「写真と違う」容姿詐欺・サービス不履行|返金は求められるか

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

 風俗店のホームページやパネルで写真を見て指名したのに、当日現れたのはまったく印象の違う女性だった。あるいは、表示されていたコースの内容が受けられないまま時間だけが過ぎた——。

 「だまされた」と感じたとき、多くの方が最初に考えるのが「払ったお金は返してもらえるのか」という点です。

 結論を先にお伝えすると、「写真と違う」の一言でひとくくりにはできず、どの段階の話なのかによって法的な評価は大きく変わります。また、返金を求める過程での行動が、かえってご自身の立場を悪くしてしまうケースも少なくありません。

 この記事では、性風俗を利用された男性の方に向けて、返金請求の根拠となり得る考え方と、現実的なハードル、そして避けていただきたい行動を整理します。

1. 「写真と違う」は3つの段階に分けて考える

 法律上の見通しを立てるには、まず自分のケースがどこに位置するかを切り分けることが出発点になります。

① 本人ではあるが、写真の加工・修正が大きい(いわゆるパネマジ)

 写真に写っているのは在籍する本人だが、加工や撮影角度、あるいは撮影時期の古さによって実物と印象が異なる、というケースです。

 このタイプは、返金請求としてはもっとも難しい類型です。店側からは「本人であり、写真写りや撮影時期の問題にすぎない」「写真の加工は身元が特定されないための配慮でもある」といった反論が想定され、「別人だ」と言い切れるだけの立証が困難だからです。


 広告写真にある程度の演出が加わることは他業種でも一般的で、どこからが許容範囲を超えるのかという線引きも、客観的な基準があるわけではありません。

② 明らかに別人が来た

 年齢層がまったく異なる、体格や国籍の印象が違うなど、同一人物と説明することに無理があるケースです。①とは法的な評価が変わり得ます。

 写真を指定して指名した以上、店側には「その写真の人物を派遣する」という契約上の義務があると考えられます。この義務が果たされていなければ、債務不履行の問題として扱う余地が出てきます。

③ そもそも来ない・連絡が取れなくなった

 前払いや保証金名目で先に送金したものの、女性は現れず、店とも連絡が取れなくなったというケースです。

 これは「写真と違う」という話ではなく、最初から履行するつもりがなかったのではないかという詐欺の問題に近づきます。前記②までとは対応の緊急度も異なります。

2. 「サービス不履行」も同じ枠組みで整理する

 写真の問題とは別に、次のような不履行を訴えられる方もいます。

  • 表示されていたコース時間より大幅に短く終了させられた
  • 料金に含まれていたはずの内容が提供されなかった
  • 追加料金を払ったオプションが実施されなかった
  • 女性側の都合で途中で打ち切られた

 いずれも、合意した内容が提供されたかどうかという点で、②の別人ケースと同じ枠組みで検討することになります。逆に、当初の合意にない追加料金を後から積み上げられた、といった料金面の問題は別の論点です。

3. 返金請求の根拠になり得る考え方

 契約が有効に成立していることを前提とすると、主に次のような構成が考えられます。

 債務不履行を理由とする解除と原状回復
 約束した内容が提供されない場合、相当の期間を定めて履行を求め、それでも応じられないときは契約を解除できます(民法541条)。履行が不可能であることが明らかなときは、催告なしに解除できる場合もあります(同542条)。解除されれば、受け取った代金は返す義務が生じます(同545条)。この場合の解除は店の規約に基づくキャンセルではないため、キャンセル料の支払義務も原則として生じないという整理になります。

 詐欺・錯誤による取消し
 だます意図をもって虚偽の説明がなされた場合は詐欺取消し(民法96条)、認識に重要な食い違いがあった場合は錯誤取消し(同95条)が問題になり得ます。ただし、いずれも主張する側が事情を裏づける必要があります。

4. それでも返金が通りにくい4つの理由

 法的な構成が描けることと、実際にお金が戻ることは別の問題です。ハードルは主に4つあります。

(1)立証の壁

 「掲載写真と実際の女性が別人である」ことを示す必要がありますが、掲載写真は店側の判断でいつでも差し替えられます。後から証拠を集めようとしても、根拠となる画像自体が消えているという事態が起こり得ます。当日の相手の容姿を無断で撮影することは、それ自体が別の法的問題を生むため取るべき方法ではありません。

(2)「著しい相違」のラインが主観的である

 どの程度の違いであれば債務不履行といえるのかについて、明確な線引きはありません。ご本人が受けた印象の落差と、第三者から見た評価が一致するとは限らない点は、あらかじめ想定しておく必要があります。

(3)契約そのものの有効性が前提問題になる

 見落とされがちですが、重要な論点です。性的なサービスを内容とする契約については、その全部または一部が公序良俗に反して無効ではないか(民法90条)という議論があり、店側から反論として持ち出されることがあります。

 契約が無効であれば、「債務不履行に基づく解除」という枠組み自体が使えず、支払った金銭の返還は不当利得(民法703条)の問題として扱われます。さらに、不法な原因のために給付されたものは返還を請求できないとする規定(同708条)が壁になる可能性もあります。

 つまり、「違法な取引だったのだから無効だ」という主張は、返金を求める側にとって諸刃の剣になり得るということです。この点をどう組み立てるかは、事案ごとの慎重な検討が必要になります。

(4)費用と回収額が見合わないことがある

 被害額が数万円から十数万円にとどまる一方、代理交渉や訴訟には相応の費用と時間がかかります。回収額より費用が上回る「費用倒れ」を避けるためにも、着手前の見通しの確認が欠かせません。

5. 場面ごとの現実的な対応

サービスを受ける前・支払う前

 もっとも立場が強いのはこの段階です。写真と違うと感じたら、サービスを受ける前にその場でチェンジまたはキャンセルを申し出ることが基本になります。

 その際、店の規約でチェンジ料やキャンセル料がどう定められているかを確認しておくと、後の交渉の材料になります。いったんサービスを受けてしまうと、「納得のうえで利用した」と評価されやすくなり、返金の主張は通りにくくなります。

支払った後・サービスを受けた後

 まずは店に対して事実を整理して申し入れることになります。応じられない場合、書面での通知や、請求額が60万円以下であれば少額訴訟(民事訴訟法368条)といった手段も制度上は存在します。

 ただし、訴訟という形をとれば、利用の事実が記録に残ります。ご事情によっては、この点が回収額以上の負担になることもあり、選択には慎重な判断が必要です。
 クレジットカードで決済していた場合は、カード会社に事情を申告し、支払いの取扱いについて相談する方法が考えられます。現金払いで領収書もない場合は、そもそも支払いの事実を示すことが難しくなります。

前払いをして相手と連絡が取れなくなった場合

 送金先が銀行口座であれば、時間の経過が回収可能性を大きく左右します。口座に資金が残っているうちに手を打てるかどうかが分かれ目になるため、早い段階でのご相談をおすすめします。

6. 返金を求める行動が、逆にご自身を追い込むことがあります

 ここが、もっともお伝えしたい点です。「だまされた側なのだから何を言っても許される」わけではありません。

 店内に居座る、大声を出す 退去を求められたのに店内にとどまれば不退去(刑法130条後段)、業務を妨げる態様に至れば威力業務妨害(同234条)が問題になり得ます。

 「返金しないなら通報する」「ネットに書く」と迫る 返金請求そのものは正当な権利行使であっても、手段が社会的に相当な範囲を超えると、恐喝罪(刑法249条)や強要罪(同223条)に問われるおそれがあります。金銭の要求と結びついた形での告知は、特に慎重であるべきです。

 口コミサイトへの投稿 事実であっても、内容や表現によっては名誉毀損(刑法230条)や信用毀損・業務妨害(同233条)が問題となり、店側から損害賠償を求められる可能性があります。

 店から逆に金銭を請求される展開 やり取りがこじれた結果、規約違反を理由とした「罰金」を持ち出されたり、女性側から別の主張がなされたりして、返金を求めていたはずが請求される側に立場が入れ替わるケースも実際にあります。

7. 記録として残しておきたいもの

 交渉に進む可能性があるなら、次の記録が判断材料になります。

  • 掲載されていた写真・プロフィール(URLと閲覧日時がわかる形で保存)
  • 料金表、コース内容、キャンセル規定の表示
  • 予約時の電話・メッセージのやり取り
  • 支払いの記録(明細、振込控え、レシート)
  • 当日の時系列(到着時刻、申し出た内容、退店時刻)

 特に掲載写真は差し替えられる前に保存しておくことが重要です。また、後になって「言った・言わない」の争いになりやすいため、その場でのやり取りは記憶が新しいうちに書き留めておいてください。

8. 一人で抱え込む前に

 「写真と違う」というトラブルは、被害額が大きくないことも多く、周囲に相談しづらい性質のものです。そのため、多くの方が泣き寝入りされるか、逆に感情的な行動に出て事態を悪化させてしまうかのどちらかに傾きがちです。

 弁護士が間に入ることで、返金の見込みがある事案かどうかを早い段階で見極め、費用倒れを避ける判断ができます。交渉窓口を一本化すれば、店側からの直接の連絡や追加の要求を遮断することもできます。

 当事務所は、風俗トラブルについて一貫して利用者(お客様側)の立場でご相談をお受けしています。ご家族や職場に知られることのないよう配慮して対応いたしますので、まずはお気軽にご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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