マナーうんちく話544≪薔薇で攻めるか、それとも恋文か?≫
暦の上では一年で一番暑い時期ですが、今年も例外ではありませんね。
今の日本は何もかも恵まれていますから、猛暑日でもクーラーがあれば涼が簡単に取れます。
しかし電気もなく、食べ物や飲み物にも不自由した江戸時代には、暑い夏を乗り切るのは大変です。
実際寒い冬より、猛暑のせいで夏に亡くなる人は結構多かったようです。
だから厳しい暑さを乗り切るために、江戸時代の人は様々な努力や工夫をしたのでしょう。現代人にも参考になるものは多々あります。
滋養強壮のための「うなぎ」や「甘酒」はよく知られるところですね。
なお甘酒に関しては「マナーうんちく話308《えっ!夏に甘酒?》」を参考にしてください。
そして江戸っ子に大人気だった、夏バテ防止のスペシャルドリンクは「麦茶」です。
麦茶は夏の暑い体を癒す飲み物として現在ではすっかり定番になり、どこの家庭でも大きなペットボトルが冷蔵庫に入っているでしょう。
実は麦茶の歴史は非常に古く、すでに平安貴族も好んでいたようで、やがて戦国の武将にも愛用されるようになります。
それが江戸時代には庶民に普及したようで、「麦湯売り」の店があちらこちらに登場するようになります。
もちろん江戸時代には煎茶がありましたが、こちらは値段が高く庶民が気軽にというわけにはまいりません。
しかし麦茶は一杯80円くらいで若い男性にも結構受けていたようです。
実は当時の江戸っこは生水には非常に神経を使っていたようで、暑い夏の飲み物は「暑い甘酒」や「暑い麦茶」が暑気払いになったのでしょう。
ところで「麦湯店」は今流にいえば「麦茶カフェ」ですが、当時これが若い男性に受けた理由は単に栄養面とお手頃価格だけではありません。
乱立する麦茶カフェでは競争の原理が働いたのでしょうか?
単に事務的に販売するだけでなく、若い女性が接客しながら販売ようになります。
当時の平均寿命からすれば恐らく15歳前後でしょうか?
若くて、綺麗で、そして愛嬌のいい女性が、艶っぽく着こなした?浴衣姿で接客すればみんな喜びます。
江戸の夏の夜は外が涼しかったようですが、夏の夜空をほのかに彩った「麦湯」の行燈の明かりは、多くの独身男性を引き付けたのではないかと想像します。
どんな接客が行われ、どんな会話が交わされていたのか?とても興味がわくところです。
ちなみに当時の江戸には全国から独身男性が多く集まっていました。
現在のような台所事情は完備してないので、当然外食が多かったわけです。
また今では女性の社会進出が呼ばれるようになり久しくなりますが、江戸時代の庶民には、今のように「専業主婦」という概念はなかったと思います。
従って農村、漁村、そして江戸のような都会でも女性がしっかり働いていたようです。麦湯店のほかにも、人の出入りの多い寺社の境内、観光地などには「水茶屋」と呼ばれる「喫茶兼休憩所」があり、そこで働いていた女性も多かったことでしょう。
江戸しぐさに「商家は女次第」があります。
農家は男次第ですが、商売を営む家は女性の接客力やマネージメント能力が問われたわけです。
つまり旅籠や料亭などは女性の力量次第だから、嫁を貰う時には愛嬌が良く、よく気が付く女性を心して選べということです。
何時の時代も愛嬌がいい女性はいいですね・・・。