マナーうんちく話521≪お心肥し≫
人がなくなると骨上げの際に箸を使用します。
いろいろなやり方があるようですが、二人組んで行う場合が多いようですね。
人が亡くなると魂はあの世に行くわけですが、「この世」と「あの世」の間には「三途の川」があると考えられており、その橋渡しをする意味があるようです。
また二人組んで行うのは、箸で骨を拾う際故人の穢れが移るので、二人組めば穢れが半減するからという意味があります。
さらに三途の川をとにかく無事に渡って欲しいという気持も含まれています。
その架け橋をするわけでしょうが、「箸」と「橋」が同音だから親近感がわいたのでしょうか・・・。日本人らしい捉え方だと思います。
以上のような理由で、日本人なら美しい箸使いは生活習慣の基本になっていますが、幼い頃に「こんな箸使いをしてはダメ」とたしなまれた経験を持っている人も多いと思います。
恐らく物が今のように豊富でなかった頃のほうが、何かにつけ家庭における躾は厳しかったのではないかと思います。
それが物質的豊かさや便利さに価値が置かれるようになるにつれ、家庭における躾をする力が弱まってきた感があります。
だからいろいろと矛盾が多くなってくるわけですね。
世界屈指の飽食の国、美食の国になったものの、箸をきちんと持てない大人が非常に増えてきた感じがしてなりません。
カラスの勝手と言われればそれまでかもしれませんが、寂しい気持ちになりそうですね。
食卓を同じくする人に不快感を与える箸使いは「嫌い箸」です。
その数は80近くもあります。
他者に迷惑をかけないよう精一杯神経を注いだ先人の気持ちがよくわかります。
加えて、神様と自分を仲介する箸は、単なる小道具ではないということでしょうか。
そういえば、和食には「神人共食文化」が存在します。
そしてお祝いの時に供する「祝い膳」を食すときに使用するのが「祝い箸」です。
これは一方で人が食べ、もう一方は神様が使用します。
神様とともに使用するのだからこそ、姿勢を正し、正しい持ち方、美しい箸使い、正しい置き方に心がけたいものです。
ちなみに「祝い箸」の長さをご存知でしょうか?
日常で使用する箸は男性と女性、大人と子どもでは大きさが異なりますが、「祝い箸」は老若男女同じ長さです。
縁起の良い末広がりの8寸で統一されています。
一寸が約3㎝ですから、祝い箸は約24センチということになります。
材料は柳の白木ですが、神様が宿り、邪気を払う効果があるといわれています。
箸の文化は知れば知るほど奥深いものがあります。
日本人にとって箸は命の架け橋であり、「口福」のかなめになる貴重な小道具です。
だからこそ、子どもだからと言っていい加減に考えず、大人も子供も箸には思いを込めて頂きたいものです。