AV・アダルトライブ配信をめぐるトラブル|視聴・購入側の論点
風俗店でのトラブルをきっかけに警察が関わることになったとき、公務員や教員の方が最初に気にされるのは「仕事はどうなるのか」という点だと思います。ところが調べてみると、「不起訴になれば職場の処分もない」という説明と「不起訴でも処分を受けることはある」という説明が同時に出てきて、かえって分からなくなることがあります。
どちらかが誤っているというより、これは「処分」という言葉が二つの意味で使われていることによるすれ違いです。刑事の手続で決まる処分と、職場で決まる身分上の処分は、判断する人も、判断の基準も、決まる時期も別々に動いています。
この記事では、その二つがどこでつながり、どこで切り離されているのかを整理します。捜査の事実が職場にどう伝わるのか、前科がついた後の生活がどうなるのかは別のテーマですので、ここでは触れません。
「処分」には二つの系統がある
刑事処分は、検察官が起訴するかどうかを決め、起訴された場合には裁判所が刑を言い渡すという流れで決まります。これに対して身分上の処分は、所属する官庁や自治体、公立学校であれば教育委員会といった任命権者が決めます。
二つは同じ出来事を扱っていても、当てている物差しが違います。刑事の手続が見るのは「犯罪が成立するか、どの刑にするか」、職場の手続が見るのは「職員としてふさわしくない行為があったか、どの程度の処分にするか」です。ここが分かれているために、刑事の側が不起訴で終わっても職場の側で評価が下されることはありますし、逆に有罪が確定しても免職とは限りません。
| 観点 | 刑事処分 | 身分上の処分 |
|---|---|---|
| 決める人 | 検察官・裁判所 | 任命権者(所属官庁・自治体・教育委員会など) |
| 見ているもの | 犯罪が成立するか、どの刑にするか | ふさわしくない非行があったか、どの処分にするか |
| よりどころ | 刑法などの刑罰法規 | 国家公務員法・地方公務員法などの規定 |
| 区切りがつく時期 | 不起訴の決定、または判決の確定 | 任命権者が処分を決めたとき |
読んでいる情報がどちらの列の話なのかを意識すると、矛盾して見えていた説明が整理されてきます。
身分上の処分は四つに分かれる
ひとくちに職場の処分といっても、中身は四つに分かれます。この区別をしないまま情報を読むと、条文の説明と体験談が食い違って見えてしまいます。
| 種類 | 何をきっかけに起きるか | 自動か、判断が入るか |
|---|---|---|
| 失職 | 拘禁刑以上の刑が確定したこと | 当てはまった時点で自動的に職を失う |
| 懲戒処分 | 職員としてふさわしくない非行があったこと | 任命権者が判断する |
| 分限処分 | 勤務実績や適格性など、職務を続けられない事情があること | 任命権者が判断する(制裁ではない) |
| 休職(起訴休職) | 刑事事件で起訴されたこと | 任命権者が判断する(一時的な措置) |
失職は「処分」ではない
失職は、任命権者が何かを決めた結果ではありません。法律に定められた欠格事由に当てはまった時点で、当然に職を失うという仕組みです(国家公務員法38条1号・76条、地方公務員法16条1号・28条4項)。弁明の機会を経て決まるものではないという点が、懲戒処分と大きく違います。
懲戒処分は四段階
懲戒処分は、軽い順に戒告・減給・停職・免職の四つです(国家公務員法82条、地方公務員法29条)。国家公務員の場合、減給は1年以下の期間について俸給月額の5分の1以下を給与から減じるもの、停職は1日以上1年以下で、その間の給与は支給されないとされています(人事院規則12―0)。地方公務員も、条例で同様の幅が定められているのが一般的です。
起訴休職は結論ではない
刑事事件で起訴されたときは、判決が出るまでの間、休職とされることがあります(国家公務員法79条2号、地方公務員法28条2項2号)。これは有罪だと判断されたという意味ではなく、裁判が続いている間の暫定的な扱いです。期間は刑事事件が裁判所に係属している間とされる例が多く、その間の給与は、条例や規則の定めに従って一定の割合にとどまるのが一般的です。
失職に直結するのは「拘禁刑以上の刑が確定したとき」
失職の入口は、条文の上ではひとつに絞られています。拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで、またはその執行を受けることがなくなるまでの者にあたることです(2025年6月1日から、懲役と禁錮は拘禁刑に一本化されました)。読み違えやすいのは次の三点です。
- 執行猶予がついた判決でも、拘禁刑に処せられたことに変わりはないため、確定した時点で欠格事由に当てはまります。
- 罰金刑は拘禁刑以上の刑ではないので、この意味での失職には結びつきません。
- 逮捕、勾留、起訴のいずれの段階も「刑に処せられた」状態ではないため、その時点で職を失うわけではありません。
条例による例外は広くない
地方公務員については、条例に特別の定めがあれば失職しないものとすることができます。もっとも、実際に置かれている例外は限定的です。東京都の条例では、拘禁刑に処せられた職員のうち、その刑に係る罪が過失によるものであり、かつ、その刑の執行を猶予された者について、情状により職を失わないものとすることができる、と定められています(職員の分限に関する条例8条)。交通事故のような過失の事案を念頭に置いた規定で、故意による行為が問題になっている場面で働く余地は乏しいといえます。
懲戒の手続は、刑事の結論を待つとは限らない
「まず刑事事件が終わってから、職場の話が始まる」と考えている方は少なくありませんが、条文はそうなっていません。国家公務員法85条は、懲戒に付されるべき事件が刑事裁判所に係属している間であっても、任命権者は同じ事件について懲戒手続を進めることができると定めています。さらに同条は、懲戒処分をしたことが、同一または関連の事件で重ねて刑事上の訴追を受けることを妨げないとも定めています。二つの手続は、互いの結論を待つ関係にはないということです。
これを具体化しているのが人事院規則12―0の8条です。刑事裁判が続いている間に懲戒手続を進めようとする場合、本人が公判廷で、あるいはそれより前の段階では任命権者に対して、懲戒の対象とする事実で公訴事実にあたるものがあると認めているときは、手続を進めてよい扱いとされています。
つまり、本人が認めるかどうか、職場に何をどう説明するかが、身分上の手続が動き出す時期そのものに影響します。刑事の場面での認否と職場への説明を切り離して別々に考えるのは難しい、ということでもあります。
不起訴でも、罰金でも、懲戒はあり得る
懲戒の事由には、法令違反や職務上の義務違反のほかに、「全体の奉仕者たるにふさわしくない非行があった場合」が含まれています。この事由は有罪判決を条件にしていません。そのため、不起訴で終わった場合や罰金で終わった場合でも、職場の側で事実関係を確認したうえで懲戒処分を検討することはあり得ます。
逆の向きも同じで、有罪が確定したからそのまま免職になる、というものでもありません。罰金にとどまった場合の量定は、次に述べる要素をふまえた判断になります。
量定は何によって決まるのか
国家公務員については人事院が「懲戒処分の指針」を示しており、多くの自治体や教育委員会もこれに準じた指針を定めています。そこでは、量定を決めるにあたって次のような点を総合的に考慮するとされています。
- 非違行為の動機、態様および結果。
- 故意または過失の度合い。
- その職員の職責と、非違行為との関係での評価。
- 他の職員および社会に与える影響。
- 過去に非違行為を行っているかどうか。
さらに、重くする方向に働く事情として、動機や態様が悪質であること、職責が特に高いこと、公務内外への影響が大きいこと、同種の行為で過去に処分を受けていること、複数の非違行為があることが挙げられています。反対に、軽くする方向に働く事情として挙げられているのは二つだけです。ひとつは発覚する前に自分から申し出たこと、もうひとつは、行為に至った経緯その他の情状に特に酌量すべきものがあると認められることです。前者は、時期を逃すと使えなくなる要素だという点で、他の材料と性質が違います。
風俗の場面と標準例の関係
同じ指針には、行為の類型ごとの標準的な量定も示されています。公務外の非行に関するもののうち、風俗の場面で問題になりやすいものを抜き出すと次のとおりです。
| 行為の類型 | 標準的な量定 |
|---|---|
| 盗撮行為 | 停職または減給 |
| 痴漢行為 | 停職または減給 |
| 詐欺・恐喝 | 免職または停職 |
| 18歳未満の者に対償を供与しての淫行 | 免職または停職 |
| 麻薬等の所持・使用など | 免職 |
注意しておきたいのは、風俗店を利用したこと自体を挙げた項目は、この標準例にはないという点です。評価の対象になるのは、その場で何が起きたかという中身のほうです。
もうひとつ、指針には「標準例に掲げられていない非違行為についても懲戒処分の対象となり得る」と明記されています。店との金銭トラブルなど、上の表にそのまま当てはまらない事案でも、近い類型を参考にしながら判断されます。表にない行為だから対象外だ、とは読めない構造になっているということです。
不起訴の「中身」まで見られることがある
刑事の側で不起訴になっても、職場に対しては「不起訴になりました」の一言で説明が完結しないことがあります。不起訴には、嫌疑がないもの、証拠が足りないもの、事実は認められるが起訴を見送るもの(起訴猶予)など、いくつかの区分があるためです。
ところが、検察庁が交付する不起訴処分告知書には、不起訴にしたという結論が記載されるにとどまり、どの区分によるものかまでは記載されないのが通常の運用です。職場に説明する必要が生じたときに手元にどの書面があるのかは、あらかじめ確認しておく価値があります。
公立学校の教員の場合
公立学校の教員は、地方公務員であると同時に教員免許を持つ者でもあるため、身分の話と免許の話が二重に動きます。
免許が失われる二つの入口
ひとつは刑です。拘禁刑以上の刑に処せられた者は校長や教員になることができないとされ(学校教育法9条)、免許状も効力を失います(教育職員免許法10条1項1号)。地方公務員としての失職と同時に免許も失われる、という関係です。
もうひとつは懲戒免職です。公立学校の教員が懲戒免職の処分を受けたときも、免許状は効力を失います(同項2号)。この経路は刑の重さと直接には結びついていないため、罰金や不起訴で刑事手続が終わっても、懲戒免職に至れば免許は失われます。国立学校や私立学校の教員には、これに相当する事由で解雇されたときに免許管理者が免許状を取り上げる仕組みが置かれています(同法11条)。
失効は官報に公告される
免許状の失効や取上げがあったときは、免許管理者がその旨を官報に公告することとされています(同法13条)。公告される事項は省令で定められており、氏名、本籍地、免許状の種類や番号、失効または取上げの年月日と事由が含まれます。次に述べる懲戒処分の公表とは別の仕組みです。
取り直せるまでの期間は経路によって違う
懲戒免職や分限免職によって免許を失った場合は、失効の日から3年を経過するまで、あらためて免許を受けることができません。刑によって失った場合は、執行猶予の期間が経過するなどして刑の言渡しの効力が失われれば、欠格の状態そのものは解消されると考えられています。ただし、いずれも失った免許が自動的に戻るわけではなく、あらためて授与を受ける必要があります。
相手が18歳未満だった場合は枠組みが変わる
教員については、児童生徒や18歳未満の者を相手とする性的な行為が「児童生徒性暴力等」として別に位置づけられ、専用の法律で厳しい取扱いが定められています。免許を失った人の情報は国のデータベースに登録され、再び免許を受けるには審査会の意見を聴いた判断が必要です。相手の年齢を確認していたかどうかで、その後の道筋が大きく変わります。
公表される範囲を知っておく
国家公務員については、懲戒処分の公表に関する指針が別に示されています。職務に関連しない行為による懲戒処分のうち、免職または停職にあたるものが公表の対象とされ、内容は、事案の概要、処分の量定と年月日、所属や役職段階といった属性を、個人が識別されない内容とすることを基本とするとされています。被害者やその関係者の権利利益を害するおそれがある場合などには、一部または全部を公表しないことも差し支えないとされています。自治体や教育委員会も、これに準じた基準をそれぞれ定めていますので、自分の職場のものを確認しておくと安心です。なお、報道機関がどう扱うかは、この基準とは別の問題です。
数字で見ておく
文部科学省が公表している令和6年度の調査では、懲戒処分または訓告等を受けた公立学校の教育職員は4,883人でした。このうち「性犯罪・性暴力等」を理由とするものは281人で、内訳は免職167人、停職51人、減給25人、戒告4人、訓告等34人です。
281人のうち134人は児童生徒性暴力等にあたる事案で、そのほとんど(132人)が免職です。裏を返すと、児童生徒性暴力等以外の事案では、免職以外の量定になっている例のほうが多いという分布になります。
もっとも、これは全国の集計にすぎません。個々の事案では、行為の中身、職責、過去の処分歴、事後の対応といった要素で結論が動きます。幅があることを示す材料として見ておくのが適切です。
給与と退職手当はどうなるか
停職の期間中は給与が支給されず、減給の場合は一定の期間、決められた幅で給与が減らされます。起訴休職の期間中は、条例や規則の定めに従って一定の割合の支給にとどまります。
退職手当については、懲戒免職になれば自動的にゼロになる、という仕組みではありません。国家公務員退職手当法12条は、懲戒免職等の処分を受けて退職した者や失職により退職した者について、その職の職務と責任、非違の内容と程度、公務に対する信頼に及ぼす影響などを勘案して、退職手当の全部または一部を支給しないこととする処分を行うことができる、と定めています。全部か一部かを含めて判断が入る仕組みです。
また、退職した後に、在職中の行為に関する刑事事件で拘禁刑以上の刑に処せられたときにも、まだ支払われていない退職手当について同様の処分ができるとされています(同法14条)。自分から先に辞めれば金銭面の問題まで終わる、とは限らないということです。地方公務員についても、条例で同じような仕組みが置かれています。
自分で決めることになる場面
ここまでをふまえると、公務員や教員の立場で判断を求められるのは、次のような場面です。
- 職場に対して、どの段階で何をどこまで伝えるか。発覚前の自主的な申出は量定を軽くする方向に働く事情とされていますが、伝える内容と刑事手続での説明がずれると、後で別の問題になります。
- 刑事の場面で事実をどう説明するか。認否は刑事処分に影響するだけでなく、懲戒手続が動き出す時期にも関わります。
- 職場の調査や弁明の機会に、何を資料として出すか。手元にどの書面があるかを早い段階で確認しておきます。
- 処分に納得できない場合に、不服を申し立てるかどうか。国家公務員には人事院、地方公務員には人事委員会または公平委員会への審査請求の制度があります。
- 相手がいる事案で、話し合いをどう進めるか。刑事処分に影響し得る一方、身分上の処分に直結するとは限らないという距離感を理解しておく必要があります。
いずれも期限のある判断です。刑事の側の期限と職場の側の期限は別々に走っているため、どちらか一方だけを見て動くと、もう一方で選択肢が狭くなることがあります。
まとめ
ここまでの内容を整理すると、次のようになります。
- 刑事処分と身分上の処分は、決める人も物差しも別で、互いの結論を待つ関係にはありません。
- 身分上の処分は、失職・懲戒処分・分限処分・休職の四つに分かれ、性質がそれぞれ違います。
- 失職に直結するのは拘禁刑以上の刑が確定したときで、執行猶予付きでも当てはまり、罰金では当てはまりません。
- 不起訴や罰金で刑事手続が終わっても、懲戒処分が検討されることはあります。
- 量定は複数の要素の総合判断で決まり、発覚前の自主的な申出は軽くする方向に働く事情とされています。
- 公立学校の教員は身分と免許の両方が動き、懲戒免職の経路では刑の重さと関係なく免許が失われます。
風俗の場面で起きたことは、人に相談しづらい種類の出来事です。そのぶん、判断を先送りにしているうちに選べたはずの選択肢が減っていくことも起こりやすい分野です。早く動けば結果が決まるという性質のものではありませんが、どちらの手続がいまどこまで進んでいるのかを整理したうえで次の一手を選ぶことはできます。判断に迷う段階で、弁護士に事実関係を伝えて見通しを確認しておくことをおすすめします。


