【風俗トラブル】メンズエステで下着の中に手を入れたと言われたら?

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

この記事は、2023年7月施行の改正刑法(不同意わいせつ罪の新設・公訴時効の延長)と、2025年6月施行の拘禁刑への一本化を反映しています。結論は個別の事情によって変わるため、具体的な対応は弁護士にご相談ください。


メンズエステの施術が終わった後、店のスタッフやセラピストから「下着の中に手を入れましたよね」と告げられ、その場で話し合いを求められるというご相談が当事務所にも寄せられています。服や下着の上から触れたかどうかではなく、「中に手を入れた」と言われたことで、急に話が重くなったように感じる方も多いのではないでしょうか。

 実際、下着の上からの接触と下着の中への接触とでは、法的な評価や相手方の受け止め方が変わることがあります。一方で、言われた内容がそのまま事実として扱われるわけではありません。この記事では、下着の中への接触を指摘された場面で何が問題になるのか、その場と後日にどう動けばよいのかを整理します。

「下着の中に手を入れた」と言われる典型的な場面

 メンズエステの多くは、性的なサービスを提供しないことを前提に営業しています。施術では鼠径部など際どい部位に触れることがあり、セラピストとの距離も近いため、客側が流れの中で相手の体に触れてしまうことがあります。

 弁護士ドットコムに寄せられた相談を見ても、添い寝のような姿勢での施術中に下着の内側の臀部をなでてしまったという例や、拒否の言葉がなかったので受け入れられていると思っていたという例が見られます。こうした場合に、施術後にスタッフが部屋へ入ってきて事情を問いただしたり、数日たってから店や警察から連絡が来たりすることがあります。指摘のされ方としては、次のような場面が典型です。

  • 施術の終了直後に、男性スタッフや店長が部屋に来て問いただされる場面。
  • セラピストが施術を途中で打ち切り、その後に店から連絡が来る場面。
  • 帰宅後に、店から電話やメッセージで「下着の中まで触った」と告げられる場面。
  • 数日から数か月たってから、警察から事情を聴きたいと連絡が来る場面。


下着の上からと下着の中とで評価はどう変わるのか


不同意わいせつ罪の考え方

 刑法176条の不同意わいせつ罪は、一定の事情によって相手が同意しない意思を形成したり、表明したり、全うしたりすることが難しい状態にあるときに、わいせつな行為をした場合に成立する罪です。法定刑は6か月以上10年以下の拘禁刑で、罰金刑は定められていません。また、2017年の改正以降は親告罪ではなくなっており、被害を受けた方の告訴がなくても起訴されることがあります。

 わいせつな行為にあたるかどうかは、触れた部位や態様、時間などから判断されます。服や下着の上からの接触でもわいせつな行為と評価されることはありますが、下着の中に手を入れて胸や陰部に直接触れる行為は、一般にわいせつな行為と評価されやすい類型と考えられています。刑事事件を扱う法律事務所の解説でも、衣服の上からの接触は痴漢として条例違反にとどまる場合がある一方、下着の中に手を入れる行為は不同意わいせつ罪が成立する可能性がある、と整理されています。

個室での行為と迷惑防止条例

 東京都の迷惑防止条例が定める痴漢行為の規制は、公共の場所や公共の乗物での行為を対象としています。メンズエステの個室のように公共の場所とはいえない空間での接触は、条例違反ではなく、不同意わいせつ罪が成立するかどうかという形で問題になることが多いと考えられます。そのため、「上からなら軽く、中なら重い」という単純な区分ではなく、同意の有無とあわせて検討されることになります。

同意の有無はどこで判断されるのか

 不同意わいせつ罪では、同意しない意思を示すことが難しくなる事情として、暴行や脅迫のほか、予想していない行為で同意しない意思を示すいとまがなかったことや、予想と異なる事態に直面して恐怖したり驚いたりしたことなど、8つの類型が法律に挙げられています。施術中に突然下着の中に手を入れられた場合、相手が驚いて体が固まり、拒否の言葉を出せなかったということは十分にありえます。

 そのため、「拒否されなかった」「嫌がるそぶりがなかった」という事情だけで、同意があったと評価されるとは限りません。反対に、セラピスト側から性的な接触を持ちかけた、客の手を誘導した、追加料金の話が出ていたといった事情があれば、同意の有無を検討するうえで重要な材料になります。どちらの事情があったのかは、当事者の言い分だけでなく、やり取りの記録や店の営業の実態なども踏まえて判断されます。

その場で求められやすいことと、応じる前に考えること


求められること応じる前に考えたいこと
行為を認める書面への署名書かれた内容が事実と合っているか。違う記載があれば、そのまま署名しない
身分証の提示・撮影撮影された画像がどう使われるか分からない。連絡先の交換など別の方法で足りることもある
その場での現金払い・振込金額の根拠と、支払うことで何が終わるのかが書面で示されているか
家族や勤務先の連絡先連絡先を伝えると、請求の連絡が届く範囲が広がるおそれがある
「今日中に」という期限での合意弁護士に相談してから回答すると伝える余地がある


 その場の空気に押されて、事実と違う内容の書面に署名したり、根拠の分からない金額を支払ったりすると、後から争うことが難しくなることがあります。脅されて署名した書面については効力を争える場合もありますが、まずは署名しないことが大切です。書面の効力については脅されて署名した念書・示談書は有効か|「無効」と「取消し」の違いも参考にしてください。

 一方で、相手を押しのけたり、物を壊したりして部屋を出ると、別のトラブルの原因になりかねません。帰らせてもらえないなど身の危険を感じるときは、110番通報することも選択肢の一つです。謝罪をすること自体は問題ありませんが、「下着の中に手を入れた」といった相手の言い分をそのまま認める言葉は、事実と合っているかを確かめてからにしたほうがよいでしょう。身分証の扱いについては身分証の提示・撮影を求められた場合|応じる義務と拒否の帰結で解説しています。

言われた内容が事実と違う場合

 「下着の上から触れただけなのに、中に手を入れたと言われている」「背中や太ももに触れただけなのに、胸を触ったと言われている」というように、行為の態様について言い分が食い違うことは珍しくありません。食い違いがある場合には、次のような点を早めに書き出しておくと役立ちます。

  • 入室から退室までの時間と施術の流れ。
  • 触れた部位、そのときの姿勢、触れていた時間。
  • セラピストの発言や、性的な接触への誘導・提案の有無。
  • 拒否の言葉や制止の有無と、その後に手を止めたかどうか。
  • 施術後の会話や、店のスタッフとのやり取りの内容。


 店とのやり取りの録音、予約時や施術後のメッセージ、支払いの記録なども、後で経緯を確かめる材料になります。できるだけその日のうちに残しておきましょう。録音の扱いについては録音はどこまで証拠になるか|風俗トラブルでの残し方をご覧ください。

 事実と違う内容のまま示談をまとめてしまうと、後から説明を変えることが難しくなります。身に覚えのない部分は認めず、言い分の違いを前提として、弁護士を通じて話し合いを進めることが考えられます。

心当たりがある場合は女性本人との示談を検討する

 下着の中に手を入れてしまったことに心当たりがある場合、まず考えたいのは、触れられた女性本人との示談です。不同意わいせつ罪は親告罪ではないため、示談が成立しても起訴の可能性がなくなるわけではありません。それでも、被害を受けた方が許す意思を示しているかどうかは、警察や検察官が処分を判断するうえで重く考慮される事情です。被害届が出される前に示談がまとまれば、刑事事件として扱われずに終わることもあり、すでに届が出ている場合でも、示談の成立によって不起訴となる可能性が高まることがあります。

 示談書には、支払う金額のほか、次のような条項を入れるかどうかを検討します。

  • 被害届を提出しない、または取り下げる旨の条項。
  • 刑事処罰を求めない旨の条項(宥恕条項)。
  • 今回の件について、ほかに債権債務がないことを確認する条項(清算条項)。
  • 互いに今回の件を口外しない旨の条項。
  • 今後、店や女性に接触しない旨の条項。


 示談金に決まった相場はなく、行為の内容や時間、相手が受けた精神的な影響などによって変わります。当事務所が扱った事案でも、違約金100万円の書面を示された請求について、交渉の結果、解決金30万円で示談に至ったものがあります(【解決事例】メンズエステで不同意わいせつを主張された事例|違約金100万円の書面から解決金30万円で示談)。もっとも、金額は事案ごとに大きく異なるため、提示された額が妥当かどうかは個別に検討する必要があります。示談書の条項については風俗トラブルの示談書に必ず入れる6条項|抜けると後で効かないも参考になります。

店からの請求と女性本人からの請求を分けて考える

 メンズエステでのトラブルでは、店が「罰金」「違約金」として金銭を求めてくることがあります。入店時に、性的な行為をした場合は罰金を支払うといった内容の誓約書に署名していることもあるでしょう。

 しかし、触れられたことによる精神的な苦痛について慰謝料を請求できるのは、原則として女性本人です。店が独自に請求できるのは営業上の損害など店自身に生じた損害に限られると考えられ、誓約書に書かれた金額がそのまま認められるとは限りません。実際の損害と比べて著しく高い金額であれば、公序良俗に反するとして効力が制限される可能性もあります。

 また、店と話がついても、女性本人との関係が清算されていなければ、後日あらためて本人から請求を受けたり、被害届が出されたりすることがあります。示談をする際は、女性本人が合意の当事者になっているか、本人から正式に委任を受けた代理人と合意しているかを確認することが重要です。誓約書の罰金条項については誓約書の「罰金100万円」は本当に払う義務がある?法的効力を検証で解説しています。

警察から連絡が来た場合

 被害届が出されると、警察から事情を聴きたいと電話で連絡が来ることがあります。まずは任意の事情聴取として呼び出されることが多いものの、住所が定まっていない、証拠を隠すおそれがあるといった事情があれば、逮捕されることもあります。

 事情聴取で話した内容は供述調書にまとめられ、その後の処分に影響します。事実と違う内容の調書には署名しない、記憶があいまいな点は推測で答えないといった基本を守ることが大切です。呼び出しの日までに弁護士へ相談し、何をどの順序で話すかを整理しておくと、落ち着いて臨みやすくなります。示談によって不起訴処分となった当事務所の事例は【解決事例】メンズエステでの身体接触で警察の事情聴取|示談成立により不起訴処分となった事例で紹介しています。

 なお、2023年の改正で、不同意わいせつ罪の公訴時効は12年に延びました。時間がたってから連絡が来ることもあるため、しばらく連絡がないからといって、当時の記録を処分してしまわないようにしましょう。

よくあるご質問


セラピストが嫌がらなかったのに、罪になることはありますか

 嫌がるそぶりがなかったとしても、突然の接触に驚いて拒否できなかったと評価されれば、不同意わいせつ罪が問題になることがあります。反対に、セラピスト側からの誘導や提案があった場合には、同意をうかがわせる事情として検討されます。具体的なやり取りによって結論が変わるため、記録をもとに検討することが必要です。

その場でお金を払ってしまいました。取り戻せますか

 脅されて支払った場合などには、返還を求められることがあります。ただし、支払った経緯や書面の有無によって見通しは変わります。また、店に支払っていても女性本人との示談が成立していないこともあるため、誰に支払い、それで何が終わったのかを確認しておくことが大切です。詳しくは払ってしまった後に取り戻せるか|恐喝・強迫を理由とする返還をご覧ください。

家族や勤務先に知られずに解決できますか

 弁護士が窓口になると、店や女性からの連絡は弁護士に集約されるため、ご本人やご家族に直接連絡が入る状況を避けやすくなります。ただし、刑事手続が進んだ場合などもあり、誰にも知られずに済むとお約束できるものではありません。

関連する解説記事



 メンズエステで「下着の中に手を入れた」と言われたときは、言われた内容が事実と合っているかを確かめることと、女性本人との関係をどう清算するかを分けて考えることが出発点になります。その場で結論を出さず、記録を残したうえで、早めに専門家へ相談することをご検討ください。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

風俗・男女トラブルの不当要求から依頼者を守る弁護士

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ東京
  3. 東京の法律関連
  4. 東京の男女・夫婦問題
  5. 若井亮
  6. コラム一覧
  7. 【風俗トラブル】メンズエステで下着の中に手を入れたと言われたら?

若井亮プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼