マナーうんちく話622≪世界平和記念日と日本の礼儀作法≫
四季が豊かな日本では、和食にせよ、和菓子にせよ季節感をとても大切にします。
従ってこれらをいただくときには、季節を味わったり、見た目を楽しんだり、繊細な美しさに感心したりしながらいただきたいものですね。
敬語を学ぶのと同じように、美味しい和菓子を頂く際にも豊かな感性があればいいということです。
特に春のめでたい席で出された時に、どのような言葉が発せられるかです。
教養や人柄はこのようなところに現れます。
ところで日本の和菓子は「生菓子」「半生菓子」「干菓子」がありますが、西洋のデザートのようにフォークやナイフは使用しません。
手で頂く干菓子以外は、黒文字使用が多いのですが、これにはそれなりの理由があります。
黒文字はほとんどの山でも手に入ります。
私も山に行くことが結構あるので、黒文字を見つけたら折って持ち帰り、小刀で自分流の爪楊枝を作ります。
黒文字は黒い斑点が多く、昔の人はそれを文字に見立て「黒文字」と呼ぶようになったのですが、香りがいいのが特徴です。
さらに爪楊枝ですから一度使用すれば後は捨てるだけです。
つまり和菓子をいただくときの黒文字は常に新しく清潔といえます。
殺菌作用もあるらしく、清潔好きの日本人にはお似合いです。
ちなみに日本人の清潔好きは以前にも触れましたが、神道や稲作、さらに温泉等の影響を強く受けていますが、まさに日本独特の文化です。
加えて香りや日本人ならではの「おもてなし」の心も忘れてはいけません。
さらに独特の香りは邪気払いに効果があるともいわれています。
以上のような理由があるわけで、これに食べ方の作法が敷かれているわけですから奥が深いですね。
和菓子が茶道と一緒に上流階級の人たちの間で発展したからでしょうか。
また和菓子をいただくときには「懐紙」も使用します。
今、懐紙を日常生活で使用することはほとんどなくなりましたが、和室で正座していただくとしたら、和室での振舞い方も問われます。
とても窮屈で難しいかもしれませんが、いずれも、平和な社会で相手に対する思いやりの心から生まれた素晴らしい文化です。
季節の美味を味わいながら、平和の大切さをかみしめたいものです。
一方西洋に起源をもつ洋菓子ですが、これは基本的にはナイフやフォークで戴きます。
形や素材が豊富で色彩豊かな洋菓子は、見た目も楽しくワクワクします。
ただ和菓子と比べて大きさも大きく、不安定なものもあり、どのようにして食べ様か?どこから食べようか?と迷うことも多々あります。
それだけに使用する道具も爪楊枝一本ではなく、フォークやナイフが用意されます。
洋食のマナーはフォーク・ナイフの扱い方がポイントになりますが、洋菓子も同じでしょう。
いろいろな大きさ、形を有する洋菓子の食べ方は、どこから食べ始めるかがポイントです。
丸い形の場合は手前から、3角形のケーキなどは左から食べます。
ちなみにイチゴのショートケーキのように3角形のケーキは尖った方が左です。
お客様に出す場合も参考にして下さいね。
そして四角い洋菓子は左側の手前から頂くと食べやすいです。
これは「鰻重」の場合も同じです。
洋菓子はフォークやナイフを使用することが多いですが、フォークはケーキに対して垂直に刺していただきます。
ミルフィーユのように倒れ易いケーキは、あらかじめ手前に倒してから食べればいいと思います。
タルトなどはそこが固いので、できればナイフがあれば食べやすくなります。
シュークリームのようなフアフアの菓子は美味しいのですが、食べ方がややこしいのが気になります。
従ってこのような場合は手を使用したらいいと思います。
上側の生字を手でちぎって、それにフォークを使ってクリームを載せて、そのまま手で頂きます。
半分くらい食べれば、下半分はフォークのみで簡単にいただけるでしょう。
和菓子、洋菓子は、それぞれ味も、素材も、姿。形も、使用する道具も、文化も異なりますが共通点もあります。
和菓子と日本茶、洋菓子とコーヒ・紅茶の場合、いずれも飲み物が右で、菓子類は左に置きます。
食べる大きさですが和菓子、洋菓子とも一口大の大きさがお勧めです。
一番注意していただきたい点は、黒文字もフォークもナイフも刃先を相手に向けないということです。
そしていずれも食べすぎには注意したいものです。
楽しく、会話も楽しみながら心地よいひと時をお過ごしください。