マナーうんちく話622≪世界平和記念日と日本の礼儀作法≫
曹洞宗の開祖道元は「春は花、夏はホトトギス、秋は月、冬は雪・・・」といっていますが、秋は一年で最も月が美しい季節ですね。
また私が住んでいる晴れの国岡山では、今年の「中秋の名月」も「十六夜の月」も好天に恵まれラッキーでした。
10月の「十三夜」の月が楽しみです。
そして虫の音も美しい時節で、俳句では「虫」は秋の季語です。
都会のマンション暮らしでは味わうことができないでしょうが、田舎暮らしはごく自然に、美しい月や虫の音を楽しむことができます。
風鈴や風の音や小川のせせらぎ、そして鈴虫や松虫の鳴き声を聞いて、ただの雑音として捉えるか、とても心地よいと感じるかでは雲泥の差があります。
虫の声や月を愛でることは、日本人にとって古くから慣れ親しまれた風習であり、世界的にも大変ユニークな文化でしょう。
日本人が自然と真摯に向き合い、共生を試みた結果、身についた豊かな感性ではないでしょうか。
さらに日本人は聖徳太子が「和を以て貴しとなす」と説いて以来、人間関係の「和」をとても大切にしてきました。
稲作で培われたのでしょうか、共同体意識を有し、礼節を重んじます。
自分だけでなく、常に相手に対する思いやりを大切にしてきました。
例えば殆どの公衆便所も清潔に保たれ、トイレットペーパーが備え付けられ、一輪の季節の花が活けているところも珍しくありません。
この一輪の季節の花は、まさに日本人の「もてなしの心」そのものではないでしょうか?
日本人の「もてなしの心」は、和の精神に基づいた日本人特有の感性かもしれませんね。
ちなみに「感性」とは知覚的能力の一つで、物事を見たり聞いたりしたときに感じる能力と思って頂けたらいいと思います。
また「感性が豊かな人」とは、物事を深く感じとる力がある人ですね。
●古くから根付いている「もてなし」の文化
日本を代表する伝統的な感性は「相手に対する敬意や感謝や思いやり」を始め「伝統的風習」、さらには「家族や地域社会とのつながりを大事にし、調和と協調」を大切にすることなどがあげられるでしょう。
そして日本のおもてなしは大変幅広い所で見られます。
茶道にみられるおもてなしは有名ですが、これはごく限られた方が対象です。
その点昔は、風呂に招くことが庶民への最高のもてなしであったようです。
さらに「日本庭園」や江戸時代の「髪結い」や「歌舞伎」、旅行に出かけた時の「お土産」なども最高のもてなし文化といえるのではと考えます。
日本の「和食」も忘れてはいけません。
最近外国人観光客に話題になっている日本の「飲食店のもてなし」はとくに有名ですね。
店に入るとスタッフが明るい声に笑顔を添えて「いらっしゃいませ」と明るく迎えてくれます。
そして冷たい水やお絞りを出してくれます。
これらはすべて無料です。
料理の説明を丁寧にしてくれる店もあれば、無くなりかけたグラスの水を継ぎ足してくれる店もあります。
帰りには丁寧にお見送りもしてくれます。
●どこに行った?「三方よし」「名こそ惜しけれ」の精神
日本の飲食店のこれらのサービスは、店主がいかにお客様におもてなしの精神を発揮したかが理解できますが、その根底には「近江商人の三方よし」の精神があったからではないでしょうか。
※(マナーうんちく話807《「三方よし」の精神と「おもてなし」》
売り手よし、買い手よし、世間よしの精神で、自分だけがいい思いをするのではなく、常に相手のことを考慮して行動する心が大切ということでしょう。
モノづくりに携わる職人のプライドもそうだと思います。
武士の美学でもあった「名こそ惜しけり」という言葉があります。
昔から何か悪いことをすると「お天道様が見ている」といわれましたが、ご先祖様や世間様に対して恥ずかしいことをするなという戒めです。
この言葉は明治に入り一般庶民にも浸透したそうで、勤勉で礼節を重んじ、利己より利他の精神を大事にする風潮が根付いたのも確かだと思います。
世界に誇る素晴らしい文化だと思いますが、最近はこれに背くことがあまりにも多くなった気がしてなりません。
裏金作りや統一教会とタッグを組んで不祥事を働いた議員が大勢出ましたね。
民間企業でも日本を代表する企業の不正も次々と発覚しています。
情けない限りで、それこそ「恥を知れ」ですね・・・。
ちなみに明治の陸軍大将で、日露戦争で多大な功績を収めた乃木希典の「恥を知れ、道に外れたことをして恥を知らないのは禽獣に劣る」という名言があります。
人としての倫理観や、恥を知ることの大切さを説いた言葉で、不祥事続きの令和の今、大変参考になる言葉だと思います」。
儲かれば何をしてもいいわけではないということですね。
ただ人は聖人君子ばかりではありません。
時として道を外れることもあります。
その時は「ごめんねさい」といえるようになりたいものですね。
しらぬ、存ぜぬ、記憶にありませんでは情けなさすぎると思うのですが・・・。