マナーうんちく話499≪習慣は第二の天性なり≫
じっとりと蒸し暑い日が続いておりますが、今年もホタルが飛び交う頃になりましたね。
日本の初夏の風物詩として古くから人々に愛され、歌にも詠まれた蛍ですが、腹部に発光器を持つのは、平家ボタルや源氏ボタルに限られています。
七十二候の26番目に「蛍草為蛍(ふそうほたるとなる)」(6月11日から15日頃)とあるように、昔の人は気温が高くなり、湿度が上昇してくると、草が腐り、その草の下から蛍が生まれて来ると考えていました。
腐った草が蛍に変身するわけですね。
また、日本で最も良く見かける源氏ボタルの名前の由来は、平清盛に敗れて命を落とした源頼政の霊魂が蛍になった説と、源氏物語に登場する「光源氏」に由来する説があります。ちなみに、平家ボタルはこれに対する名前です。
いずれにせよ、夏の夜空に飛び交う蛍は風流の代名詞のような物で、娯楽の少なかった昔は、「ほたる見」という遊びが高貴な人の間で流行していたようです。
さらに「ほたる船」が用意され、船の上で飲食を伴いながら、ほたる見を楽しんだ記録も有るようですね。
ところでホタルと言えば、「仰げば尊し」とともに、卒業ソングの定番であった「蛍の光」の曲を思い浮かべる人も多いと思います。
我々が学生時代には、「君が代」と共に一番良く歌い、聴いた曲です。
当時は曲の意味が全然わからないまま歌っていましたが、そこに込められた一節一節には、大変深い意味があり、後世に是非伝えたいと思うわけですが、残念ながら、最近では意味不明の横文字の中に埋もれて失せてしまいそうですね。
蛍の光窓の雪・・・。
豊かになった現在には程遠い意味ですが、昔は電気がありませんので、夜は油で照明をとっていました。
しかし、貧しくて油が買えない人も多くいます。
夜になれば昼間の仕事から解放され、本を読んで勉強することができます。
そこで、油が買えない人は、夏は蛍を集めて明かりをとり、冬になると雪の明かりで本を読んで、勉強に勤しんだわけです。
蛍の光で本当に、夜に本が読めるか否か?
実験したわけではありませんのでなんとも言えませんが、「苦学」をイメージさせるフレーズです。
先人は、それくらい努力して立派な大人になったわけで、「蛍雪の功」と言います。大変響きのいい言葉だと思います。
やはり、幼い頃より苦労して、大人になって成功した人は、人の苦労が理解できるから、何かと頼りになりますね。だから、若い時の苦労は金を払ってもする価値があるわけです。
勿論、買ってまで苦労する必要はないかもしれません。
苦労と無縁の生活が出来るのに越したことはありません。
しかし、世界一長寿の長い人生、苦労に縁の無いことは考えられません。
だったら、まだ若くて、身体も元気で、回復力があるうちに苦労を経験し、耐える力を身に付けた方が良いと考えるわけです。
第一、若い時の失敗は笑ってすまされる場合も多々あります。マナーにしてもしかりです。
但し、苦労し過ぎて、気持ちが卑屈になり過ぎるのも考えものですね。
どこで妥協するかは、10人10色だと思います。
戦国時代の武将山中鹿之助は、お月様に向かって「我に七難八苦を与えたまえ」と言ったそうです。500年位前は、人間は苦しみと困難からのみ成長できると思われていたのでしょうか?
七も八も数の多さを表しますが、現代なら七の福、八の楽を望む人も多いと思います。しかし、世界屈指の長い人生における若い頃に、ある程度の苦労や挫折を経験することもお勧めです。