【男女トラブル】婚約解消後に、相手の親から直接請求の連絡が来たら?

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

この記事は、婚約を解消した後に、元婚約者の親から慰謝料や費用の支払いを求める連絡を受けた方に向けて、一般的な考え方を整理したものです。実際の対応は、婚約の経緯や解消時のやり取り、残っている記録によって変わります。


婚約を解消した後、元婚約者本人ではなく、その親から電話や手紙、メッセージで「慰謝料を払ってほしい」「結婚式のために出した費用を返してほしい」と連絡が来ることがあります。本人どうしでは話がついたと思っていた場合や、本人とは連絡が途絶えている場合には、なおさら戸惑うことと思います。

 相手の親からの請求に向き合うときは、「誰が」「何を」「どのような理由で」求めているのかを一つずつ分けて考えることが出発点になります。この記事では、相手の親が求められるものと求められないものの分かれ目、連絡を受けたときに控えたい対応、返答の組み立て方、支払う場合の書面の作り方を順に整理します。

最初に分けておきたい3つの問い

 相手の親からの連絡は、怒りや悲しみが混ざった言葉で届くことが多く、何を求められているのかがはっきりしない場合があります。返事をする前に、次の3点をメモに書き出してみてください。

  1. 請求しているのは誰か(親自身なのか、元婚約者本人の請求を親が伝えているのか)。
  2. 求められているものは何か(慰謝料なのか、式場のキャンセル料や結納などの実費なのか)。
  3. 支払う理由として何が挙げられているか(婚約を不当に破棄された、費用を負担した、など)。


 この3点が分かれていないまま話し合いを始めると、慰謝料と実費が一つの金額にまとめられたり、本人が求めていない請求まで上乗せされたりして、どこまでが筋の通った請求なのかを見極めにくくなります。

婚約の当事者は本人どうし|親の立場で求められるもの・求められないもの

 婚約は、将来結婚しようという本人どうしの約束です。結納や両家の顔合わせで親が関わっていたとしても、婚約の当事者はあくまで本人であり、親は当事者ではありません。この点が、相手の親からの請求を考えるうえでの基本になります。

慰謝料を求める立場にあるのは、元婚約者本人

 婚約を正当な理由なく破棄された場合の慰謝料は、婚約を破棄されて精神的な苦痛を受けた本人が請求するものです。成人した子について親が当然に代わりを務められるわけではなく、親が本人に代わって請求するには、本人から交渉を任されていること(代理権)が必要です。

 そのため、相手の親が「娘(息子)の慰謝料として〇〇万円を払ってほしい」と言ってきた場合は、本人がその請求をしているのか、親に交渉を任せているのかを確かめることが先になります。代理権の確かめ方は、【男女トラブル】相手の家族が代わりに交渉に出てきた|代理権の有無の確かめ方で詳しく解説しています。

親が自分で負担した費用は、親自身の請求として出てくることがある

 一方で、親が自分のお金で負担したものについては、親が自分の立場で返還や負担を求めてくることがあります。たとえば次のようなものです。

  • 親が用意して渡した結納金や結納品。
  • 親が契約者として申し込んだ式場や披露宴の費用、キャンセル料。
  • 新居の改装費や、新生活のために親が購入した家具・家電。


 ただし、親が支出したからといって、その全額を求められるとは限りません。誰と誰の間で、どのような約束のもとに支出されたのか、婚約の解消についてどちらにどの程度の責任があるのかによって、負担の範囲は変わります。たとえば、相手の親が負担した新居の改装費のうち、「あなたのために付けた設備の分だけは負担してほしい」と求められるといった形で、費目を絞った請求が届くこともあります。費目ごとに「誰が出したか」「誰のためのものか」を分けて見ていくことになります。結納金の扱いについては、結婚を前提に渡したお金・結納金は返還請求できるかもあわせてご覧ください。

「家同士の約束だった」と言われたとき

 相手の親から「結婚は家同士のことだから」「うちの家も傷ついた」と言われることがあります。気持ちとしては理解できる面があっても、婚約の解消によって親が受けた精神的な苦痛が、当然に賠償の対象になるわけではありません。親自身の慰謝料という形で金額が示された場合は、その根拠を慎重に確かめる必要があります。

支払う理由があるかは、解消の経緯で分かれる

 請求の主体を確かめたうえで、次に考えるのは、そもそも支払う理由があるかどうかです。婚約の解消で慰謝料などの責任が問題になるのは、主に、正当な理由なく一方的に婚約を破棄した場合です。経緯ごとの目安は次の通りです。

解消の経緯慰謝料の考え方確認しておきたい記録
二人で話し合って解消した(合意解消)どちらかが一方的に破棄したわけではないため、慰謝料の問題は生じにくいと考えられます解消に合意したことが分かるメッセージなど
自分から解消を申し出た正当な理由があれば、責任を負わないこともあります解消に至った理由と、それを示すやり取り
相手から解消を申し出た解消の原因が自分にあると言える事情がない限り、支払う側になる場面は限られます相手からの申し出の内容
解消のときに条件を取り決めた取り決めで終わっている範囲は、改めて求められても応じなくてよいことがあります取り決めの文面と、清算の範囲


 自分から婚約の解消を申し出た場合に、どのような事情が「正当な理由」と考えられるかは、結婚をやめたい|婚約の解消で慰謝料を払わずに済む「正当な理由」とはで取り上げています。解消のときに金額や条件を取り決めていた場合は、【男女トラブル】一度は合意したのに相手が追加の要求をしてきた|前回の合意で終わっている範囲の見分け方も参考になります。

連絡を受けたときに控えたい対応

 相手の親から突然連絡が来ると、早く終わらせたい気持ちや申し訳なさから、その場で応じてしまいがちです。後の話し合いで不利になりやすいのは、次のような対応です。

  • 電話口や対面で、金額や支払いを約束すること。
  • 相手の親が用意した書面に、内容をよく確かめずに署名すること。
  • 相手の実家などに一人で出向き、複数の家族に囲まれた中で話をすること。
  • 謝罪の言葉と一緒に、事実と違う内容まで認める発言をすること。
  • 連絡をすべて無視し、何を求められているのか分からないままにしておくこと。


 謝罪の気持ちを伝えること自体が悪いわけではありません。ただ、「すべて自分が悪かった」といった言い方が、後になって責任を認めた証拠として持ち出されることもあるため、気持ちの表明と、事実関係の説明や支払いの話は分けておくのが無難です。

返答の組み立て方


やり取りを記録し、返答は文章でまとめる

 電話で話した場合は、日時・話した相手・言われた内容をその日のうちにメモに残します。メッセージや手紙はそのまま保存してください。こちらからの返答は、電話で即答するよりも、内容を整理してから文章で送るほうが、言った・言わないの食い違いを避けやすくなります。

請求の主体と内訳の説明を求める

 最初の返答で、支払うかどうかまで答える必要はありません。「どなたの請求として、何の費用をいくら求めているのか、根拠となる資料とあわせて示してほしい」と伝えれば足ります。慰謝料と実費が混ざっている場合は、それぞれを分けて示してもらうようにします。

窓口を本人か代理人に一本化してもらう

 元婚約者本人の請求であれば、本人から直接、または本人が依頼した弁護士から連絡してもらうよう伝える方法があります。親と本人の双方から別々に連絡が来る状態が続くと、どの話がどこまで進んでいるのか分からなくなるためです。親自身の請求もある場合は、本人の請求とは分けて扱うよう伝えておくと、整理がしやすくなります。

勤務先や家族への連絡をほのめかされたとき

 話し合いがこじれると、「払わないなら会社に伝える」「あなたの親にも全部話す」と言われることがあります。支払いを求めること自体は正当な行為であっても、勤務先への通知などをちらつかせて支払いを迫るやり方は、内容や程度によっては脅迫罪や強要罪、恐喝罪が問題になりうる行為です。

 こうした言葉を言われたときは、その場で応じたり言い返したりせず、言われた内容をそのまま記録してください。実際に勤務先へ連絡が入るおそれがある場合や、自宅への訪問が続く場合には、早めに弁護士へ相談し、窓口を移すことを検討してよい段階です。

支払うことになった場合の書面の作り方

 話し合いの結果、一定の金額を支払うことになった場合は、必ず書面に残します。相手の親が関わっている事案では、次の点に注意が必要です。

  • 合意の当事者に、元婚約者本人と、請求をしてきた親の双方を入れること。
  • 支払う金額が何の費用に対するものかを書き分けること。
  • 支払先の名義と口座を、本人と親のどちらにするかを明記すること。
  • 本人との関係でも親との関係でも、ほかに請求がないことを確認する清算条項を入れること。
  • 今後の連絡方法や、直接の接触を控える約束を入れること。


 本人とだけ合意書を交わしても、親が自分で負担した費用として別に請求してくる余地が残ることがあります。反対に、親とだけ話をつけても、本人の慰謝料の問題が残ることがあります。清算条項の働きについては、清算条項の意味|後から追加請求されないためにで解説しています。

弁護士に依頼した場合にできること

 弁護士に依頼すると、相手の親や元婚約者本人とのやり取りは弁護士が引き受けます。ご本人が相手の家族と直接話す必要がなくなり、突然の連絡にその場で答えなければならない負担もなくなります。

 弁護士は、請求の主体と内訳を確かめ、支払う理由がある費目とそうでない費目を分けたうえで、必要に応じて金額の交渉を行います。支払う結論になった場合も、本人と親の双方を当事者とする書面を整え、後から別の請求が出てこないよう手当てします。依頼後の流れは、【男女トラブル】別れ話を弁護士に任せるときの流れ|本人と会わずに関係を終えるもご覧ください。当事務所の対応内容は、【男女トラブル】弁護士が交際関係の解消時のトラブルに介入するサービス|金銭の清算・画像の削除・ストーカー・脅迫まで全国対応にまとめています。

よくあるご質問


相手の親からの連絡に、返事をしなければなりませんか

 すぐに返答しなければならない法律上の義務があるわけではありません。ただ、何も答えないままでいると、相手の側で請求額が膨らんだり、訴訟や勤務先への連絡など別の行動に移ったりすることもあります。すぐに中身に答えられない場合でも、「内容を確認したうえで、改めて文章でお返事します」と伝えておく方法があります。

相手の親から「あなたの親にも責任がある」と言われました

 婚約の解消について親の責任が問われるのは、親が結婚に反対したというだけでなく、積極的に婚約を壊すような関わり方をした場合など、限られた場面です。婚約者の母親が強く反対して破談に至った事案で、母親にも賠償責任を認めた裁判例(徳島地裁昭和57年6月21日判決)はありますが、これは親の関与の仕方が重く見られたものです。ご自身の親が名指しされた場合も、どのような関わり方を指摘されているのかを確かめるところから始めます。

本人とは「もうお金の話はしない」と約束していました

 本人との間でそのような約束をしていた場合、本人の慰謝料については、その約束で終わっていると考えられることがあります。ただし、口約束の場合は内容を示しにくく、親が自分で負担した費用までは約束の範囲に含まれていない可能性もあります。約束の内容が分かるメッセージなどを手元に集めておいてください。口約束を書面にする方法は、【男女トラブル】口約束で別れの条件を決めてしまった|後から書面にする方法で解説しています。

まとめ

 婚約解消後の相手の親からの請求は、本人の請求と親自身の請求、慰謝料と実費が入り混じって届くことが多く、一人で整理しようとすると、どこまで応じるべきか判断に迷いやすい場面です。誰が何を求めているのかを分けて確かめるところから、落ち着いて進めていきましょう。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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