途中でやめた・未遂だった場合の扱い|中止と未遂の評価
風俗店とのトラブルを抱えると、店との話し合いや弁護士への相談、場合によっては警察からの呼び出しのために、平日に時間を空けなければならない場面が出てきます。そのとき多くの方が悩まれるのが、会社に休む理由を何と伝えるかという点です。本当のことは言いにくい一方で、作り話をしてよいのかという迷いもあると思います。この記事では、休む理由をどこまで伝える必要があるのか、場面ごとの伝え方の目安、避けたほうがよい説明について整理します。
この記事は、民間企業にお勤めの方を想定しています。休暇や欠勤の扱いは会社ごとの就業規則によって異なるため、実際にはお勤め先の規則もあわせてご確認ください。
休む理由は会社にどこまで伝える必要があるのか
まず押さえておきたいのは、休み方によって、理由を伝える必要の程度が異なるという点です。
年次有給休暇を使う場合
年次有給休暇(労働基準法39条)は、労働者が取得する日を指定して使うもので、何に使うかは原則として本人の自由とされています(最高裁昭和48年3月2日判決)。会社は、事業の正常な運営を妨げる場合に取得日を変えるよう求めることはできますが(時季変更権)、使い道を理由に取得を認めないことは基本的に予定されていません。
そのため、有給休暇の申請であれば、「私用のため」「所用のため」と伝えれば足りることが多いといえます。申請書に理由欄がある会社でも、同じ書き方で受け付けている例は少なくありません。
ただし、当日の朝に申請する場合、会社によっては事前申請を原則とし、当日の取得を認めるかどうかを会社の判断としていることがあります。急に休む必要が出てきそうなときは、前日までに申請できるよう段取りを考えておくと安心です。
有給休暇以外で休む場合
有給休暇が残っていない場合や、欠勤・特別休暇として休む場合は扱いが変わります。欠勤届に理由の記載を求める会社や、慶弔休暇などの特別休暇に証明書類の提出を求める会社もあります。どのような休み方をするかによって、伝える内容の幅が変わってくることを意識しておくとよいでしょう。
「言わない」ことと「偽る」ことは分けて考える
詳しい事情を伝えないことと、事実と異なる理由を作って伝えることは、意味合いが大きく異なります。私生活の事情を会社に詳しく説明する義務は通常ありませんから、「私用」とだけ伝えることは不自然ではありません。一方で、具体的な作り話をすると、後で説明が合わなくなったときに別の問題を生むおそれがあります。この点は後ほど詳しく触れます。
場面ごとの伝え方の目安
風俗トラブルで会社を休む必要が生じる場面は、主に次の4つが考えられます。それぞれの場面で、休む時間の見込みと伝え方の目安を表にまとめました。
| 場面 | 休む時間の見込み | 伝え方の例 |
|---|---|---|
| 店との話し合い・弁護士への相談 | 半日程度で足りることが多い | 「私用のため午前休をいただきます」 |
| 警察からの任意の呼び出し | 半日から1日程度。複数回になることもある | 「私用のため1日休みをいただきます」 |
| 逮捕・勾留 | 数日から3週間程度に及ぶことがある | 本人は連絡できないため、家族や弁護人から「本人が出社できない状況にある」と伝える |
| 心身の不調 | 状態による | 実際の症状をそのまま伝える |
店との話し合いや弁護士への相談
店から呼び出されたり、弁護士に相談したりするために時間を空ける場合は、半日休や時間単位の有給休暇で足りることが多いと考えられます。「私用のため」と伝えれば、それ以上の説明を求められることは多くないでしょう。
なお、店から「今日中に来ないと会社に連絡する」などと急かされ、仕事を抜けて店へ向かおうとする方もいます。しかし、慌てて出向くと、その場で示談書や借用書へのサインを求められることがあります。出向く前に一度立ち止まり、考える時間を取ることも大切です。急かされたときの考え方は、【風俗トラブル】支払期限を切られた|『今日中に』に応じないための伝え方で解説しています。
警察からの任意の呼び出し
被害届が出され、警察から事情を聞きたいと連絡が来ることもあります。任意の事情聴取であれば、仕事の都合を伝えて日程を相談できることがあります。
聴取にかかる時間は事案によって異なり、1回で終わらず複数回呼ばれることもあります。会社への伝え方は「私用」で足りることが多いものの、何度も休むことになりそうなときは、休み方の計画を早めに立てておくことが重要です。日程の組み立て方は、【刑事事件】取調べの日程を仕事に合わせられるか|当日にかかる時間と、複数回に及ぶ場合の組み立てもあわせてご覧ください。
心身の不調で休む場合
トラブルへの不安から眠れない、食事がとれないといった状態が続き、仕事に出られなくなる方もいます。実際に体調を崩しているのであれば、体調不良として休むことは偽りではありません。症状が続く場合は医療機関を受診し、必要に応じて診断書を取得しておくと、会社とのやり取りもしやすくなります。
ただし、体調に問題がないのに病気を理由にすることは、次に述べる作り話の問題と重なります。
具体的な作り話を避けたほうがよい理由
休む理由として、「親族が亡くなった」「家族が入院した」といった具体的な話を作ってしまう方もいます。しかし、このような説明には次のようなリスクがあります。
- 慶弔休暇や見舞金などの制度を使うと、会葬礼状などの証明書類の提出を求められることがあります。
- 休む期間が延びたとき、最初の説明に合わせて話を重ねる必要が出てきます。
- 同僚から後日お悔やみや様子を尋ねられ、話が食い違うおそれがあります。
- 虚偽の申告そのものが、就業規則上の懲戒事由として問題にされることがあります。
- トラブルが後に会社に知られた場合、作り話をしていたことがかえって信頼を損なう要因になりかねません。
とくに最後の点は見落とされがちです。風俗トラブルそのものは私生活上の出来事であっても、会社に事実と異なる説明をしていたことは、職場での信頼の問題として受け止められやすくなります。詳しい事情を伝えないことは許容されやすい一方、事実と異なる話は作らず、「私用」「個人的な事情」など、嘘にならない範囲の言い方にとどめるのが無難です。
逮捕・勾留されて出社できなくなった場合
トラブルが刑事事件に発展し、逮捕された場合は状況が大きく変わります。逮捕後は48時間以内に検察官へ送られ、勾留が認められると原則10日間、延長されればさらに最大10日間、身体拘束が続くことがあります(刑事訴訟法203条、205条、208条)。逮捕から数えて最長で23日間ほど出社できない可能性があるということです。
身体拘束中は、本人が会社に電話をすることはできません。連絡がないまま欠勤が続くと無断欠勤として扱われ、それ自体が懲戒の理由とされるおそれがあります。そのため、家族や弁護人を通じて、できるだけ早く会社に連絡を入れることが重要になります。
このとき伝える内容は、「本人がしばらく出社できない状況にある」「詳しいことは改めて連絡する」といった範囲にとどめ、病気などの作り話は避けたほうがよいでしょう。勾留が長引いた場合や報道された場合に、説明が合わなくなるおそれがあるためです。会社によっては、就業規則で逮捕や起訴の際の報告義務を定めていることもあるため、伝え方は弁護人と相談しながら決めることをおすすめします。
家族が会社へ連絡する際の具体的な伝え方は、【刑事事件】逮捕された家族の勤務先へ何と伝えるか|段階ごとの連絡内容と避けたい説明で詳しく解説しています。会社から退職届の提出を求められた場合については、【刑事事件】逮捕された家族の勤務先から退職届を出すよう求められたをご覧ください。
会社に知られた場合、処分の対象になるのか
休む理由を伏せていても、何らかのきっかけで会社にトラブルが知られることはあり得ます。もっとも、勤務時間外の私生活上の行為について、会社が懲戒処分の対象とできる範囲は限られると考えられています。判例上も、私生活上の行為を理由とする懲戒は、行為の性質や会社の社会的評価への影響の程度などを踏まえて判断されています(最高裁昭和49年3月15日判決など)。
ただし、刑事事件として起訴された場合、報道で会社名が出た場合、職種の性質上影響が大きい場合などは、処分が検討される可能性が高まります。会社に知られる典型的な経路と防ぎ方は、風俗トラブルが原因の失職・懲戒|会社にバレる典型ルートと防止策で整理しています。公務員の方は民間企業とは別の枠組みで判断されるため、公務員・教員の場合|身分上の処分と刑事処分の関係もご参照ください。
また、捜査の過程で、警察から勤務先に照会書面が届くこともあります。この点は、【刑事事件】会社に捜査関係事項照会が届いた|従業員として知っておくことで解説しています。
会社を休む前に整理しておきたいこと
休む理由で悩んだときは、次の点を確認しておくと、慌てずに対応しやすくなります。
- 就業規則に定められた有給休暇・欠勤・届出のルール。
- 有給休暇の残日数と、半日単位・時間単位で取得できるかどうか。
- 休む必要がある時間の見込み。
- 休むことを伝える相手を、直属の上司などに絞ること。
- 休む理由の言い方を一つに決め、途中で変えないこと。
- 万一出社できなくなったときに、会社へ連絡してもらう人を決めておくかどうか。
弁護士に任せると、会社を休む回数を減らせることがある
店との交渉を自分で行う場合、呼び出しに応じて店へ出向いたり、何度も電話でやり取りをしたりするために、仕事を抜ける回数が増えがちです。弁護士が窓口になれば、店とのやり取りは弁護士が引き受けるため、本人が平日に時間を割く場面を減らせることがあります。弁護士との打ち合わせも、電話やメールなどを使えば、会社を休まずに進められる部分があります。
また、店から会社に連絡すると言われている場合も、弁護士から店に対して本人や勤務先への直接の連絡を控えるよう求めることで、会社に知られる事態を避けられることがあります。もっとも、相手方の対応にもよるため、結果をお約束できるものではありません。自分で対応するか弁護士に任せるかの判断材料は、【風俗トラブル】店との交渉を自分でするか弁護士に任せるか|分かれ目になる5つの事情や家族・職場に知られずに風俗トラブルを解決する方法|弁護士が解説でも紹介しています。
よくあるご質問
有給休暇の理由を上司にしつこく聞かれたら、答えなければいけませんか
有給休暇の使い道は原則として本人の自由とされているため、詳しく答えなくても取得そのものが妨げられるわけではありません。ただ、職場での関係もありますので、「個人的な用事です」と穏やかに伝えるのが現実的です。休む間の業務の段取りをきちんと伝えておくと、それ以上尋ねられにくくなります。
休んでいる間に、店から会社に電話がかかってきたらどうなりますか
勤務先への連絡が繰り返されると、会社に不審に思われるおそれがあるだけでなく、業務にも支障が生じかねません。連絡の内容や態様によっては、店側の行為が違法と評価されることもあります。店から「会社に連絡する」と言われている段階で、早めに弁護士へ相談し、勤務先への連絡を控えるよう申し入れることを検討してください。
休む理由を正直に話したほうがよい場面はありますか
逮捕・勾留されて長期間出社できない場合や、起訴されて裁判に出る必要がある場合など、会社に事情を説明せざるを得ない場面もあります。そのような場合でも、どこまで、どのように伝えるかは、刑事手続の見通しを踏まえて考える必要があります。弁護士と相談したうえで伝え方を決めることをおすすめします。
風俗トラブルで会社を休むときは、有給休暇であれば「私用」で足りることが多く、詳しい事情まで説明する必要は通常ありません。大切なのは、具体的な作り話をせず、休む回数をなるべく増やさないように段取りを考えることです。会社に知られることへの不安や、店との交渉で仕事を抜けなければならない状況が続いているときは、一人で抱え込まずにご相談ください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


