【風俗トラブル】謝罪する様子を動画で撮られたら、後で不利になる?

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

この記事は、2026年10月14日時点の刑法、刑事訴訟法、民法、民事訴訟法の規定をもとに、風俗店の利用客の立場から書いています。個別の事情によって評価や対応が変わることがありますので、具体的な判断は相談の場でご確認ください。


「店の事務所で、スマートフォンを向けられながら謝らされた。あの動画が後で証拠にされるのではないか」。「その場を収めたくて『すべて自分が悪い』と言ってしまったが、実際には相手の言うようなことはしていない」。風俗店の利用後のトラブルでは、こうしたご相談が少なくありません。弁護士ドットコムにも、店の求めに応じて謝罪する様子を撮影されたり、事実を認める書面に署名したりした後で、その扱いを心配する相談が寄せられています。

 一般には「謝罪文や謝罪動画は相手に有利な証拠になるので応じないほうがよい」と説明されることが多く、それ自体は誤りではありません。ただ、すでに撮られてしまった方にとって知りたいのは、その動画がどの場面で、どの程度の意味を持つのか、そしてこれから何をしておけばよいのかという点ではないでしょうか。

 この記事では、謝罪する様子を撮影された後に、その動画が刑事手続と金銭の請求でどう扱われうるか、撮られた側が今からできることを整理します。謝罪文を書く場面での注意は土下座・謝罪文の強要|「義務のないこと」の広さで、行為そのものを否定するときの考え方は【風俗トラブル】本番はしていないのに「した」と言われたら、何をもって否定すればいい?で詳しく解説しています。

謝罪動画は、撮られたこと自体で結論が決まるものではない

動画は「その場で何を言ったか」の記録にとどまる

 謝罪する様子を撮った動画は、撮影された時点で、本人がどのような言葉を口にしたかを記録したものです。その言葉の内容が実際にあった出来事と一致しているかどうかは、動画だけでは決まりません。

 トラブルの直後は、店のスタッフに囲まれていたり、家族や勤務先に知らせると告げられていたりして、落ち着いて話せる状況ではないことがほとんどです。そうした中で発した言葉は、事実を述べたというより、その場を早く終わらせるための言葉であることも少なくありません。動画に映っているのは発言であり、出来事そのものではないという点が、この先の整理の出発点になります。

謝ることと、相手の言い分を認めることは別のもの

 「不快な思いをさせて申し訳ない」「迷惑をかけた」という謝罪は、相手の気持ちに向けた言葉です。これに対して、「同意がないのに行為をした」「無理やりやった」という発言は、具体的な事実を認める言葉です。

 後で問題になりやすいのは、主に後者です。同じ謝罪動画でも、どこまで具体的な事実に触れているか、金額の支払いを約束しているかによって、持つ意味は大きく変わります。

後で不利に働きうる場面は、動画の中身で分かれる

 謝罪動画の中身を、おおまかに次のように分けて考えると、自分の状況を確かめやすくなります。

動画の中身後で使われうる場面検討の視点
迷惑をかけたことへの謝罪にとどまる金銭の請求で「非を認めた」と主張される謝罪の対象が何か、事実を認めた発言があるか
禁止行為をしたことを認める店のルール違反を理由とする請求、刑事手続実際にあった行為の範囲と一致しているか
同意がなかった、無理にしたと認める不同意性交等罪などの刑事手続撮影時の状況、言わされた経緯、他の証拠との整合
金額を示して支払いを約束する約束どおりの支払いを求められる約束をした状況、金額の相当性


刑事手続での扱い|任意性と、自白だけでは有罪にできない原則

 被疑者や被告人が自分に不利益な事実を認めた発言は、一定の条件のもとで刑事裁判の証拠とされることがあります(刑事訴訟法322条1項)。謝罪動画の中で具体的な行為を認めていれば、捜査機関がその動画を確認することは考えられます。

 ただし、犯罪事実を認める発言(自白)は、強制や脅迫によるもの、その他任意にされたものでない疑いがあるものは証拠とすることができません(刑事訴訟法319条1項)。また、自白が本人に不利益な唯一の証拠である場合には有罪とされないという原則もあります(同条2項)。撮影されたときにどのような状況に置かれていたかは、動画の評価を左右する事情になりえます。

 もっとも、任意性が否定されるかどうかは個別の事情によって判断が分かれ、「脅されて撮られたから必ず証拠にならない」とまでは言えません。撮影時の状況を後から説明できるよう、記録を残しておくことが大切です。取調べの場での注意点は「認める調書」を作られないために|風俗トラブルの取調べ対応の注意点で解説しています。

金銭の請求での扱い|その場の約束はどこまで縛るか

 民事の争いでは、裁判所はあらゆる証拠を自由に評価して事実を認定します(民事訴訟法247条)。謝罪動画があれば、相手は「本人も非を認めている」と主張するでしょうが、その評価は、動画の内容と撮影時の状況、他の証拠をあわせて判断されます。

 動画の中で「〇〇万円を払います」と約束した場合、契約は書面がなくても成立しうるため(民法522条2項)、口頭の約束にも一定の意味はあります。一方で、強迫によってした意思表示は取り消すことができ(民法96条1項)、金額が行為の内容に比べて著しく過大であれば、その効力が問題になることもあります(民法90条)。その場で口にした金額を、そのまま支払う義務が当然に生じるとは限らないと考えてよいでしょう。署名した書面の効力を争った例として、【解決事例】その場で400万円の示談書に署名してしまった|示談書の効力を争い解決した事例もご参照ください。

脅して撮らせた動画は、相手の側の問題にもなる

 身体や名誉、財産に害を加える旨を告げて、義務のない謝罪や撮影に応じさせる行為は、強要罪にあたる可能性があります(刑法223条1項)。さらに、その動画を材料に「払わなければ公開する」と金銭を求めれば、恐喝罪が問題になりえます(刑法249条1項)。

 動画をインターネットに公開したり、家族や勤務先に送ったりすれば、名誉毀損やプライバシーの侵害として、相手が責任を問われる場面もあります(刑法230条1項、民法709条)。謝罪動画は、撮られた側だけでなく、撮った側にとっても扱いを誤れば責任が生じうるものです。脅しを伴う請求への対応は「金を払わなければ通報する」と脅されたら|風俗トラブルにおける恐喝罪への対処法で詳しく解説しています。

撮られた後にしておきたいこと・避けたいこと

撮影された状況を、記憶が新しいうちに書き残す

 動画の評価を左右するのは、撮影時の状況です。時間が経つと細部の記憶は薄れていくため、できるだけ早く、次のような点をメモに残しておきます。

  • 撮影された日時と場所、その場にいた人数と人物の特徴。
  • 撮影の前に言われたこと(家族や勤務先に知らせる、警察を呼ぶ、帰さないなど)。
  • 誰が文言を考えたか、言うべき内容を指示されたか、何度撮り直されたか。
  • 部屋や事務所から出られる状況だったか、身分証やスマートフォンを預けさせられていたか。
  • 動画の中で自分が述べた内容と、実際にあった出来事との違い。


 メモには書いた日付を入れ、後から書き足した部分は分かるようにしておきます。店とのやり取りの録音やメッセージが残っていれば、消さずに保存してください。録音の扱いについては録音はどこまで証拠になるか|風俗トラブルでの残し方が参考になります。

自分から店に連絡して削除や撤回を求めない

 動画が残っていることが不安で、「あの動画は消してほしい」「あれは本心ではなかった」と店に連絡したくなる方もいます。しかし、本人からの連絡は、止まっていた話を再び動かしたり、新たなやり取りが追加の記録として残ったりするきっかけになりかねません。

 撤回の意思を伝えるのであれば、どのような形で、何を伝えるかを決めてから動くほうが安全です。焦って個別に動くより、方針を固めてから窓口を一本にすることが、結果として動画の影響を小さくすることにつながります。

動画を材料に支払いや追加の謝罪を求められたとき

 「動画があるのだから払うしかない」「もう一度謝罪を撮らせろ」と求められても、その場で応じる必要はありません。追加の謝罪動画や書面は、最初の動画よりも具体的な内容になりやすく、後の整理をかえって難しくすることがあります。

 返答は保留し、弁護士への相談を優先してください。自分で交渉を続けるか、弁護士に任せるかの判断材料は【風俗トラブル】店との交渉を自分でするか弁護士に任せるか|分かれ目になる5つの事情で整理しています。

示談の中で、動画の扱いをどう決めるか

削除と不拡散を合意書の条項にする

 店やキャストとの間で示談をする場合には、金額だけでなく、謝罪動画の扱いも合意の対象にしておくことが重要です。具体的には、動画やその複製を削除すること、第三者に提供・公開しないこと、違反した場合の取り決めなどを条項として定めます。

 あわせて、合意書に定めたもの以外に互いに請求をしないという清算条項を入れておけば、同じ件で後から動画を持ち出されることへの備えになります(民法695条・696条)。示談書に入れておきたい条項は風俗トラブルの示談書に必ず入れる6条項|抜けると後で効かないをご覧ください。

警察から話を聞かれた場合の備え

 謝罪動画をきっかけに警察から連絡が来た場合でも、動画の内容をそのまま繰り返す必要はありません。取調べでは自己の意思に反して供述する必要はなく(日本国憲法38条1項、刑事訴訟法198条2項)、作成された調書の内容に誤りがあれば訂正を求めることができ、署名押印を拒むこともできます(同条4項・5項)。

 動画の中の発言と実際の出来事が食い違っている場合には、その理由を撮影時の状況とあわせて、筋道立てて説明できるよう準備しておくことが大切です。事前に弁護士と話す内容を整理しておけば、その場の言葉に引きずられずに済みます。

よくあるご質問

店に「動画を消してほしい」と頼めば、消してもらえますか

 頼むこと自体はできますが、口頭の依頼だけで確実に削除されたと確かめる方法はありません。削除を確実なものにするには、示談の合意書に削除と不拡散の条項を入れ、違反した場合の取り決めまで定めておく方法が考えられます。

実際に禁止行為をしてしまった場合でも、動画の中身を確かめる意味はありますか

 あります。実際にあった行為と、動画の中で認めさせられた内容が一致しているとは限らないためです。たとえば禁止行為はあったものの同意はあった場合と、同意がなかった場合とでは、刑事手続での評価も示談金の考え方も大きく異なります。行為を認めて誠実に謝ることと、事実と異なる内容まで認めることは分けて考えてください。

謝罪動画をSNSに公開されたら、どうなりますか

 公開の態様によっては、名誉毀損やプライバシーの侵害として、削除を求めたり損害賠償を請求したりできる場合があります(刑法230条1項、民法709条)。公開をほのめかして金銭を求められている段階であれば、恐喝罪が問題になりうる事情として記録を残し、早めにご相談ください。

まとめ


  1. 謝罪動画は、その場で何を言ったかの記録であり、実際にあった出来事を当然に証明するものではない。
  2. 迷惑をかけたことへの謝罪と、同意がなかったなどの具体的な事実を認める発言とでは、後の意味が大きく異なる。
  3. 本人に不利益な事実を認める発言は証拠とされうるが(刑事訴訟法322条1項)、任意にされたものでない疑いのある自白は証拠とできず、自白だけでは有罪とされない(同法319条1項・2項)。
  4. 動画の中で金額の支払いを約束しても、強迫による意思表示は取り消すことができ(民法96条1項)、過大な金額であれば効力が問題になる(民法90条)。
  5. 脅して謝罪や撮影に応じさせる行為は強要罪(刑法223条1項)、動画を材料に金銭を求めれば恐喝罪(刑法249条1項)が問題になりうる。
  6. 撮影時の状況は早めにメモに残し、自分から店に削除や撤回を求める連絡はしない。
  7. 示談では、動画の削除・不拡散と清算条項を合意書に定めておく(民法695条・696条)。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗店の利用をめぐるトラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。謝罪する様子を撮影された、事実と違う内容を言わされた、動画を理由に支払いを求められているといった状況でも、その時点から取れる手段を一緒に整理します。

動画の扱いに不安がある方も、すでに請求を受けて返答に迷っている方も、店へ連絡する前にご相談ください。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

風俗・男女トラブルの不当要求から依頼者を守る弁護士

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ東京
  3. 東京の法律関連
  4. 東京の男女・夫婦問題
  5. 若井亮
  6. コラム一覧
  7. 【風俗トラブル】謝罪する様子を動画で撮られたら、後で不利になる?

若井亮プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼