マナーうんちく話2262《どう思う?スマホながら飯。一回一動作のすすめ》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:日常生活におけるマナー

日本は四季が明確に分かれているので、季節により衣服や食べ物が変わる文化がありますが、暑い時期は、ビタミン、ミネラル、タンパク質等が豊富で、夏バテに効く食べ物がうれしいですね。

四季が豊かで、四方を海で囲まれ、国土の約75%を山林が占め、南北に細長い日本には海、山、里の食材が豊かで、地域に根差した多様な食文化が発達しました。
さらに調理技術や調理用具も発達し、日本独特の気候風土の中で、自然の美しさや、四季の移ろいを見事に表現した和食が育まれてきました。
豊かな自然に、自然を敬い感謝する日本人の心が単なる「食」を「文化」に昇華させたわけです。
そしてその和食は2013年にユネスコの無形文化遺産に登録されました。
ミシュランガイドの星も多く獲得して、今や和食は世界でも大人気になりましたが、国際化やデジタル化などの影響を多く受け、日本人の食生活は急速に変化しています。
あらゆる世代で一人暮らしが増えたことで「孤食」が増大し、それに伴い、スマホを見ながら食事をする「スマホ見ながら飯」が増えたのも大きな特徴でしょう。

●「スマホ見ながら飯」の食に対する影響
今から半世紀ほど前に「歩行者天国」が生まれ、それにマクドナルドの日本進出やカップヌードルの誕生により、日本の食文化は大きく変化してきました。
今ほど物質的にも豊かでなく、便利でもなかった頃の日本では食に対してとても真摯に対応していた気がします。
戦国時代に戦争の合間に作業をしながら握り飯を食べることはあったものの、日常生活の中で、街中を歩きながら、食べ物を口にすることは公共のマナーに反する行為とされていたようですが、それから半世紀たった今、時代の流れといってしまえばそれだけですが、本当にこれでいいのでしょうか。
確かに幼いころからスマホに慣れ親しんでいる若い世代にとって、「スマホ見ながら飯」は時間の有効活用、退屈しのぎ、孤食の寂しさからの紛らわしになるかもしれないけど、それによるリスクの方がはるかに大きいと思うのですが・・・。

●「スマホ見ながら飯」が食事に及ぼす影響
先ず食事に集中出来ないので、満腹感が感じられなく食べすぎになる恐れがあります。
また咀嚼回数が減り、その結果消化不良、栄養不足、メタボの発症、虫歯や歯槽膿漏、誤嚥性肺炎などなど健康へのリスクは大きくなりそうですね。
また精神的にも悪影響が多々あるでしょう。
古今東西「生きることは食べること」であり、食べることは生活の柱に据えられています。
今は世界には数えきれないくらいの食べ物があり、食文化がありますが、いずれも「食事とは食べ物と真摯に向き合うこと」であり「食材や料理に関わった人への感謝」で、美味しく、楽しく食べることです。
まして日本には食前・食後に食材の命に感謝する言葉と、料理に関わってくれた人への感謝の言葉が存在する国です。
それだけは守りたいものですね。

●マナーの不易流行性
食料自給率がカロリーベースで38%しかない日本は、いつの間にか世界屈指の美食の国になり、お金を出せばいつでも好きなものが口にできます。
和食も10年以上前にユネスコの無形文化遺産に登録されています。
ミシュランガイドの星を獲得している店も世界最多で、多彩なグルメを目的とした外国からの観光客も後を絶ちません。
すばらしいことだとおもいます。
しかし「飽食の国」とか「崩食の国」と呼ばれるようになり、様々な弊害が生まれています。
例えば食事に無関心な親が増え、孤食や食事の楽しさを知らない子が増えています。
「お袋の味」や「心通う一家だんらんの食事」は死語になりつつあります。
私は30年以上和食と洋食のテーブルマナーに関わっていますが、今ではテーブルマナーも贅沢なものになっている気がします。

ところでマナーの世界には「一回一動作」があります。
今、この動作に全てを集中し、「…ながら動作」をしないことです。
食事もしかりです。
食材の命に感謝しながら食事と丁寧に向き合うことは、世界屈指の長寿の人生を豊かに生きることにつながるのではないでしょうか。
世界中で約73000万の人が飢餓に陥っている現状下、食への敬意をなくした「スマホ見ながら飯」は、日本人の大切なものを失っているような気がしてなりません。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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