マナーうんちく話2264《食べ物は神々からの「賜りもの」を意識したい食欲の秋・新米の季節》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:日常生活におけるマナー

この時期の七十二候に「水始涸(みずはじめてかれる)」があります。

10月3日頃から7日頃で、田んぼの水を抜いて干すという意味です。つまり稲刈りの用意をするわけで、いよいよ本格的な収穫期を迎えるということです。

近くの田んぼの稲も首を垂れ、田んぼの水抜きが始まり、収穫を待つのみになっています。一事水不足が心配されましたが順調に育ち新米が楽しみです。

ただ米価が相変わらず高騰しており、日本人の主食である米の収穫期を迎えているにもかかわらず、安安と新米にありつけないとは、何とも情けない話ですね。

日本人にとって、「白いご飯を腹いっぱい食べたい」というのが長い間の夢だったわけですが、それが戦後の高度経済成長とともに叶い、やがて「飽食の国」ともいわれるようになった日本で、再び米が食えない状態に陥るとは、政治はなんのためにあるのでしょうね。

米、麦、粟、稗もしくは黍、豆の5種の穀物が豊かに実り、農作物が十分収穫できることを「豊穣(ほうじょう)」といいますが、中でも「瑞穂の国」という美称を持つ日本人にとって、米は最も大事な食べ物です。
だから「稲=命の根」とも呼ばれるわけです。

日本書記によると、八百万の神々の中で、最も尊い神様であり、あらゆる願いを聞き届け下さる天照大御神が、「これを育てて食べなさい」といって授けて下さったのが米であり、以来日本人は米とともに生活してきたわけですね。

天照大御神が日本の国を実り豊かにし、人々が飢えることなく安心して暮らせるようにして下さったお陰で命が繋がってきたわけですから、神事を執り行う時には、祭壇に水と塩の他に必ず米をお供えします。
餅や酒も神様は大好きですが、それらの原料も米です。


【神嘗祭】
「神嘗祭(かんなめさい)」とは、食事で神様をおもてなしする行事ですが、五穀豊穣に感謝して、初穂を天照大御神に奉る、伊勢神宮の中でも最も由緒ある重要なお祭りです。

ちなみに日本には何十万というお祭りが存在しますが、春に開催される祭りは豊作祈願が目的で、秋の祭りは豊作に感謝するために行われます。

今では農業技術も進化しそれほど苦労はないかもしれませんが、昔の米作りは88の手間暇がかかっています。
またいくら努力しても病気や災害などで、不作・凶作になることも多々あります。

従って無事収穫ができた時の喜びは、今と比較にならないほど大きかったと思います。

だから昔の人は、なにか機会があるごとに、あるいは節目・節目ごとに神様に感謝してきたのでしょう。

【食べ物は神様からの賜りもの】
「食べる」は「賜る」からきた言葉だといわれています。
つまり神様からの賜りものが「食べ物」ということです。

古今東西「生きることは食べること」ですが、そのために神に感謝しながら有難く食べたわけです。

フォークやナイフと同様、箸食の国では日本以外はほとんどの国で箸を縦に置きます。

しかし日本の箸は横に置きます。
これは「結界」を意味しますが、まさに神への敬意が込められているわけです。

食べる側の人は下座、食べ物へは敬意を払い上座に位置していただくわけです。
恐らく日本独特の考え方で、この理屈を理解すれば食べ物を自然に大切にすることができます。

残念ながら今の日本では自国の文化や作法に無頓着すぎる気がします。
文化を知るには、まず作法からだと思っています。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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