マナーうんちく話604≪武士は食わねど高楊枝≫
入学式と入社式も落ち着き、花見がピークを迎えていますが、桜は日本人にとっては様々な節目を象徴する特別な存在ですね。
万葉の頃は花見と言えば「梅」のことでしたが、武士の台頭と共に山桜に変わり、明治にはソメイヨシノが主流になります。
いずれにせよ桜はその時々の日本人の心を映している花だったようです。
ところで現代人もそうですが、人の暮らしは来る日も来る日も同じような傾向が強く現れます。
例えばサラリーマンであれば午前6時に起床し洗面に朝食、午前7時に家を出て7時30分の電車に乗り、8時20分に職場に到着。仕事を終えて午後5時30分に退社。午後6時の電車に乗り7時に帰宅。夕食に風呂とテレビで午後11時30分起床。
恐らくこのような繰り返しでしょう・・・。
たまには友人と一杯飲みに行くこともあるでしょうが。
個人差はあるにせよ、学生もサラリーマンも主婦も同じことの繰り返しという点ではほとんど同じではないでしょうか。
江戸時代もそうです。
長屋住まいともなると寝るのも起きる時間も同じ。
さらに正月の用意も、炬燵を出す日も同じ日だったようです。
こうしたいわゆる日常の生活が「ケ」です。
しかし毎日毎日この繰り返しでは、人生楽しくありません。
そうかと言って毎日が、波乱万丈でも持ちません。
だからたまには非日常生活が必要になってくるわけですね。
それが正月であり雛祭りでありお祭りで、年中行事等ハレがましいことが「ハレ」です。
日常の仕事は楽ではありません。
毎日毎日農作業や大工仕事ばかりしていたら楽しくないけど、あと何日したら正月になり、祭りが行われるとしたら、それを糧に頑張ることが出来ます。
とくに物が無く、生活が苦しかった昔はなおさらです。
ハレの日になったら「晴れ着」が着て、お寿司の様なご馳走にありつけ酒が飲める・・・。
此れが最高の贅沢だったわけです。
それに比べ今は物が豊かで、ご馳走も晴れ着もいつでも楽しめます。
晴れの日に中心となる食べ物は「酒」と「米」で、特に酒は「お神酒あがらぬ神はなし」といわれますが、今は近所のコンビニで全てそろう時代です。
では「ハレの日」は不要か?と言えばそうではありません。
豊かな中でもたまには外食をし、温泉に行きたいし、また旅行もたのしみたいところです。
加えて二十四節季及び雑節などの節目を大切にし「ハレの日」を歓迎し、それが終われば再び「ケ」に帰る。
そのけじめを大切にしています。
こうする事により心が洗われ、素直な心で命をよみがえらすことが出来ます。
また「旬」を大切にすることも大切です。
只今山菜が旬ですが、その時々の季節の物を食し、自然のリズムを取り入れ活力を得ることもお勧めです。
ハレとケのけじめをつけ、穢れを流し、身体と心のリズムを整えることで、元気な生活が行われるわけです。
ちなみに前回触れたとおりですが、「穢れ」というのは、霊魂の生命力が枯れる「穢枯れ」です。
悩みや苦しみや病気、さらには不平や不満も含まれますので、これを祓う努力も大切にしたいものです。