【ストーカートラブル】弁護士名で警告書を送ると、相手を刺激しない?

若井亮

若井亮

テーマ:ストーカートラブル

つきまといやしつこい連絡に悩んでいる方から、「弁護士の名前で警告書を送ってもらいたいが、かえって相手を怒らせてしまわないか」というご相談をいただくことがあります。これまで連絡を断っても止まらなかった相手が、書面を受け取ってどう反応するのかは、たしかに気がかりな点です。

 弁護士名の警告書を受け取って、連絡や接触をやめる人は少なくありません。一方で、相手のそれまでの言動によっては反発を招くおそれもあり、その可能性を否定することはできません。大切なのは、「刺激するか、しないか」の二択で考えるのではなく、送ってよい場面かどうか、どのような書き方で、どのような備えをしたうえで送るのかを整理することです。

 この記事では、弁護士名で警告書を送ることで何が変わるのか、相手を刺激しやすい書き方と送らないほうがよい場面、送る前に整えておく備え、送った後に起こりうる反応と次の手段について解説します。

この記事は、2026年10月時点の法令に基づいて作成しています。2025年12月30日施行の改正ストーカー規制法(警察の職権による警告の創設、紛失防止タグを用いた位置情報の無承諾取得等の規制など)の内容を反映しています。


弁護士名の警告書は相手を刺激するのか

 弁護士名の警告書は、依頼者がこれ以上の連絡や接触を望んでいないこと、今後はそれをやめるよう求めることを、代理人を通じて正式に伝えるものです。当事者同士のやり取りでは応じなかった相手が、書面を受け取った後に連絡を止める例は珍しくありません。行為が個人間の感情の問題ではなく、法的な対応の対象として扱われる段階に入ったことが、書面の存在そのものから伝わるためと考えられます。

 もっとも、受け止め方は人によってさまざまです。「大ごとにされた」と感じて反発する人もいれば、弁護士ではなくご本人に向けて言い分をぶつけようとする人もいます。そのため、警告書に相手を刺激するおそれがまったくないとは言えません。

 ただ、相手を刺激するかどうかを左右するのは、警告書を送るという行為そのものよりも、何をどう書くか、どの段階で送るか、送った後の連絡経路をどう組み立てるかという点であることが多いと考えています。この3点を整えることで、刺激のおそれを抑えながら、拒絶の意思を確実に伝えることを目指します。

弁護士名で警告書を送ると変わること


拒絶の意思が記録として残る

 ストーカー規制法は、電話、文書の送付、電子メールやSNSのメッセージの送信といった行為について、無言電話の場合を除き、「拒まれたにもかかわらず」連続して行うことを規制の対象としています(同法2条1項5号)。そのため、後に警察へ相談したり手続を進めたりする段階で、拒絶の意思をはっきり伝えていたことを示せるかが問われることがあります。

 内容証明郵便で送る警告書は、いつ、誰が、どのような内容を伝えたのかが記録として残るため、この点を示す資料になります。配達証明を付ければ、相手に届いた日も確認できます。

自分の住所や連絡先を知らせずに済む

 ご自身で内容証明郵便を送る場合、差出人として自分の氏名と住所を書く必要があります。転居した後の事案や、もともと住所を知られていない事案では、警告のためにかえって自分の居場所を伝える結果になりかねません。弁護士が代理人として送る場合、書面に記載するのは事務所の所在地であり、ご本人の現住所や連絡先は記載しません。

やり取りの窓口が弁護士に移る

 警告書には、今後の連絡は代理人である弁護士宛てにするよう記載します。相手から反論や釈明があっても、ご本人が直接受け答えをする必要はありません。当事者同士のやり取りが続くこと自体が、相手に「まだ話ができる」と受け取られるきっかけになることがあるため、窓口を一本化することには刺激を抑えるという意味もあります。

 なお、新しい交際相手や友人に「やめるよう言ってもらう」方法は、相手の反発がその人に向かうおそれがあるため、避けたほうがよいでしょう。弁護士に代理人を依頼することの全体像は、【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味で解説しています。

刺激しやすい書き方と、抑えた書き方

 警告書の内容によっては、相手の反発を強め、かえって行為が激しくなることがあります。当事務所では、書く内容を「事実」と「求めること」に絞り、次のような書き方を避けるようにしています。

刺激しやすい書き方抑えた書き方
相手の人格や性格を非難する行為の内容と日時を特定して書く
「勤務先や家族に知らせる」と告げる今後取りうる法的手続を一般的に示すにとどめる
記憶に頼った回数や日時を断定する記録で確認できる事実に絞る
謝罪や説明を強く迫り、返答を求める連絡と接触の中止だけを求める
会って話すことを提案する連絡先を代理人に限定する


 勤務先や家族に知らせると告げる、金銭を払わなければ公表すると告げるといった記載は、相手を刺激するだけでなく、こちらが脅迫などの問題を指摘されるおそれもあります。反対に、正当な権利の行使として警察への相談や法的手続を検討していると伝えること自体は、通常は問題になりません。

 書面が相手の家族や同居人の目に触れる可能性がある場合には、宛先や記載の範囲にも配慮します。相手の名誉を傷つけるような表現も、後から別の紛争の火種になりかねないため用いません。

警告書を先に送らないほうがよい場面

 すべての事案で警告書が適しているわけではありません。次のような事情がある場合は、警告書を先行させるよりも、警察への相談を優先したほうがよいと考えています。

  • 暴力を振るわれた、住居に入り込まれた、物を壊されたといった被害があること。
  • 「殺す」など、危害を加えることをほのめかす言葉が出ていること。
  • 刃物などの凶器に触れる発言があること。
  • 短い期間で、連絡の頻度や行動が急に激しくなっていること。
  • 自分の命を絶つことをほのめかして、会うよう迫ってくること。
  • これまでに、制止されると強く反発する様子が見られたこと。


 身体の安全に関わる状況では、書面でのやり取りよりも、警察による警告や禁止命令、場合によっては検挙といった対応のほうが適しています。2025年12月30日施行の改正により、警察は被害者からの申出がなくても、職権で警告できるようになりました。相手からの報復が心配で申出をためらう場合でも、まず警察に状況を伝えておくことには意味があります。

 警察と弁護士のどちらに先に相談するかで迷う場合は、【ストーカートラブル】警察と弁護士のどちらに先に相談するか|ストーカー被害での順序もあわせてご覧ください。なお、警察への相談と弁護士による警告書は、どちらか一方を選ぶものではありません。警察に相談した記録を残したうえで、並行して警告書を送るという進め方もあります。

送る前に整えておきたい備え

 警告書を送ると決めた場合でも、送付の前に次の準備を整えておくと、相手が予想外の反応を見せたときに落ち着いて対応しやすくなります。

  1. これまでの連絡や行動の記録を保存しておきます。メッセージの画面、着信履歴、手紙、防犯カメラの映像などは、送付後に相手から削除を求められても消さずに残します。
  2. 最寄りの警察署に一度相談し、相談した事実を記録に残しておきます。送付後に相手が自宅に来るなどした場合に、経緯を説明しやすくなります。
  3. 送付の時期を調整します。引っ越しの直後や、相手と顔を合わせる予定が近い時期などは、避けたほうがよい場合があります。
  4. 同居の家族や、必要に応じて勤務先の担当者に事情を伝え、見慣れない来訪や電話への対応を決めておきます。
  5. 相手から本人宛てに連絡が来たときの対応を決めておきます。返信はせず、内容を保存して弁護士に知らせるのが基本です。


 相手との接触を安全に断ちながら記録を残す方法は、ストーカーを刺激せず関係を断つ|安全な接触遮断と証拠の残し方で詳しく解説しています。

送った後に起こりうる反応と対応

 警告書を送った後の相手の反応は、おおむね次のように分かれます。

相手の反応考えられる意味対応の方向
連絡や接触が止まる警告の趣旨が伝わった記録を保管し、再開に備える
弁護士に反論・釈明・謝罪の連絡が来る窓口の一本化が機能している弁護士が対応し、ご本人は応じない
ご本人に直接連絡が来る拒まれていると知りながら続けている返信せずに記録し、警察に相談する
自宅や職場の周辺に現れる安全に関わる段階に入ったためらわずに110番通報する
書面を受け取らない受領を避けている返送の記録を残し、普通郵便での併送も検討する


 連絡が止まった場合でも、しばらく時間を置いてから行為が再開することがあります。警告書の控えとそれまでの記録は、事態が落ち着いた後も保管しておいてください。

 相手が弁護士を通じて「直接会って謝りたい」と申し入れてくることもあります。面会に応じるかどうかはご本人が決めることで、断っても謝罪や示談の話を進める方法は残ります。詳しくは【ストーカートラブル】相手が弁護士を通じて「会って謝りたい」と言ってきた|面会を断っても謝罪や示談の道は残るで解説しています。

 警告書を受け取った後もご本人への連絡や接触が続く場合、相手は拒まれていることを認識しながら行為を続けていることになります。その経緯は、後に警察や裁判所での手続を進める際に意味を持ちます。

警告書の限界と、その次の手段

 弁護士名の警告書は、法律上の制度に基づく命令ではありません。相手が無視したこと自体を理由に処罰されることはなく、この点は警察が行う警告も同様で、警告は行政指導にあたります。これに対し、都道府県公安委員会が出す禁止命令には罰則があり、禁止命令に違反してストーカー行為をした場合には、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金の対象となります。

 警告書を送っても行為が止まらないときは、次のような手段を検討することになります。

手段内容
警察の警告・禁止命令警察本部長等や公安委員会が、行為の中止を求める。禁止命令への違反には罰則がある
ストーカー行為罪での告訴処罰を求める意思を示し、捜査を求める
接近禁止の仮処分裁判所に、面談や連絡、接近の禁止を命じてもらう
損害賠償請求つきまといによる精神的な苦痛などの賠償を求める


 警察の警告が出た後も接触が続く場合の流れは【ストーカートラブル】警告が出たのに接触が続いている|禁止命令への切り替えで、裁判所の手続との使い分けは接近禁止を実現する2つの道|ストーカー規制法(警察)と民事保全(裁判所)の使い分けで解説しています。弁護士に依頼している場合、警告書を送った経緯や整理した記録をそのまま引き継いで、これらの手続に進むことができます。

よくあるご質問


警告書を送ったことが、自分の家族や職場に知られることはありますか

 当事務所から、ご家族や勤務先に連絡することはありません。郵送物の受け取り方法などにご希望があれば、あらかじめお知らせください。ただし、相手が第三者に話す可能性を完全に防ぐことはできません。

警察に相談せず、弁護士の警告書だけで済ませることはできますか

 危害のおそれがうかがわれない事案であれば、警告書から始めることもあります。もっとも、送付後に相手が予想外の行動に出た場合に備えて、警察に一度相談しておくことをお勧めしています。

警告書を送った後、相手に返事をしてもよいですか

 相手から直接連絡が来ても、返信は控えてください。「最後に一言だけ」と返したつもりのやり取りが、相手にとっては関係が続いているという受け止めにつながることがあります。内容は保存し、弁護士にお知らせください。

まとめ

 弁護士名の警告書は、拒絶の意思を記録に残る形で伝え、やり取りの窓口を弁護士に移すための手段です。相手を刺激するおそれがまったくないとは言えませんが、書き方を事実と要望に絞り、送ってよい場面かどうかを見極め、送付前後の備えを整えることで、そのおそれを抑えることを目指せます。暴力や危害をほのめかす言動がある場合には、警告書よりも警察への相談を先にしてください。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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