マナーうんちく話1825《日本のしきたりの起源と由来⑩「旅行に行った時の土産」》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:日常生活におけるマナー

2019年のゴールデンウイークは10連休。
旅行に出かける絶好のチャンスで、身近な国内旅行からハワイやヨーロッパ周遊などを楽しまれている人も多いと思います。

加えて新元号「令和」のスタートとともに、記念旅行を計画されている人もいることでしょう。

ところで旅行といえば「おみやげ」ですが、おみやげを「お土産」と表現するのも、その土地の産物を意味するからではないでしょうか。

旅先での産物や、訪問に際しての手土産も日本独特のしきたりと言っていいと思いますが、土産の風習はもとをただせば、「おすそわけ」というもてなしの精神です。

嬉しいことや目出度いことが自分に起こった時に、この幸せな気持ちを自分だけにとどめず、周囲の人にも分け与えようとするとても温かい気持ちですね。

しかし日本の土産の起源は大変古く、狩猟採取にその起源がみられるそうです。

当時も今も社会の最小単位は家族ですが、元気の良いお父さんや男の子は、か弱いお母さんや子どもを置いて狩りに出かけます。

そして仕留めた獲物を持ち帰り、家族全員に平等に分け与えて食べたことに由来するというのが起源のようです。

実はこの捉え方は「テーブルマナー」の根源にもなっています。

やがて時代が進みその土地に住み着き、村という単位ができて、農耕文化を営むようになると、五穀豊穣や子孫繁栄や家族の安泰など、いろいろと神頼みが多くなってきます。

村にも「神社」ができますが、さらなるご利益を求めて、遠方の有名な神社に参拝に行くようにもなります。

しかし多くの経費やリスクが伴うので、村人全員が行くわけにはまいりません。

そこで村人の中で代表者が参るわけですが、費用負担も一人では大変です。

村人がみんなでお金を出し合って代表者に渡すわけですが、これが「草鞋銭」といって現在の「餞別」の起源です。

この様にして参拝を済ませた代表者は、当然村人に「確かに参拝を済ませましたよ」という証を示す必要があります。

だから参拝した時に神社からその証を頂くわけですが、それが土産の起源といわれています。

その代表的なものは酒だったようです。
酒は飲んだらほろ酔い気分になり心地よくなるので、そこには人間の力を超えた神様の霊力があると考えられており、土産の起源になったと考えられています。

ただ酒は村までもって帰れないので、その代用として「お札」や「杯」や「餅」を持ち帰り、それを村に持ち帰り皆で分け合ったわけです。

つまり日本の土産のルーツは旅先のお菓子や名産品ではなく、神様の御利益がある酒・餅・お札などをみんなに分配することだったようですね。

言い方を変えれば、お土産は親交を深めるものや、証拠品といったコミュニケーション手段だったといえるとおもいます。

昔は共同体意識が強く武士にとっては藩や家が大事ですが、国民の約9割を占めていた農民にとっては村が一番です。

やがて時代の移り変わりとともに餅は結婚式を始め祝い事や贈答品となり、さらに餅の代わりに「まんじゅう」が登場し、今や土産物の定番になっているということです。早々と令和の饅頭も登場しましたが、日本人はとにかく饅頭が好きです。

ただ土産のルーツからすると贈る人の好みも大切ですが、土産の目的の一番は「どこに行ったのか」?がよくわかることだと考えます。
そしてお土産を渡すときには紙袋から出して渡すのがマナーです。
前回触れた「風呂敷」と同じ理屈です。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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