マナーうんちく話220≪就職祝いと親先輩の役割≫
弥生3月になると草木が勢いよく芽を出し始めますが、これを「草萌え」と表現します。さらに3月5日は二十四節気の一つ「啓蟄」。
虫たちが冬眠から覚め、土の中から地上に出て活動を始める頃です。
そして人もまた春の陽気に誘われて、心が前向きになる頃でもあります。
特にこの時期は何かと祝い事が多いシーズンでもあり、「おめでとう」の言葉がたくさん聞こえてきそうですね。
コロナ禍での祝い事ですから盛大な祝宴は無理かもしれませんが、心を込めて祝ってあげたいものです。
ところで日本には祝儀、不祝儀の時にお金を渡す習慣が昔から存在しますが、ただ贈ればいいものではありません。それなりの作法を心得ていたいものです。
改めて「祝儀袋の表書」に触れてみます。
コロナの影響で結婚披露宴が激減しましたが、とても残念な気がします。
しかし結婚するカップルには、たとえ披露宴がなくても、心を込めて「おめでとう」の気持ちを届けたいものです。
日本では結婚祝いに限らずお祝い事には、祝儀袋を使用することが多々ありますが、どのように表現したらいいのか迷うことも少なくありません。
まず結婚祝いの表書きは、「ことほぐ」の意味を込めて「寿」と書くのが一般的です。
ずばり「御結婚御祝」と書いてももちろんOKです。
結婚祝いの水引は「マナーうんちく話」で何度も触れましたが、「これっきり(一度だけ)」という意味で、紅白の水引で「結びきり」にして下さい。
結婚祝いの水引の表書きは「寿」をお勧めするわけは、「寿」はとても古い歴史を有し、「良い結果が得られるように祝いの言葉を述べる」意味があるからです。相手の幸運を心から祈り、慶びの言葉を届けられるわけですね。
また結婚披露宴は多くの人のお世話になります。
例えば式場のスタッフ、司会者、美容師、カメラマンなどなど・・・。
そういった方々に対するご祝儀にも「寿」と記入すればいいでしょう。
そして、結婚以外の数あるお祝い事で、表書きに迷った場合は「御祝」と表現すれば、まず大丈夫だと思います。
もちろん出産の祝いの「御出産祝」、女の子が生まれて初めて迎える「初雛御祝」、満1歳の誕生日を迎える祝いの「初誕生日御祝」。
さらには誕生日祝いの「祝御誕生日」、入学祝いの「祝御入学」、就職祝いの「祝御就職」、結婚25周年を祝う「祝銀婚式」などと、何のためのお祝いか?を具体的に表現すれば、より明確に伝わるでしょう。
ところで春は転勤・移動のシーズンですが、転勤などで旅立つ人への表書きは「御餞別」で、紅白の蝶結びの水引を使用すればいいでしょう。
表書きの上は以上ですが、下側にもいろいろなマナーがあります。
水引の下の中央部分には、上側の「寿」などよりやや小さめの字で、贈り主のフルネームを書きます。
上の「寿」などより自分の名前をやや小さめに書くのは、まさに日本人独特の奥ゆかしさや謙虚さで、先人の心遣いに敬服します。
一方友人等の連名で贈るケースも多くあると思いますが、その場合は、右から年齢や地位の高い順番に個人名を並べて書きます。
バランスよく中央に連名全体を配置しても構わないと思います。
年齢や地位に関係がない時には、右から五十音順で並べます。
ただいずれにせよ、連名の場合は3名くらいまでで、それより大人数のときには、代表者の名前の左側に「他一同」と記入し、別紙に全員の氏名と住所を記載します。
「中袋」があるときには、中袋の表側の中央に「金 〇萬円」と記入し、裏側に贈り主の住所、氏名を書きます。
郵便番号まで記載すればより丁寧になりますね。
せっかくここまで気を遣ったら、筆記用具にも気配りしたいものですね。
出来れば毛筆かサインペンで、楷書で、濃く!がお勧めです。
ただしこれらの祝い事には「何度あってもうれしい慶び事」ですから、蝶結びの水引を使用してくださいね。
日本は世界屈指の長い歴史を誇る国ですが、それと同様日本語の歴史も大変古く、日本人独特の、大変奥が深く、美しい言葉が多く存在します。
長寿、新年、結婚などをことほぐ「寿」や、小鳥や月や桜などの可愛さ、美しさを味わい感動する「愛でる」もそうですね。
ちなみに謝礼には「御礼」や「寸志」が使われるケースが多いようですが、寸志は目上への人には使いません。
さらにストレートにお礼の心を表現するなら「感謝」と記してもいいと思います。
ほんのお礼の心を表現する場合は「心ばかり」とか「松の葉」もいいでしょう。
「松の葉」は現代では一般的ではなくなった気がしますが、とてもお洒落な表現だと思います。
ただし仰々しい祝儀袋等では不釣り合いですので、ポチ袋や封筒を使用してくださいね。
松の葉は大変細いので「ほんのわずかばかり」という意味になりますが、ちょっとした手土産などにもよく使用されます。
寸志は目上から目下に対してしか使えませんが、松の葉は目上、目下どちらにでも使用できる謙虚な言葉だと思います。
何かと横文字が氾濫する世の中になりましたが、祝儀袋やそれに記入される表書き等には、まだまだ日本人の心が残っています。
大切にしたいものですね。