【不貞慰謝料】訴訟告知とは何か|後の求償に備える手続

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

不貞行為を理由とする慰謝料の請求は、不貞をした配偶者と、その相手方という二人に向けられます。もっとも、実際に裁判を起こされるのは、そのうちの一方だけということが少なくありません。訴えられた側は、判決で支払いを命じられた後に、もう一人へ分担を求めることを考えます。そのときに備えて、裁判が続いている間に打てる手として用意されているのが「訴訟告知」という手続です。
 ただ、訴訟告知は、分担を求める権利そのものを生み出す手続ではありません。この手続で得られるのは、後で分担を求める場面になったときに、同じ点をもう一度はじめから争われにくくなるという一点です。ここを取り違えると、告知さえしておけば後の回収まで見通しが立つ、という受け止め方になってしまいます。
 この記事では、訴訟告知という手続の中身と、それによって何が変わり、何は変わらないままなのかを整理します。分担を求める権利そのものの仕組み、割合の決まり方、示談書に置く条項の作り方、話し合いの段階での進め方については、それぞれ別の記事で扱います。

訴訟告知とはどのような手続か

 訴訟告知とは、裁判をしている当事者が、その裁判に参加することのできる第三者に対して、裁判が続いていることを知らせる手続です(民事訴訟法53条1項)。知らせる側を告知者、知らせを受ける側を被告知者と呼びます。

知らせるのは裁判所を通じて行う

 告知は、当事者どうしの連絡ではありません。告知の理由と、訴訟がどの段階まで進んでいるかを書いた書面を、裁判所に提出して行います(民事訴訟法53条3項)。告知の理由には、被告知者がその裁判の結果とどのような関わりを持つのかを書き、訴訟の程度には、どの裁判所で審理が行われ、期日がどこまで進み、次はいつなのかといったことを書きます。
 提出された書面は、裁判所を通じて被告知者のもとに届けられ、裁判の相手方にも写しが送られます(民事訴訟規則22条)。つまり、告知を受ける人の生活の場に、裁判所からの郵便が届くことになります。この点は、手続の効果を考えるうえでも、関係する人の受け止め方を考えるうえでも見落とせない部分です。

参加を求めるものではなく、機会を知らせるもの

 訴訟告知を受けたからといって、その人が裁判の当事者になるわけではありません。参加するかどうかは被告知者が決めることで、参加しないという選択も認められています。参加する場合には、当事者の一方を助けるかたちで加わる補助参加という方法が中心になります(民事訴訟法42条)。
 言い換えると、訴訟告知は、第三者を裁判の中へ引き込む手続ではなく、参加する機会があったという事実を作っておく手続です。この「機会があった」という点が、後で述べる効力の土台になります。

告知できる相手は限られている

 訴訟告知は、誰に対してでもできるわけではありません。条文は「参加することができる第三者」と定めており、その裁判の結果について法律上の関わりを持つ人に限られます。
 不貞の慰謝料請求でいえば、一緒に不貞をしたとされるもう一人がこれにあたります。これに対して、相手の親や勤務先、過去の交際相手といった人は、裁判の結果によって法律上の立場が動くわけではないため、告知の相手にはなりません。

不貞の慰謝料請求では、誰が誰に告知するのか

 不貞の慰謝料は、二人が一緒に負う責任として組み立てられています。そのため、片方だけが訴えられた場面で、訴訟告知が検討されることになります。

場面告知する側告知を受ける側
不貞相手だけが訴えられている被告となった不貞相手不貞をしたとされる配偶者
不貞をした配偶者だけが訴えられている被告となった配偶者不貞相手とされる人
二人がまとめて訴えられている二人とも当事者であり、告知の場面ではない


多いのは、訴えられた不貞相手からの告知

 実務で見かけることが多いのは、表の1行目の場面です。婚姻関係を続けるつもりで、自分の配偶者には請求せず相手方にだけ請求するという選び方をした結果、裁判の当事者が二人だけになります。訴えられた側から見れば、判決で支払いを命じられても、一緒に不貞をしたとされる相手はその裁判の外にいることになります。
 この状態で判決が確定し、支払いを済ませた後に分担を求めると、相手方から「そもそも不貞行為はなかった」「婚姻関係はすでに壊れていた」といった言い分が改めて出てくることがあります。訴訟告知は、この言い分の出方をあらかじめ狭めておくために使われます。

二人が同じ裁判で被告になっている場合は出番がない

 請求する側が二人まとめて訴えた場合、どちらも当事者ですから、第三者への告知という場面は生じません。この場合は、同じ裁判の中で双方の言い分が出そろうことになります。

請求する側から告知することもできる

 条文は「当事者は」と定めていますので、原告の側から告知することも制度上は可能です。ただ、不貞の慰謝料では、判決の結果を引き受ける立場にあるのが訴えられた側であることから、被告の側から行われることが中心になります。

訴訟告知をすると何が変わるのか

 訴訟告知の効き目は、その裁判の中ではなく、その後にやってくる場面に現れます。ここが、この手続について誤解の生じやすいところです。

参加しなかった場合も「参加したもの」として扱われる

 訴訟告知を受けた人が参加しなかった場合でも、参加することができた時に参加したものとみなされます(民事訴訟法53条4項)。そのうえで、補助参加をした人に判決の効力が及ぶという規定(民事訴訟法46条)が働きます。この効力は、実務上「参加的効力」と呼ばれています。
 名前は難しく見えますが、内容はそれほど複雑ではありません。参加する機会が与えられていたのだから、後になってその裁判の判断は間違っていたと言い出すことはできない、という考え方です。

効力が働くのは、後で分担を求める場面

 参加的効力は、告知をした裁判の中で被告知者に何かを命じるものではありません。判決の主文で支払いを命じられるのは、その裁判の当事者だけです。訴訟告知を受けた人が、その判決によって直接に支払義務を負うわけではありません。
 効力が姿を現すのは、告知者が支払いを済ませ、被告知者に対して分担を求めるという次の場面です。そこで前の裁判の判断と食い違う主張が出しにくくなる、という働き方をします。訴訟告知は、お金や権利を手に入れる手続ではなく、後の話の前提を動きにくくしておく手続だと理解しておくと、期待とのずれが生じにくくなります。

結論だけでなく、理由の部分にも及ぶとされている

 判決には、支払いを命じるかどうかという結論の部分と、なぜそう判断したのかという理由の部分があります。参加的効力は、結論だけでなく理由の中の判断にも及ぶと考えられています。
 不貞の事案では、この点が実際的な意味を持ちます。不貞行為があったといえるかどうか、婚姻関係がどのような状態だったか、既婚であることを知っていたといえるかといった判断は、いずれも理由の部分に書かれるからです。

何が争えなくなり、何が残るのか

 訴訟告知をしておくと、後の場面で相手から返ってくる言い分の種類が変わります。ただ、すべてが片づくわけではありません。整理すると次のようになります。

後の場面で出てくる言い分訴訟告知をしていた場合の扱い
不貞行為はなかった前の裁判の判断と違うことを述べにくくなる
婚姻関係はすでに壊れていた同じく、述べにくくなる
既婚であることを知らなかった同じく、述べにくくなる
分担の割合はもっと少ないはずだ前の裁判では決まっていないため、改めて話し合うことになる
そもそも支払いを済ませたのか前の裁判とは別に、支払いの事実を示す必要がある


金額が決まることと、分担が決まることは別

 請求してきた側との裁判で決まるのは、その人に対していくら支払うのかという点です。二人の間で内側の負担をどう分けるのかは、その裁判の争点になっていないため、判決には書かれません。
 したがって、訴訟告知をしてあっても、分担の割合まで固まるわけではありません。割合をどう考えるかは、それ自体が別の議論になります。この点は、割合の決まり方を扱った記事で詳しく整理しています。

支払ったという事実は、自分で示すことになる

 分担を求めるには、判決で命じられた金額を実際に支払ったことが出発点になります。前の裁判の記録には、支払いを済ませたかどうかまでは残りません。振込の控えや領収に関する書面など、支払いを示す資料は、自分の側で残しておくことになります。

告知をすれば効力が生じるとは限らない

 訴訟告知は書面を出せば済む手続ですが、出したからといって、いつでも思ったとおりの効力が生じるわけではありません。解説の中には、告知をしておけば後の争いを封じられるという書き方も見られますが、実際にはいくつかの条件があります。

参加できる立場にあることが前提になる

 参加的効力は、被告知者がその裁判に補助参加できる立場にあることを前提としています。裁判の結果について法律上の関わりを持たない人に告知をしても、この効力は生じないと考えられています。
 不貞の事案では、一緒に不貞をしたとされる相手であれば、判決の内容によって分担を求められる立場に立ちますので、この前提は満たされやすいといえます。もっとも、そもそも一緒に不貞をしたという関係自体が争われている場合には、前提の部分から議論になることがあります。

効力が及ばない場合が条文に定められている

 民事訴訟法46条は、補助参加をした人に判決の効力が及ぶと定めたうえで、及ばない場合を四つ挙げています。おおまかにいえば、参加した時期の関係でその訴訟行為ができなかったとき、助けられる側の行動とぶつかったために効力を持たなかったとき、助けられる側が参加人の行動を妨げたとき、そして助けられる側が、参加人にはできない行動をわざと、または不注意でしなかったときです。
 これらは、参加した人が力を尽くす機会を持てなかった場面を拾い上げたものです。裏返せば、告知者の側の進め方に問題があった場合には、後になって被告知者から、その点を理由に効力を争われる余地が残るということでもあります。

告知が遅いほど、及ぶ範囲は狭くなりやすい

 条文は「参加することができた時に参加したものとみなす」と定めています。ここでいう時点は、書面が届いた瞬間そのものではなく、届いた後に準備をするための期間を見込んで判断されると考えられています。
 この時点が訴訟の終盤に寄るほど、その時点より前に行われた手続については、参加していても関与しようがなかったという評価につながります。結果として、後で及ぶ効力の中身も限られたものになりやすくなります。
 訴訟告知のタイミングについては、答弁書を出した後に行うことが多いと説明されることがあります。争点が見えてから知らせたほうが、被告知者としても参加の可否を判断しやすいためです。ただ、これは進め方の便宜だけの問題ではなく、遅らせるほど、後で使える効力そのものが薄くなりうるという問題でもあります。どの段階で告知するかは、その裁判の進み方を見ながら決めることになります。

言い分が正面からぶつかる場合

 告知者と被告知者は、いつも同じ方向を向いているとは限りません。不貞の事案では、どちらが誘ったのか、どちらが積極的だったのかをめぐって、二人の説明が食い違うことがあります。
 このように利害が正面から対立している場面で、参加的効力がそのまま働くのかについては、考え方が分かれています。告知をしておけばこの先の争いが収まる、と決めてかかることはできない部分です。

訴訟告知を受けた側は何を考えるのか

 ある日、裁判所から見慣れない書面が届き、自分が当事者になっていない裁判の存在を知らされる。訴訟告知を受ける側から見れば、そのような場面になります。

参加しなければ効力を免れる、という関係ではない

 届いた書面を放っておけば関わらずに済む、と受け止められることがあります。しかし条文の作りはその逆で、参加しなかった場合にも、参加することができた時に参加したものとみなされます。何もしないことが、後の場面で有利に働くとは限りません。

参加すると、自分の側の事実を述べることになる

 一方で、参加すれば負担がないというわけでもありません。参加して主張や立証を行えば、そこで述べたことは記録に残ります。場合によっては、法廷で質問を受けることもあります。不貞そのものが争われている裁判に加わると、自分の説明が、不貞があったという判断の材料になることも考えられます。
 参加しない場合でも、証人として呼ばれる可能性は残ります。参加するかどうかは、この点も含めて考えることになります。

どちらを助けるために参加するのか

 補助参加は、当事者のどちらか一方を助けるかたちで行います。婚姻関係を続けたいのか、すでに別の方向を向いているのかによって、参加するかどうかも、どちら側に加わるかも変わってきます。参加するかしないかという態度そのものが、関係者に一つの答えとして伝わる面もあります。

  1. 届いた書面のうち、告知の理由と訴訟の程度が書かれた部分を読み、何が争われているのかを確かめる。
  2. 自分がその裁判の結果によってどのような立場に立つのかを整理する。
  3. 参加した場合と参加しなかった場合とで、後にどのような話が控えているのかを比べる。
  4. 期日が近い場合は、判断に使える時間が限られるため、早めに相談先を確保する。


請求した側から見た訴訟告知

 訴訟告知は、請求した側にとっても他人事ではありません。自分が起こした裁判の中で、自分の配偶者に書面が届くことになるからです。

自分の配偶者のもとに裁判所からの書面が届く

 配偶者には請求せず、相手方にだけ請求するという選び方をしていた場合でも、被告から訴訟告知がされれば、配偶者のもとに裁判所を経由した書面が届きます。伏せたまま進めるつもりだった事情が、この段階で表に出ることもあります。家族に知られないように進めたいという事情がある場合は、この可能性を織り込んでおく必要があります。

婚姻を続けるかどうかで受け止め方が変わる

 婚姻関係を続けていく場合、受け取った金額の一部が、後に配偶者から相手方へ渡ることになれば、家計全体で見たときの結果は変わってきます。他方、離婚に向かう場合には、二人の間の清算がどうなるかは、請求した側の手取りに直結しません。
 訴訟告知がされたときにどう受け止めるかは、この違いによって変わります。相手方の言い分に反発する前に、自分の側の見通しを確かめておくほうが、判断はぶれにくくなります。

和解の話が動くことがある

 配偶者が裁判の存在を知り、参加するかどうかを考えはじめると、話し合いの構図が変わることがあります。三人の間で一度に区切りをつける方向に進むこともあれば、逆に感情の面でこじれることもあります。告知がされたからといって、結論を急ぐ必要はありません。

訴訟告知でできないこと

 最後に、この手続の外側にある事柄を確認しておきます。

話し合いの段階では使えない

 訴訟告知は、訴訟が続いている間に限って行うことができます。内容証明でのやり取りや、示談の話し合いをしている段階では、この手続を使うことはできません。裁判にならずに終わる事案のほうが多いことを考えると、訴訟告知が出てくる場面はそれほど広くありません。
 話し合いの段階で、後の分担について取り決めておきたい場合には、書面の中で分担に関する定めを置く、三人で一つの合意にまとめるといった別の方法を検討することになります。これらは示談書の作り方を扱った記事で整理しています。

分担してもらえるかどうかは別の問題

 訴訟告知をしても、相手が進んで支払ってくれるとは限りません。後の場面で言い分が狭まることと、実際にお金が戻ってくることは、別の話です。相手に支払う力がなければ、権利として残っていても、手元に届かないことはあります。
 また、分担を求めるということは、こちらから連絡を取り、書面を送る行動を続けるということでもあります。示談で接触に関する取り決めをしている場合には、その内容との関係も考える必要があります。

よくあるご質問


訴訟告知をすると、相手にも支払いが命じられるのですか

 いいえ。訴訟告知は、参加の機会を知らせる手続です。判決の主文で支払いを命じられるのは、その裁判の当事者に限られます。分担を求めるには、支払いを済ませたうえで、改めて相手に請求することになります。

訴訟告知を受けましたが、放っておいてもよいのでしょうか

 参加するかどうかは自由ですが、参加しなかった場合にも効力が及ぶ仕組みになっています。放っておくと、後で分担を求められたときに、前の裁判の判断を前提に話が進むことになります。まずは書面に書かれた告知の理由と訴訟の程度を読み、何が争われているのかを確かめることをおすすめします。

話し合いの段階でも訴訟告知はできますか

 できません。訴訟が続いていることが前提となる手続だからです。話し合いの段階で同じような結果を求めるのであれば、合意書の中に分担に関する定めを置く、三人で一つの合意にまとめるといった方法を検討することになります。

まとめ


  1. 訴訟告知は、裁判に参加できる第三者に、裁判が続いていることを裁判所を通じて知らせる手続である。
  2. 書面は裁判所から知らせを受ける人に届けられ、裁判の相手方にも写しが送られる。
  3. 参加するかどうかは知らせを受けた側の自由だが、参加しなかった場合にも、参加することができた時に参加したものとみなされる。
  4. 効力が働くのは、支払いを済ませた後に分担を求める場面であり、その裁判の中で相手に支払いが命じられるわけではない。
  5. 判決の結論だけでなく、理由の中の判断にも及ぶと考えられている。
  6. 分担の割合までが決まるわけではなく、その点は改めて話し合うことになる。
  7. 告知が遅いほど、後で及ぶ効力の範囲は狭くなりやすい。
  8. 話し合いの段階では使えないため、その場合は書面での取り決めなど別の方法を考えることになる。


ご相談について

 訴訟告知をするかどうか、また告知を受けたときにどう動くかは、その裁判で何が争われているのか、支払いの後にどこまで見通しを立てているのかによって答えが変わります。書面を出すこと自体は難しくありませんが、時期の選び方や記載の仕方によって、後に残る効力の中身は変わってきます。
 弁護士法人若井綜合法律事務所では、男女間のトラブルに関するご相談をお受けしています。裁判所から書面が届いた、これから裁判になりそうだといった段階でも構いませんので、判断に使える時間があるうちにご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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