしたものがあります。「出ようと思えば出られたはずだ」という説明が、そのままでは通りにくいことを示す例といえます。
車の中で問われること
車内が問題になる場面では、走っている車から降りることの危険性が評価の中心になります。走行中の車は、ドアの鍵がかかっていなくても、降りようとすればけがをする状態です。この点をとらえて、原動機付自転車の荷台に人を乗せ、約1キロメートルにわたって走行した事案について監禁罪の成立を認めた判例があります(最高裁昭和38年4月18日決定)。荷台には壁も扉もありませんが、走っている以上、降りることが著しく困難だと評価されたものです。
車内の事案では、次のような事情が積み重ねられて判断されます。
| 着目される事情 | 評価が動きやすい方向 |
|---|---|
| 相手が降りたいと述べたか | 述べた後も走り続けていれば、拘束の意思が推認されやすい |
| 停車の機会があったか | 信号待ちなどで降車できる場面があったかが検討される |
| 施錠やチャイルドロックの有無 | 作動していれば拘束の程度が重く見られる |
| 走行した距離と時間 | 長くなるほど自由の制約が大きいと評価される |
| 同乗者の人数と座席の位置 | 挟まれた状態であれば脱出が難しいと見られる |
| 荷物や携帯電話の所在 | 手元になければ降りるという選択が取りにくい |
| 時間帯と走行した場所 | 深夜や人けのない道では降車の現実性が下がる |
ここで分かれ目になりやすいのが、相手が降ろしてほしいと述べた後の対応です。乗った時点では同意があった場合でも、降りたいという意思が示された後も走り続ければ、そこから先は相手の意思に反した状態になります。乗り込んだ経緯に同意があったことは、その後の経過を当然に正当化するものではありません。
部屋の中で問われること
室内の事案では、施錠していないことがそのまま結論を左右するわけではない、という点が出発点になります。
裁判例には、施錠も見張りもない場所であったにもかかわらず、脅すような言動が続いていたために相手が外へ出られなくなっていたとして、監禁罪の成立を認めたものがあります(東京高等裁判所昭和40年6月25日判決)。この判決は、相手への仕打ちが厳しかったために、あえて施錠や監視を必要としなかったとさえいえる、という趣旨を述べています。鍵をかけていないことが、拘束がなかったことの裏づけになるわけではない、ということです。
室内の場面では、次のような事情が検討されます。
・玄関やドアの前に立ちふさがっていたか
・部屋の鍵、靴、上着、かばんなどを相手の手元から離していたか
・携帯電話を取り上げたり、外部への連絡を制止したりしていたか
・その場に何人がいて、それぞれどの位置にいたか
・声を荒らげる、物を壊すといった言動があったか
・帰りたいという申し出に対してどのように応じたか
・話し合いが何時間続き、途中に退室の機会があったか
相手が帰りたいと述べたときに、それを受け入れたかどうかは、後から経過を再現するうえで大きな意味を持ちます。話し合いを終わらせたくないという気持ちは理解できるものですが、退去の申し出を押しとどめる形になっていれば、その時点から評価が変わります。
相手が拘束に気づいていなかった場合
監禁罪は、被害者が自分の自由を奪われていると認識していることを要件とはしていない、というのが判例と多数説の理解です。
事実と異なる説明をして相手を車に乗せた事案について、判例は、暴行や脅迫による場合だけでなく、偽計によって相手の思い違いを利用した場合も監禁にあたるとしました(最高裁昭和33年3月19日決定)。事案は、行き先について事実と違う説明をして車に乗せ、途中で相手が気づいて止めるよう求めたにもかかわらず、そのまま別の場所へ連れて行ったというものです。判断としては、相手が気づく前の区間も含めて監禁とされています。
眠っていた相手や酔っていた相手についても、目を覚ませば動くことができる状態であれば、監禁の対象になりうると考えられています。「相手は嫌がっていなかった」という説明が、そのままでは決め手になりにくいのは、この考え方によるものです。
どのくらいの時間で成立するのか
何分以上という基準はありません。ごく短い時間、腕をつかんで動きを止めただけであれば、監禁ではなく暴行の問題として扱われるのが通常です。行動の自由が侵害されたといえる程度に、その状態がある程度続いていることが求められます。
一方で、時間が短ければ問題にならない、というわけでもありません。拘束の程度が強い場合や、危険な状態に置いた場合には、比較的短い時間でも監禁として評価される余地があります。時間の長短は、拘束の強さや場所の条件と合わせて見られる要素の一つです。
監禁罪は、状態が続いている間ずっと犯罪が続いていると扱われる継続犯です。この性質は、後で述べる共犯や公訴時効の考え方にもつながります。
「不法に」とはどういう意味か
条文には「不法に」という言葉が置かれています。これは、拘束に正当な理由がない場合を指すもので、法律上の根拠がある拘束は除かれます。警察官が令状に基づいて行う逮捕がその代表です。
私人による現行犯逮捕も、法律が認めた行為です。刑事訴訟法は、現行犯人であれば誰でも逮捕状なしに逮捕できると定めています。ただし、認められるのは現行犯の場合に限られ、逮捕した人は直ちに検察官または警察官に引き渡さなければならないとされています。相手を自分の車や事務所へ連れて行き、そこで話を続ける権限までは含まれていません。
相手の側にも落ち度があったという事情は、拘束を正当化する理由にはなりにくいという点も押さえておく必要があります。貸したお金が返ってこない、事実と違うことを言われたといった事情があっても、それを理由に相手の移動の自由を制約してよいことにはなりません。相手の落ち度は、量刑や示談の局面で考慮される可能性がある事情であって、成立そのものを打ち消す方向には働きにくいのが実情です。
その場で書いてもらった念書や示談書はどうなるか
車内や室内で話を続けた末に、相手に念書や支払いの約束を書いてもらった、というご相談は珍しくありません。この書面は、二つの面から問題になります。
一つは、書面を書かせた行為そのものです。相手を脅したり、身体を押さえたりして、義務のないことを行わせた場合には、強要罪が問題になります。拘束の状態を保ったまま署名を求めた場合には、監禁罪と併せて検討されることになります。
もう一つは、書面の効力です。民法は、強迫による意思表示は取り消すことができると定めています。相手がその場から出られない状態で署名した書面は、後から取消しを主張される余地が大きく、書いてもらったこと自体が拘束の存在を示す資料として扱われることもあります。書面を確保したことが、かえって不利に働く場面があるということです。
金銭の話がある場面ほど、その場で結論を出そうとしない方が、結果として双方の利益になります。
けがや死亡につながった場合
拘束の結果として相手が死傷した場合には、逮捕等致死傷罪として、傷害の罪と比べて重い方の刑で処断されます。
この罪は、拘束の手段として加えた暴行から結果が生じた場合だけでなく、拘束された人が逃れようとして負傷した場合にも成立しうると理解されています。走行中の車から飛び降りた、窓から出ようとして落ちたといった経過がこれにあたります。
因果関係の範囲は、第三者の行為が間に入った場合にも及ぶことがあります。判例には、道路上に停車していた車のトランク内に人を監禁していたところ、後続車が前方不注意で追突し、トランク内にいた被害者が死亡したという事案について、死亡の直接の原因が追突した第三者の過失にあるとしても、監禁行為と死亡との間に因果関係があるとしたものがあります(最高裁平成18年3月27日決定)。
他方で、拘束中に加えた暴行が、拘束を維持するためではなく別の動機から出たものである場合には、致傷の一罪ではなく、監禁罪と傷害罪の二つが成立し、併合罪として扱われるとした判例もあります(最高裁昭和42年12月21日判決)。同じ「拘束中のけが」であっても、暴行の位置づけによって罪の組み立てが変わります。
同乗していた人、運転していた人
監禁罪が継続犯であることから、拘束が続いている間に加わった人も共犯として扱われる余地があります。
たとえば、事情を知ったうえで運転を代わった、途中から同乗して相手が降りられない状態を維持した、部屋の外で待機して出て行かないよう見張っていたといった関与です。自分は直接手を出していないという説明だけで、責任の範囲が定まるわけではありません。
逆に、途中で関与をやめた場合には、その時点までの評価と、それ以後の状態への影響がどうであったかが検討されます。関与をやめたといえるかどうかは、単に立ち去ったかどうかではなく、それまでに自分がつくった状態を解消したかどうかという観点から見られる傾向があります。
手続の見通しについて
先に触れたとおり、監禁罪には罰金刑がありません。そのため、起訴された場合は正式な裁判となり、罰金を納めて終わるという道はありません。この点から、捜査の段階でどう対応するかの比重が大きくなります。
監禁罪は親告罪ではないため、告訴がなくても捜査は進みます。もっとも、被害者との示談が成立しているかどうかは、起訴するかどうかの判断や、起訴された後の量刑の判断で考慮される事情です。相手方の連絡先を知らない場合や、感情的な対立が続いている場合には、弁護人を通じて連絡を取る方法が検討されます。
公訴時効は、法定刑の上限が7年であることから5年とされています。継続犯であるため、時効の進行は拘束が終わった時点から始まります。相手が負傷している場合には、より長い期間が適用されます。過去の出来事について後から捜査が始まることがあるのは、この仕組みによるものです。
連絡が来たときに整理しておきたいこと
警察から連絡があった段階、あるいは相手の代理人から書面が届いた段階で、次のような点を書き出しておくと、見通しを立てやすくなります。
・その日の時刻の流れ。どこで会い、いつ移動を始め、いつ別れたか
・移動した経路と距離。車であれば駐車や停車をした場所
・相手が帰りたい、降りたいと述べた場面があったか、そのときどう応じたか
・その場にいた人の数と、それぞれの立ち位置
・相手の持ち物を預かった事実の有無と、預かった理由
・書面に署名してもらった場合は、その経緯と保管の状況
・やり取りが残っている記録。通話履歴、メッセージ、ドライブレコーダー、施設の防犯カメラ
記録は時間が経つと失われます。防犯カメラの映像は保存期間が限られていることが多いため、確認が必要と思われるものは早い段階で把握しておくことが望ましいといえます。
まとめ
・監禁罪は、一定の区域から出ることを不可能または著しく困難にした場合に成立し、施錠や緊縛がなくても問題になりうる
・法定刑は3月以上7年以下の拘禁刑で、罰金刑の定めがないため、起訴されれば正式な裁判となる
・走行中の車は、鍵がかかっていなくても降りることが困難な状態と評価されることがある
・相手が降りたい、帰りたいと述べた後の対応が、判断の分かれ目になりやすい
・相手が拘束に気づいていなかった場合や、事実と違う説明で連れて行った場合にも成立する余地がある
・相手の側に落ち度があったことは、拘束を正当化する理由にはなりにくい
・その場で書いてもらった書面は、効力を争われるだけでなく、拘束の存在を示す資料にもなりうる
車から降ろさなかった、部屋から出さなかったという行為は、本人にとっては話し合いの延長線上にあることが少なくありません。しかし刑事の手続では、その場に置かれていた相手が出られる状態にあったかどうかが問われます。すでに警察から連絡があった場合や、相手方から書面が届いている場合には、記憶が新しいうちに経過を整理したうえで、弁護士に相談して対応を決めていくことをお勧めします。


