マナーうんちく話2268《人生の実りと収穫を謳歌したい「白い秋」》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:超高齢社会に対応するマナー

四季が豊かで、国土の7割以上が山林で占められている日本では、四季折々の山の風情に大きな変化が見られます。

先人は、山の様子を人の動作に例えて擬人化して、それぞれの季節の表情に素敵な名前を付けて表現しています。

新芽が芽吹き多くの花が咲きほころぶ春は「山笑う」、緑に濃さが増しつややかな葉っぱで覆われる夏は「山滴る(やましたたる)」、葉っぱが紅葉してまるで女性がお化粧したようになる秋は「山装う」、そして木枯らしで葉っぱが舞い散り閑散とした冬は「山眠る」。

一方中国の五行思想では四季を色で分類していますが、春は青、夏は赤(朱)、冬は黒で、秋は白です。

「青い春」に対して「白い秋」と言うことです。

青い春、つまり「青春」という言葉はここからきていますが、白い秋と言えば北原白秋の白い秋もそうでしょう。

民族により色の感覚は異なると思いますが、日本人の感覚なら、秋は茶色、黄色、橙色が多いのではないでしょうか?

しかし、中国の陰陽五行説が起源だと思いますが、白は秋の季節用語で「白秋」です。

《石山の 石より白し 秋の風》という芭蕉の句があります。

ほのかに吹く秋風が、目の前の岩肌より白く感じられるという意味ですが、もちろん風が白く見えるわけではありません。

白は透き通るようなものを指し、無色透明な静寂な感じを漂わせる色とされています。
奥が深いですね。


また秋は美しい紅葉の季節ですが、美人薄命といわれるように美しい期間は短く、やがて枯れ葉となって舞い散ります。

このように秋は、もののあわれを感じる季節であり、詩情溢れる頃でもあるので、詩人が北原白秋と名付けたのは、すばらしいと思います。


ところで人の一生も、四季に例えられますが、捉え方は人により様々です。

私のように高齢期を迎えたものに対しては、「人生の秋」という言葉が使われます。

長い人生の終わる日が近くなっている状況や心境を示す言葉で、一抹の侘しさを歪めませんが、不必要にネガティブに捉えることはないと思います。

確かに体力は衰え、身体的機能も衰弱しますし、シミやシワが増え、髪は薄くなり、リアルにこれから先が懸念されます。
加えて微々たる蓄えも底をつき、親しい人の訃報もとどきます。

こうなると「もうこれで終わり?」と、多くの喪失に見舞われることになります。

しかし捉え方次第で人生は明るくなります。

秋は実りの季節であり、収穫の季節です。

高齢期は人生の実りの秋、そして収穫期の秋ともいえます。
長年生きて、様々な経験を重ね、知識や知恵を蓄えてきたからこそ、多くの実りがあります。

しかも数えきれないくらい苦労を重ねてきたので、それが肥しになっているので、「実りの質」がとてもいいのが嬉しいです。
その実りを自分自身でも楽しみ、周囲にも分かち合うことができます。

また木枯らしに吹かれて散っていく落ち葉は、来年の春に向けての準備です。

「白い秋」を前向きにとらえたいものですね。

では、どうする?

「白い秋」を迎えたら、これまでの長年の人生を見つめ直し、そして自己理解を深め、価値観を見つめ直すのもいいと思います。

日々のささやかな生活に感謝することも必要です。

白い秋こそ《幸齢期》です。
人としておだやかな空気や佇まいをみせ、人生の実りを楽しんでいただきたいものです。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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