【ストーカートラブル】警察に「証拠が足りない」と言われたら、何を集めればいい?

若井亮

若井亮

テーマ:ストーカートラブル

警察にストーカー被害を相談したものの、「今の段階では証拠が足りない」「何かあったらまた来てください」と言われて帰ってきた、というご相談は少なくありません。相手の行動は止まっていないのに、何をどこまで集めればよいのか分からないまま、不安だけが続く状態になりがちです。

 「証拠が足りない」という言葉には、いくつかの意味が含まれていることがあります。この記事では、警察が何を確かめようとしているのかを整理したうえで、集めておきたい記録の種類と残し方、集めるときに避けたいこと、記録を持って改めて相談するときの組み立てを解説します。

この記事は、2025年12月30日に施行された改正ストーカー規制法(職権による警告の創設、紛失防止タグの悪用規制など)を反映しています。身の危険が差し迫っている場合は、証拠の有無にかかわらず110番通報を優先してください。


「証拠が足りない」は、どの手続の話なのか

 警察がストーカー事案で取る対応には段階があり、段階ごとに求められる資料の重さが異なります。相談の時点で「足りない」と言われた場合でも、それが警察の対応全般についての話なのか、特定の措置についての話なのかによって、次に集めるべきものは変わります。

警察の対応主な内容確かめたいことの例
防犯指導・援助自衛策の助言、相手への指導など被害の状況と、どの程度の不安を感じているか
警告相手に対し、行為をやめるよう求める措置つきまとい等があり、繰り返されるおそれがあるか
禁止命令公安委員会が行為を禁じ、違反すると処罰の対象になる措置つきまとい等が繰り返され、さらに繰り返すおそれがあるか
検挙ストーカー行為罪などで捜査し、刑事手続に進める犯罪として立証できるだけの事実と、行為者の特定


 防犯指導や援助は、記録が十分にそろっていなくても受けられることがあります。一方で、禁止命令や検挙のように相手の権利を制限する手続に進むほど、事実を裏づける資料が求められやすくなります。「証拠が足りない」と言われたときは、まずどの段階の話なのかを確かめることが出発点になります。

何が足りないのかを、その場で聞き返す

 警察の担当者に「どのような記録があれば、次の対応を検討してもらえますか」と具体的に尋ねてみることも一つの方法です。回数が足りないのか、相手が誰か確定できないのか、こちらが拒んでいることが伝わっていないのか、不安の程度が伝わっていないのかによって、集める記録は異なります。聞いた内容は、相談日・担当部署・担当者名とあわせてメモしておくと、次の相談のときに役立ちます。

ストーカー規制法で確かめられる点

 ストーカー規制法の対象になるかどうかは、主に次の点から判断されます。

  • 相手が誰か(行為者の特定)。
  • 好意の感情、またはそれが満たされなかったことへの恨みの感情を満たす目的があるか。
  • 待ち伏せ・押し掛け・連続した連絡など、法律が定める「つきまとい等」の類型にあたるか。
  • 同じ相手に対して、行為が繰り返されているか。
  • 一部の類型では、身体の安全や住居の平穏、名誉、行動の自由が著しく害される不安を覚えさせる方法で行われたか。


 好意や恨みの目的が読み取りにくい場合でも、行為の内容によっては脅迫罪、器物損壊罪、住居侵入罪、各都道府県の迷惑防止条例など、別の法令で扱われることがあります。記録を集める目的は「ストーカーと認めてもらうこと」だけではなく、起きている事実を正確に伝えることにあると考えておくと、集める範囲を判断しやすくなります。1回だけの連絡がどう扱われるかについては、連絡は1回だけだった|つきまとい等とストーカー行為の違いで解説しています。

集めておきたい記録と残し方

 記録は、一つひとつの行為の証明だけでなく、行為が「繰り返されていること」を示す点に大きな意味があります。日頃から少しずつ残しておくことで、後からまとめて説明しやすくなります。

メッセージ・通話・SNSの記録

 LINEやメール、SNSのダイレクトメッセージは、日時と相手のアカウント名・IDが写る状態でスクリーンショットを保存します。前後のやり取りも含めて残しておくと、どのような流れで送られてきたのかが伝わりやすくなります。着信履歴も同様に保存し、相手をブロックする場合は、ブロックの前に記録を残しておくと安心です。端末の機種変更や初期化でデータが消えることがあるため、バックアップを別の場所に取っておくことも考えておきたいところです。非通知や無言電話が続く場合の記録については、【ストーカートラブル】無言電話・非通知の着信が続く|記録と止め方もあわせてご覧ください。

写真・動画・防犯カメラの映像

 待ち伏せやうろつきは、離れた場所から安全を確保できる範囲で撮影できれば、有力な記録になります。マンションや店舗の防犯カメラは、一定期間で上書きされる設定になっていることが多いため、気づいた時点で管理会社や店舗に保存を依頼しておくことが大切です。映像の扱いについては、【ストーカートラブル】防犯カメラの映像を証拠にする|設置と保存の注意点で詳しく解説しています。

届いた物・郵便物

 手紙や贈り物などは捨てずに現物を保管し、封筒も一緒に残します。消印や差出人の記載が、いつ・どこから送られたかを示す手がかりになることがあります。できるだけ素手で触れる回数を減らし、袋に入れて保管しておくとよいでしょう。

被害の記録ノート

 日時、場所、相手の行動、自分がどう対応したか、そのとき何を不安に感じたかを、出来事の直後に書き留めておきます。手書きのノートでもスマートフォンのメモでもかまいませんが、後から書き足すときは、書き足した日が分かるようにしておくと、記録としての信頼性を保ちやすくなります。

第三者の目撃と相談の記録

 家族や友人、職場の同僚、マンションの管理人などが相手の行動を見ている場合は、その人の名前と、見た日時・内容を控えておきます。目撃した人が一緒に警察へ行って説明してくれると、状況が伝わりやすくなることもあります。警察や自治体の窓口に相談した記録も、相談日と窓口名を残しておくことで、被害が続いてきた経過を示す材料になります。警察での相談記録を手元に取り寄せる方法は、【ストーカートラブル】警察への相談記録を手元に取り寄せる|開示請求の手順と黒塗りの読み方で解説しています。

「拒んだこと」が分かる記録

 警察に状況を理解してもらううえでは、単なる男女間の行き違いではなく、こちらがはっきり拒んでいるのに行為が続いていることが伝わるかどうかが一つの分かれ目になります。「今後は連絡しないでください」など、拒む意思を一度、記録に残る形で伝えておくと、その後の連絡やつきまといの意味合いが説明しやすくなります。

 ただし、拒絶を伝えることで相手が感情的になるおそれがある場合は、無理に自分で伝える必要はありません。そのような事情があること自体を警察に説明し、伝え方を相談することも考えられます。拒んだ後は、相手からの連絡に応じない姿勢を保つことも大切です。安全に関係を断つ方法は、ストーカーを刺激せず関係を断つ|安全な接触遮断と証拠の残し方でも取り上げています。

証拠を集めるときに避けたいこと

 証拠を集めようとするあまり、かえって危険が増したり、自分の行為が問題になったりすることがあります。次のような行動は控えることをおすすめします。

  • 証拠を得るために、相手と直接会ったり呼び出したりすること。
  • 相手のSNSやメールのアカウントに無断でログインすること。
  • 相手の自宅や勤務先に出向いて、張り込みや撮影をすること。
  • スクリーンショットや音声を、都合のよい部分だけ切り取って保存すること。
  • 相手の氏名や行為を、インターネット上に公開すること。


 他人のアカウントへの無断ログインは不正アクセス禁止法に、相手の情報の公開は名誉毀損などに問われるおそれがあります。また、切り取った記録は、後で全体を確認されたときに信用性を疑われることがあります。記録は、自分に届いたもの・自分が見聞きしたものを、そのままの形で残すことを基本にすると安全です。

記録を持って改めて相談するとき

 集めた記録は、量よりも伝わりやすさが大切です。警察の担当者が短い時間で状況をつかめるよう、整理して持参すると話が進みやすくなります。

時系列の一覧を1枚にまとめる

 いつから始まったのか、何回・どのような行為があったのか、自分がいつ拒んだのか、いま何に不安を感じているのかを、日付順の一覧にまとめます。スクリーンショットや写真には一覧の番号を振っておくと、担当者が照らし合わせやすくなります。相手の氏名・連絡先・住所・勤務先・車のナンバーなど、分かっている情報も添えておきます。相手が誰か分からない場合の進め方は、【ストーカートラブル】相手が誰か分からない|匿名のつきまといで相手をたどる方法と、たどれないときの守り方をご覧ください。

相談先と伝え方

 ストーカー被害は、住んでいる地域を管轄する警察署の生活安全課などが窓口になることが一般的です。どこに相談すればよいか分からない場合は、警察相談専用電話「#9110」につなぐと、最寄りの窓口を案内してもらえます。前回の相談で言われたことと、その後に起きたことを分けて説明すると、状況の変化が伝わりやすくなります。

2025年の改正で変わった点

 改正前は、警察が相手に警告をするには被害者からの申出が必要でしたが、2025年12月30日施行の改正により、申出がなくても警察が職権で警告できるようになりました。相手からの報復をおそれて申出をためらっている事情があれば、そのことも含めて相談してよいと考えられます。あわせて、紛失防止タグを使った位置情報の無断取得や取り付けが規制の対象に加わり、被害者の勤務先や学校も援助に努める主体として位置づけられました。

警察以外の手立ても並行して考える

 警察の対応を待つ間にも、弁護士から相手に連絡の中止を求める通知を送る、裁判所に接近禁止の仮処分を申し立てる、慰謝料を請求するといった手立てを検討できることがあります。仮処分では、警察の手続とは別に、裁判所に事実を示す資料が必要になるため、ここまでに集めた記録がそのまま役立ちます。警察で警告が出なかった場合の考え方は、【ストーカートラブル】警察に相談したのに警告が出ない|次に取れる手段、警察と裁判所の使い分けは、接近禁止を実現する2つの道|ストーカー規制法(警察)と民事保全(裁判所)の使い分けで解説しています。

よくあるご質問


記録がそろうまで、警察への相談は控えたほうがよいですか

 控える必要はありません。記録が少ない段階でも、防犯指導や援助を受けられることがありますし、早い時期に相談した記録そのものが、後で被害の経過を示す材料になります。記録を集めることと相談することは、並行して進めて差し支えありません。

相手からのメッセージを保存しておくことに問題はありますか

 自分宛てに届いたメッセージを保存することは、一般に問題になりにくいと考えられます。自分が当事者として参加している会話を録音することも、それだけで違法とされることは通常ありません。ただし、保存した内容を第三者に広めたり、インターネットに公開したりすると、別の問題が生じるおそれがあります。

以前の被害の記録が残っていない場合はどうすればよいですか

 過去の出来事は、思い出せる範囲で日付や内容をノートに書き出し、手元に残っているメッセージや通話履歴と照らし合わせて整理します。これから起きることは、出来事の直後に記録する習慣をつけることで補っていけます。以前の被害が再び始まった場合の考え方は、【ストーカートラブル】数年ぶりにつきまといが再開した|以前の記録を生かすで取り上げています。

まとめ

 警察に「証拠が足りない」と言われても、それで相談の道が閉ざされたわけではありません。どの手続について何が足りないのかを確かめ、行為が繰り返されていることと、こちらが拒んでいることが伝わる記録を、安全な方法で積み重ねていくことが次の一歩になります。記録の整理や、警察以外の手立てを含めた進め方に迷われたときは、早めに専門家に相談することもご検討ください。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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