マナーうんちく話521≪お心肥し≫
滝廉太郎作曲の「春」という曲の中で、「春のうららの 隅田川 のぼりくだりの 船人が・・・」とうたわれていますが、春ののどかな日の光や穏やかな空気を「うらら」と表現します。
また沢山の花が色とりどりに咲き乱れることは「百花繚乱」といいます。
いずれも心地よさ、明るさ、のどかな様子を見事に表現した、四季の豊かな日本ならではの美しい言葉だと思います。
令和3年4月4日は二十四節気の一つ「清明」です。
「清浄明潔(しょうじょうめいけつ)」の略で、春の穏やかな陽気を受けて、全てのものが清らかで生き生きとする頃です。
また3月の彼岸前後に多くの野菜の種をまきますが、この時期にはそれが芽生え、どんな野菜なのか判別できるようになります。
数ある畑仕事の中でも、一番充実感が味わえる頃でしょうか・・・。
さらに冬を過ごした渡り鳥の「鴈(がん)」が北国に帰り、南の国から燕が飛来する時期です。
ちなみに我が家には3月下旬に燕が姿を見せました。
一足早く下見に来たのでしょうか、去年通り巣作りを始めてくれればうれしいのですが・・・。
ところで日本では昔から「はらいたまえ・きよめたまえ・・・・」といわれるように「穢れが少ないほどいい」とされてきましたが、「清明」の頃は、一年で最も清らかな気が漂っています。
整理整頓に励むとともに座禅などで身も、心も、住まいも清々しくするのもお勧めです。ただし黄砂には注意してくださいね。
また4月20日は穀物を育てる雨が降るといわれる二十四節気の一つ「穀雨」ですが、春の雨は百穀だけを育てるものではありません。
雑草も勢いを増し、これからは草取りの仕事が増えます。
そして一雨ごとに緑が濃さを増してきます。
潤いのある雰囲気づくりを目指すとともに、瑞々しい若葉を愛でるのもいいですね。
さて、日本で初めて成文化されたマナーは聖徳太子の「和を以て貴しとなす」の教えだといわれていますが、和する心は千年以上経過した今でも日本人の心に生き続けています。
おそらく米作りに精を出し、米を主食にしている限り、和の心は消え去ることはないでしょう。
ちなみに日本の米作りは狭い土地で生産性を上げるために「田植え」をします。
田植えをするには、田を開墾し、水をひかなければなりません。大事業です。
その上、水の管理も大変です。
一人ではできないということです。
だから村人が一致協力してすることになるわけですが、日本の「しきたり」や「和の心」はここから生まれたようです。
それが日常生活の中に根付いて、そこから様々な日本独自の文化が生まれたわけですね。
たとえば春になれば村人たちは、山の神が麓に降りる際の依り代になる桜を囲み、神様の好きな酒やご馳走で宴会を催します。
山の神様に「田の神様」になっていただき、これから始まる田植えを見届けて頂くとともに、豊作を祈願するためです。
秋になれば豊作の喜びを全員で分け合い、さらに田の神に感謝の気持ちを表現するために「秋祭り」を行います。
このように桜を囲んで花見をしたり、祭りを開催することで和の心をはぐくんできたわけです。
その心は現代でも脈々と受け継がれており、いたるところで素晴らしい成果を上げています。
日本が世界に誇る新幹線。
あれだけ速いスピードで、分刻み、秒刻みのスケジュールで正確に、しかも安全に、快適に運行できる偉業も、まさに和の心のお陰だといわれています。
4月はあちらこちらで素敵な出会いのシーンが展開されますが、日本人らしい和の心を活かして、素晴らしい人間関係を築いて下さいね。