風俗店・ホテルでの盗聴は犯罪?成立し得る罪と客側の対処法

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

 デリヘルやホテルでのサービス中に、出来心でスマートフォンのボイスレコーダーを回してしまった——。それがキャストや店側に見つかり、「盗聴は犯罪だ。罰金として◯◯万円を払え」と迫られ、免許証の写真まで撮られて執拗に連絡が来る。こうした「風俗での盗聴トラブル」の相談は、実際に少なくありません。

ここでまず整理しておきたいのは、「そもそも録音・盗聴は犯罪なのか」という点です。答えを誤解したまま慌てて支払ってしまうと、根拠のない金額を払わされたうえに個人情報を握られたまま、という最悪の結果になりかねません。本記事では、風俗を利用する男性の側に立つ立場から、盗聴で成立し得る罪と、店から罰金を請求され脅されたときの対処法を解説します。

「録音・盗聴そのもの」を直接罰する法律はない

 意外に思われるかもしれませんが、現在の日本の法律には、盗聴・録音という行為それ自体を処罰する規定はありません。他人の会話を盗み聞きしただけでは、それだけでただちに罪に問うことはできない、というのが現状です。

 とくに、自分が参加しているその場のやり取りを録音する行為は「当事者録音」と呼ばれ、原則として違法ではありません。サービス中の音声を録音しただけであれば、通常は犯罪にはあたらないと考えられます。

 ただし、「犯罪ではない」ことと「トラブルにならない」ことは別です。録音は多くの店で禁止行為とされており、相手を不快にさせれば後述の民事責任(プライバシー侵害など)の問題は残ります。犯罪でないから何をしてもよい、という話ではない点は押さえておいてください。

音声(盗聴)と映像(盗撮)は決定的に違う

 風俗の場面でとくに注意が必要なのが、録音(音声)と隠し撮り(映像)はまったく扱いが異なるということです。

 音声の録音が原則として犯罪にならないのに対し、性的なサービス中の様子を無断で撮影・録画すると、**撮影罪(性的姿態等撮影罪/2023年7月施行)**に問われる可能性があります。法定刑は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金で、これは「成立し得る」どころではなく、実際に立件され得る性犯罪類型です。

 「音声だけのつもりでスマホを伏せて置いた」場合でも、動画として記録されていれば、それは盗聴ではなく盗撮です。風俗の性的な場面は「性的姿態」に該当しやすく、評価が一段と重くなります。自分がしたのが録音なのか撮影なのかで、法的な位置づけは大きく変わります。

「盗聴+α」で成立し得る罪

 録音そのものは犯罪でなくても、その方法や使い方によっては、付随する別の罪が成立し得ます。代表的なものを挙げます。

  • 住居侵入罪・建造物侵入罪(刑法130条)……あらかじめ盗聴器などを準備し、盗聴を目的としてホテルや店舗に立ち入った場合には、正当な理由のない立入りとして問われる可能性があります。その場の思いつきで録音したケースと、機材を用意して盗聴目的で入ったケースとでは、評価が分かれ得ます。法定刑は3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金です。
  • 器物損壊罪(刑法261条)……盗聴器の設置などのために物を壊せば、別途成立し得ます。
  • 電気通信事業法違反・有線電気通信法違反・電波法違反……電話回線や無線の通信を傍受した場合に問題となります。自分が参加する会話の録音とは別のレイヤーの話です。
  • 迷惑防止条例違反・軽犯罪法違反……のぞき行為などが対象になり得ます。
  • 脅迫罪(222条)・恐喝罪(249条)……録音した内容を種に相手を脅したり、金品を要求したりすれば成立し得ます。

 いずれも「録音した」ことそのものではなく、それを超えた行為が引き金になる点が共通しています。

録音・盗聴された側は慰謝料を請求できる

 刑事とは別に、民事上の問題も残ります。盗聴・録音は相手のプライバシーや肖像権を侵害し得る行為であり、被害を受けた側は、精神的苦痛を理由に慰謝料を請求することが可能です。つまり、キャスト側が客に対して金銭を求める法的な足がかりにはなり得ます。

 さらに、録音・撮影したデータを他人に見せたり拡散したりすれば、名誉毀損やプライバシー侵害としてより重い責任を問われ、性的な画像であれば別の法律の問題にも発展します。データの拡散は、いかなる理由があっても避けてください。

客側の対処法──「罰金」を請求され脅されたとき

 問題になりやすいのが、店側が「盗聴は犯罪だから罰金として◯◯万円払え」「払わなければ家に行く」などと迫ってくるケースです。

 前提として、録音そのものが犯罪にあたらない以上、「犯罪であること」を理由とした罰金請求は、根拠として弱いと言えます。そもそも「罰金」は国家が科す刑罰であって、私人である店が名乗る「罰金」は違約金の一種にすぎません。むしろ、脅し文句を伴う高額な金銭要求のほうが、脅迫罪や恐喝罪に該当し得ます。

 もっとも、「自分に非はない」と一方的に突っぱねて無視すれば安心、というわけでもありません。免許証などの個人情報を握られていれば、自宅や職場に来られるリスク、家族に知られてしまうリスクが現実に生じます。禁止行為で相手を不快にさせた事実がある場合は、争うべきところは争いつつ、迷惑をかけた分について穏当な示談で収める、という着地のほうが現実的なこともあります。実際の解決例でも、「罰金」ではなく、データの破棄や口外禁止を盛り込んだ合意書とあわせて、相当な範囲の示談金で決着させる形が取られています。

その場でやってはいけないこと

  • 言われるまま即金で支払う/その場でATMの暗証番号を入力する
  • 念書・誓約書・示談書にその場でサインする
  • 免許証など個人情報を渡す、写真を撮らせる
  • 録音データを相手のスマホにコピーさせる
  • 逃走したりデータを消したりする(かえって不利に働くことがあります)

やるべきこと

  • 身の危険を感じたら安全を最優先に(必要なら110番)
  • 請求内容や脅し文句のやり取りは、証拠として残し、自分から消さない
  • 一人で交渉せず、弁護士を窓口にして連絡を一本化する
  • 早めに相談する。とくに、実は録音でなく撮影(盗撮)だった、相手が18歳未満だったといった事情がある場合は、別レイヤーの重い問題になるため、自己判断は禁物です

まとめ

 録音・盗聴そのものを直接罰する法律はなく、自分が参加した会話の録音は原則として犯罪にはあたりません。一方で、盗聴器を準備しての立入りは住居侵入等に、内容を種にした脅しは脅迫・恐喝に、そして映像の隠し撮りは撮影罪にと、方法や使い方次第で別の罪が成立し得ます。民事のプライバシー侵害の問題も残ります。

 店から「罰金」を請求され脅されている場合、その請求には根拠が乏しいことが多い一方、個人情報を握られた状態で自力解決を図るのは容易ではありません。支払いやサインを迫られても即断せず、記録を残したうえで、早い段階で弁護士にご相談ください。当事務所は風俗を利用する方の側に立ち、店側との交渉から穏当な解決までをサポートします。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

風俗・男女トラブルの不当要求から依頼者を守る弁護士

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ東京
  3. 東京の法律関連
  4. 東京の男女・夫婦問題
  5. 若井亮
  6. コラム一覧
  7. 風俗店・ホテルでの盗聴は犯罪?成立し得る罪と客側の対処法

若井亮プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼