マナーうんちく話544≪薔薇で攻めるか、それとも恋文か?≫
最近はめっきり減少しましたが一昔前までは、和室で「結納の儀式」をとりおこなうシーンが多々ありました。
そしてその際活躍したのが扇子がでした。
和室でお辞儀をする際、先ずは正座するわけですが、この時自分の前に扇子を置きます。
絵柄がある表面が自分に向くように、そして裏側が相手に向きます。
要部分は右側です。そして側面の親骨が畳に接するようになります。
ではなぜわざわざ扇子を置くのか?
扇子を置く目的は、自他の境を成す結界としての役割を得るためです。
つまり扇子を置くことにより、扇子を境に、自分の位置する場所が「下座」で、相手側が「上座」になるわけです。
さらに平たく言えば、相手を敬い、尊敬の気持ちを表すと言うことです。
お茶の席でも、言葉はあえて交わさないのに、何か動作をするごとに扇子を使用するのはこのためです。
また、扇子を置く位置により、どのような挨拶になるのか?が理解できます。
扇子の置き方が挨拶のバロメーターにもなるわけですね。
ちなみに挨拶は欧米では握手になりますが、日本ではお辞儀をします。
そしてお辞儀には立って行う「立礼」と、座わってする「座礼」があり、礼法では正式な座礼には9種あります。
ここでは詳しいことはさて置きますが、自分の近くに扇子を置けば浅い挨拶になり、遠くに扇子を置けば深い挨拶になります。
挨拶の目的や挨拶をする相手により、浅い挨拶か、深い挨拶になるのが日本の挨拶です。
物を両手で渡す時にも、渡す目的や相手により渡す高さが異なります。
腹の高さで渡すか、胸の高さか、肩の高さか、あるいは目の高さで渡すかで違ってきます。
加えて贈り物する時にも扇子を使用します。
例えば最近ではあまり見かけなくなりましたが、祝儀袋なども扇子の上に載せて渡す場合があります。
但し相手が余程礼儀作法に精通していないと、受け取る際困ります。
なぜわざわざ扇子の上に載せて渡すのか?
その意味を渡す方も、受け取る方も共通認識出来ていれば交流が図られますが、一方しか理解していなかったら逆効果にもなりかねません。
扇子は恰好いいですが、その分難しいところです。
平安貴族は和歌を書いた短冊を扇子に載せ、花一輪を添えて渡していたのかもしれませんね。
今のように物質的豊かさは有りませんが、心の豊かさがあり、本当に優雅な世界だったようです。
日本の礼儀作法は本当に奥が深いですね・・・。