マナーうんちく話500≪継続は力なり、500回ありがとう!≫
田舎に住んでいると心地よさが実感できますが、新緑に風薫る季節を迎えました。
「風薫る」は夏の季語ですが、四方を山で囲まれた地域で暮らしていると、青々と茂った樹木の間を吹き抜ける爽やかな風を、毎日体全体で感じることができ、心と身体が癒されます。
同時に百花繚乱の季節でもありますが、この時期には春のフィナーレを飾る「牡丹」が見ごろを迎えます。
牡丹の「牡」はオスで、「丹」は赤いという意味です。
強烈な赤い色をした存在感のある花という意味で「百花の王様」と呼ばれています。
続いて芍薬が咲きますが、芍薬は百花の「女王様」の異名を持つだけあって、牡丹も芍薬も非常によく似ています。
「菖蒲(あやめ)」と「杜若(かきつばた)」のような関係ですね。
ところで牡丹に芍薬とくれば、次は「百合の花」ですが、百合は茎に比べ花がとても大きいので、風に吹かれてユラユラ揺れるから、「揺れる」が百合になったといわれています。
お節料理や茶わん蒸しによく使用されますが、「百合」の球根は、多くの鱗片が絡み合っているので「百合」となったようです。
多くの種類がある百合ですが、私が住んでいる地域にある「自然保護センター」では「笹百合」が自生しており、毎年時期になると見学に訪れます。
江戸時代の諺で「立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花」がありますが、着物姿の日本人女性の立ち居振る舞いの美しさを褒め称えた言葉です。
江戸末期から明治にかけて、日本を訪れた欧米の高官たちは、日本人女性の貧しくも凛とした美しさに感動したといわれますが、日本に来て日本人女性の美しさに惹かれ、一緒になった人も結構いたらしく、シーボルトやラフカディオハーンは有名ですね。
着物を着た女性が凛として畳に正座している姿は世界一美しいといわれたそうですが、国際化、デジタル化の中で、日本人は先人が培ってきた素晴らしい文化を沢山失ってきた気がしてなりません。
いくら便利で物質的に豊かになっても、これでは幸せになれないだろうと思うのですが・・・。
日本人の幸福度がお世辞にもよくないのがわかる気がします。
また初夏の陽光が新緑を輝かせる頃の句に「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」がありますが、春を告げる鳥の「鶯」の鳴き声はよく聞くことができますが、夏を告げるほととぎすの声はよくわかりません。
徳川家康は「鳴かぬなら 鳴くまで待とう ほととぎす」と詠んでいますが、ほととぎすは「田長鳥(たおさどり)」と呼ばれ、田植えの時期を知らせてくれる鳥でもあります。
そして5月2日は「八十八夜」です。
夏も近づく八十八夜とうたわれていますが、八十八夜は「雑節」の一つで立春から数えて88日目です。
雑節とは季節が変わる目安になる日ですが、二十四節気ではありません。
八十八夜はまさに春から夏に変化する時期ですね。
計算機もパソコンもAIにも無縁だった頃、長年の経験と自然観察力で生まれた先人の暮らしの知恵でしょう。
それだけ自然に寄り添った生活をしていたということですね。
八十八夜の次は「入梅」「半夏生」「土用」と続きますが、いずれも「マナーうんちく話」で詳しく触れています。
「米」という漢字を分解すると「八」「十」「八」となり、稲作で栄えた日本では、大変縁起がいい数字です。
「八」は昔から末広がりにも通じるといわれています。
「五風十雨」と呼ばれるように、この時期は天候も安定し、霜の心配もなくなるので、八十八夜に米作りをスタートすると、豊作に恵まれると信じられてきました。
農業にとっての吉日ということです。
加えて新茶がおいしい時期で、特に八十八夜に摘まれたお茶は、寿命が伸び、縁起がいいとされています。
体にも心にも染み渡る縁起ものとして、神仏へのお供えや贈り物にいいと思います。
旧暦では5月は「皐月」、6月は「水無月」で、いずれも米作りにちなんで名付けられています。
そして、この時期のよく目や耳にする言葉に「薫風自南来(くんぷうみなみよりきたる)」があります。
今年も我が家には燕がやってきましたが、毎年のことながら、この時期には来てくれます。
薫風もしかりで、当たり前のように爽やかな風が南からやってきますが、自然の情景をしめす言葉と同時に、当たり前のことを、当たり前のように行うことが、幸せに生きるための秘訣だということを教えてくれる言葉だと思います。
「凡事徹底」という言葉があります。
先ずは目標を定め、日々やらなければいけないことを明確にし、それに向けてコツコツ努力を続けることも大切ではないでしょうか。
継続が大事だということです。
平凡すぎて「人生訓」にはならないと思う人もいると思います。
ただ年を重ねたり、病気になったりすれば、やりたくてもやれなくなってきます。
そうなるとこの言葉の意味がひしひしと理解できるかもしれませんね。
和室での立ち居振る舞いなどを中心とした、「和の礼儀作法講座」を当たり前のように毎年開催していたのですが、コロナで3年休んだら、これから始めるのが難しくなってきました。
足腰が弱り、長時間の正座が厳しくなってきたわけです。
マナー講師として当たり前のようにできていたことが、できなくなるのは寂しい気がしますが仕方ないです。
今年は特に暑くなりそうですが、今のうちに初夏の心地よい風を満喫し、水分補給、紫外線対策、それにコロナにも注意して元気でお過ごしください。