【ストーカートラブル】ネットに自宅の住所を書き込まれた|削除とその日の安全確保
本記事は、ストーカー行為等の規制等に関する法律(令和7年法律第83号による改正後のもの)と東京都の迷惑防止条例をもとに、2026年10月時点の内容で記載しています。個別の事案での当てはめは、行為の内容や前後の経緯によって変わります。
投稿するたびに、数分もしないうちに同じアカウントから「いいね」が付く。何年も前の投稿にまでさかのぼって、まとめて「いいね」が押されている。ときどき短いコメントも書き込まれる。一つひとつは何気ない操作でも、毎日のように続くと「見張られているのではないか」と不安になるものです。
一方で、「いいねを押されているだけで相談してよいのか」「好意的な反応なのだから、気にしすぎなのでは」と、ご自身の受け止め方に迷われる方も少なくありません。この記事では、毎日のように続く「いいね」やコメントがストーカー規制法の対象になり得る場面とそうでない場面、ブロックする前に残しておきたい記録、相談先の選び方を整理します。コメントの書き込みが中心の場合の考え方は【ストーカートラブル】SNSに毎日コメントされる|ネット上の行為は規制法の対象になるかで詳しく取り上げていますので、あわせてご覧ください。
「いいね」やコメントが問題になるかを分ける3つの点
ストーカー規制法は、SNS上の行為も規制の対象にしています。ただし、SNSでの反応がすべて規制の対象になるわけではなく、主に次の3つの点から判断されます。
- 相手が、好意の感情、またはそれが満たされなかったことによる恨みの感情から行為をしていること。
- あなたが拒んでいるのに続けている、行動を見ていると思わせるなど、行為の態様が規制法の定める類型に当てはまること。
- 同じ相手に対して繰り返され、身の安全や平穏が害される不安を覚えさせるような方法で行われていること。
回数の基準が決まっているわけではなく、「毎日だから該当する」「月に数回だから該当しない」と一律に言えるものではありません。頻度は判断材料の一つであり、相手との関係、反応が始まったきっかけ、内容などと合わせて評価されます。
コメントと「いいね」では、規制法上の位置づけが異なる
同じSNS上の反応でも、文章を書き込むコメントと、ボタンを押すだけの「いいね」とでは、規制法との関係の考え方が少し異なります。
コメントは「電子メールの送信等」として扱われ得る
規制法は、平成28年の改正で、SNSのメッセージ送信や、相手のSNSのページへの書き込みを「電子メールの送信等」に含めました(同法2条2項)。あなたの投稿へのコメントやリプライは、これに当たる可能性があります。そのうえで、拒まれたにもかかわらず連続して送られている場合には、「つきまとい等」に当たり得ます(同法2条1項5号)。拒絶は言葉ではっきり伝えた場合に限らず、ブロックなどの行動から読み取れる場合や、警察を通じて相手に伝えてもらった場合も含まれると解されています。
「いいね」だけの場合は、態様や経緯を踏まえた判断になる
「いいね」は文章を伴わない操作であるため、それだけで直ちに「電子メールの送信等」として扱われるとは言い切れません。どこまで含まれるかは、行為の態様や前後の経緯を踏まえて判断されると考えられます。
もっとも、「いいね」の付き方によっては、別の類型として検討されることがあります。たとえば、投稿の直後に毎回必ず反応がある、外出先や自宅周辺が写った投稿にだけ反応がある、何年も前の投稿にまとめて反応が付くといった場合、「あなたの行動をいつも見ている」と伝わる形になっていることがあります。規制法は、行動を監視していると思わせる事項を告げたり、知り得る状態に置いたりする行為を「つきまとい等」の一つとしています(同法2条1項2号)。「いいね」に添えて「今日もあの店にいたね」といったコメントが付いている場合は、この類型に当たるかが検討されやすくなります。
警告や禁止命令の後は、「いいね」も軽く扱われない
すでに警察の警告や公安委員会の禁止命令が出ている相手の場合は、事情が変わります。2026年4月には、禁止命令を受けていた男性が、面識のある女性の投稿動画に「いいね」を連続して送ったとして、ストーカー規制法違反の疑いで逮捕されたと報じられました。同年10月にも、禁止命令中に知人女性へSNSのフォローリクエストを送ったとして逮捕された事例が報道されています。いずれも捜査段階の報道であり、最終的な判断が示されたものではありませんが、禁止命令の後は、直接の接触だけでなくSNS上の小さな反応も問題として扱われることがあるという点は、被害を受けている方にとって知っておく意味があります。警告の後も接触が続く場合の進め方は【ストーカートラブル】警告が出たのに接触が続いている|禁止命令への切り替えで取り上げています。
規制法の対象になりやすい場面・なりにくい場面
ここまでの点を典型的な場面に当てはめると、おおむね次のように整理できます。
| 場面 | 規制法との関係の目安 |
|---|---|
| 元交際相手が、別れた後も投稿のたびに「いいね」やコメントを続け、ブロック後は別のアカウントで現れる | 拒絶後の連続した送信等として検討されやすい |
| 交際を断った相手が、行動を把握しているかのような反応やコメントを繰り返す | 監視していると思わせる行為として検討されやすい |
| 警告や禁止命令が出た後も「いいね」やフォローリクエストが届く | 違反として扱われる可能性がある |
| 面識のない人が、発言への反感から批判的なコメントを繰り返す | 好意や恨みの要件を欠き、規制法の外になりやすい |
| まだ何も伝えていない相手から、好意的な「いいね」が続いている | 現時点では規制法の対象になりにくい |
最後の場面のように、相手に何も伝えていない段階では、規制法の対象にはなりにくいと考えられます。ただ、それは我慢するしかないという意味ではありません。不安を感じているのであれば、ブロックやコメント制限で受け付けない意思を示すことや、警察に相談して状況を伝えておくことが、その後の手続の土台になります。
また、反感や妬みから書き込みを続けている相手については、東京都の迷惑防止条例が悪意の感情による一定のつきまとい行為を禁じている規定(同条例5条の2)を検討できる場合があります。書き込みの内容が名誉を傷つけるものや脅迫に当たるものであれば、刑法上の罪や民事上の請求も選択肢になります。
ブロックする前に残しておきたい記録
「いいね」は、ブロックしたり相手がアカウントを消したりすると、誰が押したのかを後から確認できなくなることがあります。不安を感じた時点で、次のものを保存しておくことをおすすめします。
- 通知画面や「いいね」をしたアカウント一覧のスクリーンショット(日時と相手のアカウント名・ユーザーIDが写るもの)。
- 相手のアカウントのプロフィール画面(名前を変えられた場合に同じ相手だと示すためのもの)。
- 日付ごとの反応の回数と、投稿から反応までの時間をまとめた一覧。
- 反応が集中している投稿の内容(外出先が分かる投稿、古い投稿など)。
- ブロックやコメント制限をした日時と、拒絶を伝えた場合はその文面。
- 別のアカウントから反応がある場合に、同じ人物と考える理由(文体、時間帯、反応の傾向など)。
相手に気付かれにくい形で距離を置きたい場合は、ブロックの前に、ミュートや公開範囲の変更から始める方法もあります。相手を刺激しないための関係の断ち方はストーカーを刺激せず関係を断つ|安全な接触遮断と証拠の残し方で詳しく解説しています。
相談先の選び方
SNS上の反応について、警察に相談してよいのか迷う方は少なくありません。規制法の対象になるかどうかは、ご自身で結論を出してから相談する必要はなく、迷っている段階で状況を伝えることにも意味があります。
警察に相談する
規制法の対象になり得る場合、警察は相手に警告を出すことができます。令和7年の改正により、被害を受けている方からの申出がなくても、警察が職権で警告できる仕組みも設けられました。身の危険を感じる場合は110番、緊急でない相談は警察相談専用電話(#9110)を利用できます。相談しても警告に至らなかった場合の次の手立ては【ストーカートラブル】警察に相談したのに警告が出ない|次に取れる手段をご覧ください。
弁護士に相談する
弁護士は、規制法の対象になるかの見通しを立てたうえで、警察への相談の準備や同行、プラットフォームへの削除の申出、相手が匿名の場合の発信者情報の開示、相手とのやり取りの窓口などを、状況に応じて組み合わせることができます。相手が誰か分からないアカウントの場合の考え方は【ストーカートラブル】匿名アカウントにしつこく絡まれたら、ストーカーとして相談できる?で、代理人を立てる意味は【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味で取り上げています。
よくあるご質問
好意的な「いいね」でも、ストーカーになることはありますか。
反応が好意的かどうかではなく、相手の動機や、拒まれた後も続いているか、行動を見ていると思わせる形になっているかが問われます。好意からの反応であっても、拒絶した後に連続して続く場合や、監視を感じさせる形で繰り返される場合には、規制法の対象として検討される可能性があります。
自分が毎日「いいね」をしてしまっているのですが、問題になりますか。
相手から拒絶されていない段階で、ふつうに投稿へ反応しているだけであれば、直ちに問題になるとは考えにくいところです。ただし、ブロックされた後に別のアカウントで反応を続ける、相手の居場所に触れるコメントを付けるといった行為は、規制法の対象として検討されるおそれがあります。相手の反応が変わったと感じたら、いったん距離を置くことが大切です。ご自身の行動が気になる方は【男女トラブル】相手のSNSを見続けてしまう|自分の行動が問題になる場面も参考にしてください。
一度ブロックしたら、もう相談はできませんか。
ブロックした後でも相談できます。ブロック後に別のアカウントから反応が続いている場合は、拒絶を知りながら続けていることを示す事情として、むしろ重要な意味を持つことがあります。ブロック前の記録が残っていなくても、残っている範囲で状況を整理しておきましょう。
まとめ
- 毎日のような「いいね」やコメントがストーカー規制法の対象になるかは、回数だけでなく、相手の動機、拒絶の有無、行為の態様から判断されます。
- コメントは「電子メールの送信等」に当たり得るもので、拒まれた後に連続して送られれば「つきまとい等」として検討されます。
- 「いいね」だけの場合は判断が分かれ得ますが、行動を見ていると思わせる付き方であれば、監視を思わせる行為として検討される余地があります。
- 警告や禁止命令の後は、「いいね」やフォローリクエストも違反として扱われる可能性があります。
- ブロックする前に、日時とアカウントが分かる形で記録を残しておくことが、その後の手続の土台になります。
SNSでの反応は一つひとつが小さいぶん、周囲に打ち明けても「気にしすぎ」と受け取られがちです。それでも、不安を感じているという事実そのものが、状況を整理するきっかけになります。毎日のように続く反応に悩んでいる方は、記録がそろっていない段階でもかまいませんので、早めにご相談ください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


