【男女トラブル】元恋人が連絡先を変えていなくなった、貸したお金はどうなる?
本記事は、婚約や内縁(事実婚)に至っていない交際中の二人が交わした約束を前提に解説しています。夫婦の間の約束や、婚約・内縁が成立している場合は、考え方が異なる部分があります。
交際中に「浮気をしたら罰金100万円」「浮気が分かったら慰謝料として払う」といった約束を交わすことは、珍しくありません。その場の勢いで決めたものもあれば、相手の浮気が一度発覚した後に、再発を防ぐ目的で書面にしたものもあるでしょう。
では、こうした約束は法的に有効なのでしょうか。結論からいえば、交際中の約束だからといって直ちに無効になるわけではありませんが、決めた金額がそのまま認められるとも限りません。金額の大きさ、約束が交わされた経緯、何をしたら「浮気」にあたるのかの決め方などによって、評価は変わります。
この記事では、約束をした側・された側の双方に向けて、有効かどうかを分けるポイントと、請求を受けたときや書面に残したいときに確かめておきたいことを整理します。
「浮気したら罰金」という約束は、法的にはどう扱われるのか
まず、「罰金」という言葉の位置づけから確認しておきます。
「罰金」は国が科す刑罰の名前
法律上の罰金は、刑事裁判を経て国が科す刑罰の一つです。私人同士の約束で相手に刑罰を科すことはできません。そのため、交際中の「罰金」の約束は、刑罰としてではなく、約束に違反したときに支払う違約金の取り決めとして読まれることになります。
民法420条は、当事者があらかじめ損害賠償の額を決めておくことを認めており、違約金は原則としてこの損害賠償額の予定と推定されます(民法420条3項)。言葉が「罰金」でも「ペナルティ」でも、法的には「浮気という違反があったときに支払う金額を前もって決めた合意」として検討されると考えてよいでしょう。
交際中の約束も、合意であることには変わりない
契約は、法律で禁じられたものや社会的に許されない内容でない限り、当事者が自由に決めることができます。恋人同士の約束であっても、二人が真剣に合意したのであれば、約束としての効力が認められる余地はあります。
ただし、どのような内容でも合意すれば有効になるわけではありません。以下で見るように、いくつかの点で効力が否定されたり、金額が減らされたりする可能性があります。
交際関係ならではの前提|浮気そのものは原則として違法ではない
夫婦であれば、配偶者以外の人と性的な関係を持つことは不貞行為として、慰謝料の対象になり得ます。一方で、婚約や内縁に至っていない交際関係では、誰とどのように付き合うかは原則として当事者の自由とされており、浮気をされたこと自体を理由に慰謝料を請求するのは難しいのが一般的です。
この点が、交際中の「罰金」の約束を考えるうえでの出発点になります。約束がなければ請求が難しい場面で、約束によって支払義務を生じさせることになるため、その約束が本当に合意されたものか、金額が相当かといった点が、より慎重に見られる傾向にあると考えられます。
交際関係で慰謝料が認められるかどうかについては、二股・浮気をされた恋人|交際関係で慰謝料は取れるのかでも解説しています。
約束が有効かどうかを分ける4つのポイント
交際中の「浮気したら罰金」という約束について、効力を考えるときに確認されやすいのは次の4点です。
金額が常識的な範囲か
民法90条は、公の秩序や善良の風俗に反する法律行為を無効としています。違約金があまりに高額な場合、この公序良俗に反するとして、相当な額を超える部分が無効とされることがあります。
夫婦の不貞をめぐる場面でも、不倫相手との間で接触禁止に違反した場合の違約金を1000万円とした合意について、150万円を超える部分を無効と判断した裁判例があります(東京地裁平成25年12月4日判決)。法律上の保護がより強い夫婦の場面でもこのように判断されることがある以上、交際関係で数百万円、数千万円といった金額を定めた約束は、そのまま認められない可能性が高いと考えておくのが現実的です。
また、相手の収入や資産からみて到底支払えない金額であれば、本気で支払うつもりの約束だったのか、という点でも疑問が生じます。
本気で交わした約束か
冗談まじりの会話や、口げんかの最中の売り言葉に買い言葉で出た「浮気したら100万円ね」という言葉は、そもそも法的な約束として成立しているかが問題になります。
また、本心ではないと分かったうえでした意思表示について、相手もそれが本心でないと知り、または知ることができた場合は無効とされます(民法93条1項ただし書)。口約束しかない場合は、約束の存在や内容を証明すること自体が難しい点にも注意が必要です。
何をしたら「浮気」になるのかが決まっているか
「浮気」の範囲は人によって大きく異なります。異性と二人で食事をすること、連絡先を交換すること、性的な関係を持つこと、どこからを浮気と考えるかは、二人の間でも食い違うことがあります。
約束の中で違反となる行為が具体的に決まっていなければ、相手の行動が約束違反にあたるかどうかで争いになり、請求が難しくなります。違反の事実を示す記録がない場合も同様です。
自由な意思で合意したか
浮気が発覚した直後に長時間問い詰められて書いた、「書かなければ別れる」「家族や職場に話す」と言われて署名した、といった経緯がある場合、合意が自由な意思に基づくものだったかが問題になります。強迫による意思表示は取り消すことができます(民法96条1項)。
強く迫られて書いた書面への対応は、【男女トラブル】別れ際に書いた誓約書を撤回したい|強く迫られて書いた書面で詳しく扱っています。
金額以外の部分が問題になる約束もある
「浮気したら罰金」の約束には、金額とは別に、内容そのものが問題になりやすいものがあります。たとえば次のような約束です。
- 別れを切り出したら支払う、という交際の終了そのものに金銭を結びつける約束。
- 異性との連絡を一切禁止する、スマートフォンを常に見せるといった、相手の私生活を広く縛る約束。
- 「1回につき〇万円」として、違反の回数に応じて金額が際限なく積み上がる約束。
- 退職や転居など、相手の生活の基盤に関わる行動を求める約束。
交際を続けるか終わらせるかは本来それぞれが自由に決められることであり、別れること自体に金銭的な負担を課す約束は、その自由を不当に制約するものとして効力が問題になる可能性があります。また、回数ごとに金額が加算される定め方は、合計が高額になりやすく、公序良俗の観点から減額や無効の対象になり得ます。
場面別|約束をめぐる考え方の目安
よくある場面ごとに、考え方の目安をまとめると次のとおりです。いずれも個別の事情によって結論は変わります。
| 場面 | 考え方の目安 |
|---|---|
| 冗談まじりの口約束だけがある | 約束として成立しているか、内容を証明できるかの両面で請求は難しいことが多い |
| 二人で署名した書面があり、金額も常識的 | 約束としての効力が認められる余地がある。違反の事実を示せるかが次の焦点になる |
| 書面はあるが、金額が収入に比べて極端に高い | 相当な額を超える部分が公序良俗に反し無効とされる可能性がある |
| 問い詰められて署名した書面がある | 強迫による取消しや、合意の有無が問題になり得る |
| 別れたら支払うという約束がある | 交際を終える自由を制約するものとして、効力が問題になる可能性がある |
「罰金を払え」と求められた側が確かめたいこと
交際相手や元交際相手から、約束を理由に支払いを求められた場合は、すぐに応じる前に次の点を確認しておくと整理しやすくなります。
- 約束が書面になっているか、口約束だけか。
- 書面がある場合、違反となる行為と金額がどう書かれているか。
- 相手が主張している行為が、約束した「浮気」にあたるといえるか。
- 金額が自分の収入や交際の実情からみて相当といえるか。
- 署名したときの状況(時間、場所、言われたこと)。
一度支払ったお金を後から取り戻すのは、簡単ではありません。また、話し合いの場で新たに借用書や誓約書への署名を求められることもありますが、内容を確認しないまま署名すると、後の交渉で不利な材料になるおそれがあります。
支払わなければ勤務先や家族に知らせる、といった告げ方で金銭を求められている場合は、約束の有効性とは別に、要求の方法そのものが問題になることがあります。一人で対応を続けることに不安がある場合は、弁護士に窓口を任せることも選択肢の一つです。
約束を書面に残したい側が知っておきたいこと
相手の浮気が一度発覚し、関係を続けるにあたって約束を形にしておきたい、という方もいるでしょう。その場合は、相手に心理的な抑止を働かせることと、後で実際に請求できる内容にしておくことは別の問題だと意識しておくことが大切です。
金額は常識的な範囲にとどめ、違反となる行為はできるだけ具体的に書き、双方が内容を理解したうえで署名することが基本になります。相手の私生活を広く縛る条項を盛り込むと、かえって約束全体の効力が争われるきっかけになりかねません。
なお、婚約や内縁に至っていない交際関係では、浮気について金銭を支払う内容の公正証書の作成が難しい場合もあります。交際相手と交わす書面の効力全般については、【男女トラブル】交際相手との間で作った書面|『誓約書』『覚書』の効力もあわせてご覧ください。
よくあるご質問
LINEのやり取りだけでも約束として認められますか
LINEなどのメッセージも、約束の内容や合意の経緯を示す記録になり得ます。ただし、冗談として受け取れる文面だったり、何をしたら違反になるのかがはっきりしなかったりする場合は、法的な約束として扱うのは難しいことがあります。
相手が浮気を認めていれば、約束した金額をそのまま払う必要がありますか
浮気の事実を認めていても、約束した金額が相当かどうかは別の問題です。金額が高すぎる場合は、相当な額を超える部分が無効とされる可能性があります。支払う前に、約束の内容と金額の根拠を確認しておくことをおすすめします。
婚約している場合は扱いが変わりますか
婚約や内縁が成立している場合は、交際関係とは異なり、約束がなくても相手の浮気を理由に慰謝料を請求できる場面があります。婚約が成立しているかどうかは、結婚の合意やそれを裏づける事情から判断されます。詳しくは婚約を一方的に破棄された|慰謝料を請求できるケース・できないケースをご覧ください。
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約束の効力に迷ったら
「浮気したら罰金」という約束は、交際中の約束だからといって一律に無効になるわけではありませんが、金額や経緯、違反の決め方によっては、そのまま認められないこともあります。請求する側も、請求された側も、まずは約束の中身と交わされた状況を整理するところから始めることが大切です。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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