マナーうんちく話499≪習慣は第二の天性なり≫
この時期、畑に出ると天道虫によく出会います。
夜空を神秘的に照らすホタルと共に、今が旬の虫ですが、天道虫と言えば、結婚式の披露宴でよく歌われる「てんとう虫のサンバ」が有名ですね。
日本人にはとても親しまれている身近な昆虫で、畑や公園や花壇のどこにでもいますが、その種類は多く、国内には160から170種いるとされています。
名前の由来は、赤い甲羅に黒い斑点が有るから、太陽(お天道様)の黒点に見立てて付けられたと言う説と、高い所から太陽(お天道様)に向かって飛んで行くからだと言う説が有ります。
また、てんとう虫は鳥などに襲われた時に、黄色の苦い汁を出して逃げることが知られています。
不機嫌な時や不愉快な時の表情を「苦虫をかみつぶした顔」と表現しますが、この「苦虫」とは、噛んだら大変苦い味がする虫の事を意味し、特定の虫ではないようですが、意外にてんとう虫がサンプルになっているかもしれませんね。
愛らしい色や姿や形により、多くの人に親しまれ、童謡や結婚式の披露宴でも歌われているてんとう虫ですが、実はそのイメージとは異なり、作物を食い荒らす敵でもあります。
ところで、今でも和風のレストランや旅館等で、和の雰囲気を醸し出す小道具として見かけますが、「行燈(あんどん)」をご存知でしょうか?
行燈は江戸時代に普及した照明器具の一種で、室内に置いたり掛けたり、あるいは持ち運ぶための様々な種類が有ります。
今の電球の役目をするものですが、電球とは比較にならない程、照度は低いですが、当時は夜の照明には必要不可欠だったわけです。
ちなみに、この行燈を、持ち運び専用に改良した照明器具が、提灯(ちょうちん)だと言われています。
さて、今回のテーマですが、「昼行燈」と言う言葉をご存知でしょうか?
行燈は照明器具ですから、夜の暗い時にこそ、その価値を発揮できる物で、明るい昼間は不要物です。
従って、昼行燈とは、いてもいなくても関係ない人、つまり、役に立たない人の事を意味します。
しかし、実は、この昼行燈的な人は大物であり、いざという時には、大変優れた働きをするわけです。
「能ある鷹は爪を隠す」と言われますが、普段は実力があることは決して表面には出さず、どちらかと言うと無能者面をし、いざという時に豹変し、偉大な働きをする人です。
愛らしい姿をして、作物を食い荒らすてんとう虫とは全く逆ですね。
テレビや小説に登場する代表的な昼行燈的キャラクターは、忠臣蔵の大石内蔵助、必殺仕置人の中村主水、特命係長の只野仁等が有名です。
いずれも日本人には大人気ですが、その理由は、ほかならぬ、彼らが昼行燈的存在だからでしょうね。
人間誰しも、自分の事はよく見てもらいたいものです。
自慢話しも、しっかり聞いてもらいたいものです。
そこをあえて、自分の自慢話はさて置き、人の自慢話を聞いて上げることのできる人は、マナーに長けた人だと思います。
昼行燈的な人は究極のマナー美人かもしれませんね。
次回は「夜明けの行燈」のお話を予定しております。