【ストーカートラブル】加害者が既婚者の場合、相手の配偶者に知らせてもいい?

若井亮

若井亮

テーマ:ストーカートラブル

つきまといや執拗な連絡を続けてくる相手が既婚者だと分かっているとき、「奥さん(夫)に知らせれば止まるのではないか」と考える方は少なくありません。家庭を大切にしている人であれば、配偶者に知られることを避けるために行動を改めるかもしれない、という期待は自然なものです。一方で、知らせ方や時期を誤ると、ご自身が責任を問われたり、相手の行動がかえって激しくなったりするおそれもあります。この記事では、加害者が既婚者である場合に相手の配偶者へ知らせることの法的な位置づけと、知らせる前に検討したい手段を整理します。

この記事は2026年10月時点の法令・運用をもとに、一般的な考え方をまとめたものです。個別の事情によって結論が変わることがあります。


配偶者に知らせること自体は、直ちに違法とまではいえない

 相手の配偶者に事実を伝える行為が、それだけで直ちに犯罪や不法行為になるわけではありません。被害を受けている方が、加害者の家族に事情を説明して協力を求めることは、状況によっては理解されやすい行動です。
 ただし、何を、誰に、どのような方法で伝えるかによって、評価は大きく変わります。伝える内容に不確かな推測が混じっていたり、配偶者以外の人にも広がる形で伝えたり、交換条件のように持ち出したりすると、法的な問題が生じることがあります。また、相手との間に交際関係があった場合には、別の観点からの注意も必要です。

加害者が既婚者であるストーカー被害の主な場面

 相談の場面として多いのは、次のようなケースです。

  • 既婚者との交際関係を終えた後に、相手が別れを受け入れずに連絡や待ち伏せを続けている。
  • 独身だと聞いて交際していたところ、既婚者だと分かって別れを告げたら、つきまといが始まった。
  • 職場の既婚の上司や取引先から、交際を断った後も執拗に誘いや連絡が続いている。
  • 交際関係はないが、既婚者である知人から一方的な好意を寄せられ、自宅周辺に現れるようになった。


 どの場面にあたるかによって、配偶者に知らせることのリスクの大きさは変わります。特に、過去に交際関係があった場合は、知らせることでご自身の側の事情も配偶者に伝わる点を意識しておく必要があります。

配偶者に知らせる前に考えておきたい法的なリスク


名誉毀損やプライバシー侵害として問題にされる可能性

 刑法上の名誉毀損罪は、「公然と」事実を示して人の社会的な評価を下げた場合に成立します。配偶者一人だけに伝える場合は、公然性が否定されやすいとされています。ただし、判例上、伝えた相手が特定の少数であっても、そこから周囲に広がるおそれがあると判断されると、公然性が認められることがあります。
 また、刑事上の罪にあたらない場合でも、民事上は、私生活上の事情を本人の意思に反して第三者に伝えたことがプライバシーの侵害にあたるとして、損害賠償を求められる可能性は残ります。配偶者だけでなく、相手の親族や職場、共通の知人にまで伝えると、このリスクは高まります。

「やめないなら配偶者に知らせる」という伝え方の危うさ

 加害者に対して「これ以上続けるなら奥さんに言う」と伝えることも考えられますが、表現によっては注意が必要です。刑法上、相手の名誉に害を加える旨を告げて脅すことは脅迫罪に、それによって義務のないことをさせると強要罪にあたる可能性があります。つきまといをやめるよう求めること自体は正当な要求ですが、金銭の支払いや謝罪の方法などを条件にすると、恐喝や強要を疑われるおそれが生じます。
 相手が弁護士に相談した場合、こうしたやり取りの記録を材料に「被害者側から脅されている」と主張されることもあります。感情的になっている時期のメッセージは、後から読み返されることを前提に書くことが大切です。

交際関係があった場合は、自分が請求を受ける側になることも

 相手と交際関係があり、その相手が既婚者だと知っていた、または注意すれば知り得たという場合、配偶者に事情を伝えることは、ご自身の不貞関係を明らかにすることにもつながります。その結果、相手の配偶者から、ご自身に対して慰謝料を請求される可能性があります。
 一方で、独身だと偽られていて既婚であることを知り得なかった場合には、責任が否定される方向で考えられることもあります。どちらにあたるかは、交際中のやり取りなどから判断されるため、知らせる前に整理しておくことが望ましいといえます。

【不貞慰謝料】既婚と知らなかった|故意・過失が否定される場合

法的なリスク以外に起こりうること

 法的な責任とは別に、配偶者に知らせたことで状況が動く場合があります。必ずしも好転するとは限らない点に注意が必要です。

  • 家庭内で問題が明らかになったことに相手が逆上し、接触がかえって激しくなる。
  • 配偶者が事実を受け入れず、被害を訴えた側を責める連絡をしてくる。
  • 加害者が配偶者に対して事実と異なる説明をし、自分が被害者であるかのように振る舞う。
  • 配偶者が新たな連絡の窓口となり、対応しなければならない相手が増える。


 配偶者が協力的で、家庭内で相手を止めてくれるという展開もありえますが、それは配偶者の考え方や夫婦の関係によるところが大きく、こちらで見通すことは困難です。

配偶者に知らせる前に検討したい手段

 加害者を止めることが目的であれば、配偶者に頼るよりも先に、加害者本人に直接働きかける手段を検討するのが一般的です。主な手段を比べると、次のようになります。

手段主な内容留意点
警察への相談ストーカー規制法に基づく警告や禁止命令、刑事事件としての対応法律の要件を満たすかどうかで、取れる措置が変わる
弁護士からの通知代理人として接触をやめるよう求め、以後の窓口を弁護士に一本化する相手が応じない場合は、警察や裁判所の手続と組み合わせる
合意書の作成接触禁止や違約金などを書面で取り決める相手が交渉に応じることが前提となる
配偶者への連絡家庭内での働きかけに期待する上で述べた法的なリスクや状況の悪化に注意が必要


警察への相談と警告・禁止命令

 つきまといや待ち伏せ、拒まれているのに連絡を繰り返す行為などは、ストーカー規制法の規制対象となることがあります。警察に相談すると、行為の内容に応じて、加害者への警告や、公安委員会による禁止命令といった措置が検討されます。2025年の法改正により、被害者からの申出がなくても警察の判断で警告を行える仕組みも設けられました。
 これらの措置は加害者本人に向けたものであり、配偶者に事情を知らせることを目的とした制度ではありません。相談の段階では、これまでの連絡の履歴や、現れた日時・場所の記録を持参すると、状況が伝わりやすくなります。

【ストーカートラブル】警察に相談したのに警告が出ない|次に取れる手段

【ストーカートラブル】警告が出たのに接触が続いている|禁止命令への切り替え

弁護士を通じた通知と合意書

 弁護士に依頼すると、代理人として加害者に接触をやめるよう求め、以後の連絡をすべて弁護士が受ける形をとることができます。ご本人が加害者と直接やり取りしなくてよくなるため、感情的な応酬を避けやすくなります。
 加害者が既婚者の場合、通知を自宅に送るか、勤務先や本人限定の方法で届けるかによって、配偶者に知られるかどうかが変わります。届け方そのものが相手の反応に影響するため、どの方法をとるかは、相手の性格やこれまでの経過を踏まえて弁護士と相談しながら決めることになります。相手が交渉に応じる場合は、接触禁止や違約金を定めた合意書を作成し、約束を書面に残すこともあります。

【ストーカートラブル】示談に入れる条件|接触禁止・転居・違約金

それでも配偶者に関わってもらう必要がある場合

 本人への働きかけでは止まらない、配偶者がすでに事情を知っている、といった事情から、配偶者に関わってもらうことを検討する場面もあります。その場合でも、ご自身で直接連絡するより、弁護士を通じて、伝える内容を必要な事実に絞り、要求の内容を「接触をやめさせてほしい」という点に限ることで、トラブルが広がるリスクを抑えやすくなります。

【ストーカートラブル】相手の家族に止めてもらうよう頼めるか|頼む前に確かめることと、警察・弁護士を通す道

相手の配偶者から先に連絡が来た場合

 加害者の行動がきっかけで、相手の配偶者の側から連絡が来ることもあります。配偶者が「夫(妻)に近づかないでほしい」「会って話を聞きたい」と求めてくる場合、その場で事情を説明したくなるかもしれませんが、すぐに応じる必要はありません。
 つきまといの被害を受けていることを伝える場合も、記録に基づく事実にとどめ、相手を非難する表現や推測を交えないようにすることが大切です。面会を求められたときは、ひとりで応じず、弁護士の同席や弁護士を窓口にすることを検討してください。

【男女トラブル】不倫相手の配偶者に会いたいと言われた|同席の求めへの対応

まとめ


  • 相手の配偶者に事実を伝えること自体は、直ちに違法となるわけではありません。
  • 伝える範囲が広がったり、交換条件のように伝えたりすると、名誉毀損やプライバシー侵害、脅迫や強要として問題にされるおそれがあります。
  • 交際関係があった場合は、配偶者から慰謝料を請求される可能性も考えておく必要があります。
  • 加害者を止めることが目的であれば、警察への相談や弁護士からの通知など、本人に向けた手段を先に検討するのが一般的です。
  • 配偶者に関わってもらう場合も、弁護士を通じて伝える内容を絞ることで、リスクを抑えやすくなります。


 加害者が既婚者であるという事情は、相手を止めるための材料に見える一方で、扱い方によってはご自身の立場を不利にすることもあります。配偶者に知らせるかどうかを決める前に、これまでの経緯と手元の記録を整理し、ほかに取れる手段がないかを確かめておくことをおすすめします。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

風俗・男女トラブルの不当要求から依頼者を守る弁護士

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ東京
  3. 東京の法律関連
  4. 東京の男女・夫婦問題
  5. 若井亮
  6. コラム一覧
  7. 【ストーカートラブル】加害者が既婚者の場合、相手の配偶者に知らせてもいい?

若井亮プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼