マナーうんちく話604≪武士は食わねど高楊枝≫
今まで「二十四節気」と「七十二候」に触れてきましたが、四季が織りなす日本の気候は実に複雑多様で、これだけで完全というわけには参りません。
例えば「梅雨」や「台風」といった日本ならではの季節の変化は、中国の黄河流域の気候を基準に考えられた二十四節気や七十二候では表現されていません。
そこで二十四節気や七十二候の暦を補完する目的で作られたのが「雑節」です。
今回は日本独自の季節の推移を表す目安になる「雑節」に触れておきます。
それぞれの雑節は、個別で「マナーうんちく話」で詳しく触れていますが、ここではそれらを順に簡単にまとめておきますので、是非参考にして下さい。
●節分(2月3日頃)
最近では春(立春)の前日の節分だけが有名で、邪気払いを目的とした「豆まき」をしたり、幸運を呼び込むための「恵方巻」を食す人が多いようです。
ただ本来節分とは、立春・立夏・立秋・立冬の前日を指す言葉です。
つまり節分は一年に4回ある季節の移り変わりということです。
●彼岸(3月20日頃と9月22日頃)
彼岸には「春の彼岸」と「秋の彼岸」があります。
春の彼岸は二十四節気の春分の日、秋の彼岸は二十四節気の秋分の日を中心として前後3日の計7日間で、いずれも昼の長さと夜の長さが同じになる日です。
ちなみに「春の七草」は食用で、「秋の七草」は観賞用です。
※「春分の日」と「彼岸」の関係については、後日3月の歳時記で詳しく触れます。
是非参考にして下さい。
●社日(3月20日頃と9月26日頃)
雑節の中ではなじみが薄いかもしれませんが、土地を守って下さる神様に五穀豊穣を祈願するとともに、感謝するとても大事な日本の伝統行事です。
年に二回、春分の日と秋分の日に最も近い戊(つちのえ・十干の一つ》の日に行われる行事で、春は五穀豊穣を祈願し、秋は豊作に感謝します。
●土用(立春・立夏・立秋・立冬の前18日間)
最近は夏の土用(立秋の直前)の「土用丑の日」に鰻を食べることで知られていますが、本来は立春・立夏・立秋・立冬の直前18日間を指し、土いじりなどを避ける日とされています。
年に4日ある土用は季節の節目に当たるので、特に体調管理が大事な時でもあります。
●八十八夜(5月2日頃)
日本では「八」は末広がりの縁起の良い数字で、その八が二つ重なる「八十八夜」は大変縁起が良く、この日に摘んだ茶葉を飲むと無病息災、長寿につながると信じられています。
一年の起点は立春ですから、立春から数えて88日目です。
以前は種まきや苗を植える目安になった日ですが、最近は苗が早くから市場に出回るのでもっと早くなっています。
販売する側の営業戦略と温暖化の影響が大きいです。
●入梅(6月11日頃)
梅が熟す頃に降る長雨を「梅雨」と表現しますが、その梅雨入りを示す言葉です。
暦の上では「梅雨入り」を意味し、それから約30日間が「梅雨」ということになりますが、暦の上と現実は異なる方が多いです。
また「入梅」の対義語は「出梅」もしくは「梅雨明け」です。
高温多湿で食中毒等に注意が必要な時です。
●半夏生(7月2日頃)
社日とともにあまり耳にしたり、口にすることのない雑節ですが、昔は田植えを終える目安になっていました。
半夏という名は夏の中頃に花が咲く「カラスビシャク」という植物を採取するので、その名がついたといわれています。農作業の目安になる大切な日ですが、空から毒気が降りるので、井戸に蓋をしたり、農作業で疲れた体を癒す時期でもあります。・
●二百十日(9月1日頃)
立春から数えて210日目で、強風が吹く頃とされています。
漁業や農業にとって、注意が必要な時です。
現在は天気予報がありますが、昔は経験的にこの日は要注意日だったわけです。
●二百二十日(9月10日頃)
立春から数えて210日目ですが、現在でも台風シーズンです。
収穫を控えた稲が強風で被害にあわないよう、特に注意が必要な時期でもあります。
ちなみに「八朔(マナーうんちく話1015)」「二百十日」「二百二十日」を併せて「農家の3大厄日」と言います。
各地で風をおさめる行事が開催される時期でもあります。
以上ですが、これらは日本人の長年の経験や生活文化の中から考え出された、いわば知恵の結晶であり、具体的な農作業や自然のサイクルと、より密接に関わっているので、AI全盛の今でも様々な行事や風習として根強く残っています。
由来や意味を正しく理解し、豊かな生活を目指したいものです。



